インタビュー

食物アレルギーとは―免疫システムの異常とはなにか

食物アレルギーとは―免疫システムの異常とはなにか
藤澤 隆夫 先生

国立病院機構三重病院 院長

藤澤 隆夫 先生

この記事の最終更新は2015年12月21日です。

命にかかわることともある「食物アレルギー」は、いったいどのようなものなのでしょうか。これを理解するためには、「アレルギー」がどのように起こるかについて知る必要があります。国立病院機構三重病院院長・日本小児アレルギー学会理事長の藤澤隆夫先生にうかがいました。

食べ物を食べて何か不快な症状や健康に支障のある症状が起こることがありますが、その原因はさまざまです。すぐに食物アレルギーと思いがちですが、アレルギーかどうかは慎重に判断しなければなりません。

たとえば食中毒の場合、毒を飲めばどんな人にも症状が現れます。もちろん、食物アレルギーではありませんね。一方、特定の人だけに症状が起こることがありますが、その中で、免疫学的機序(免疫反応によるしくみ)によるものを食物アレルギーと呼びます。ここではっきりと区別するために例を挙げます。たとえば牛乳を飲むとお腹を壊す人がいます。しかしこれは乳糖不耐症という代謝疾患で、乳糖分解酵素が欠損しているために起こる症状であり、牛乳アレルギーとは呼ばないのです。

では、免疫反応とはなんでしょうか。体を細菌やウイルスなどの外的から守るシステムが免疫です。そのシステムが、本来敵ではないものに向かってしまう場合があり、これを免疫異常といいます。

その中でも自分の体を攻撃してしまう免疫異常を「自己免疫疾患」と呼び、自分の体ではないものの、無害なものに対して敵と勘違いして攻撃してしまう免疫異常を「アレルギー」と呼びます。

つまり、本来食べ物は体にとって大切な栄養分であるはずなのに、敵と間違えて攻撃してしまい、その攻撃した結果がすべて自分の不快な症状として現れてしまう場合、これを食物アレルギーと定義しているのです。免疫の働きの方向が少し間違っていて、そしてその反応が過剰である状態と考えられています。

アレルギー反応は、主にIgEという抗体を使うことで起こると考えられています。抗体は、体に有害なものが入ってきたときにそれを攻撃するためにつくられます。細菌などに対抗する抗体をIgG、寄生虫などに対抗する抗体をIgEといいますが、このIgE抗体が本来有害ではない食べ物が入ってきたときにも体内で生成され、攻撃してしまうのです。

このIgE抗体をつくりやすい人がいることもわかっています。その方たちをアレルギー体質と呼んでいます。検査をすればIgEをつくりやすい体質かどうかがわかりますが、おそらく今の若い世代の6~7割の方たちは、スギやダニなどに対してなんらかの陽性反応が出るといわれています。

現在アレルギーの研究現場においては「健康な人を見つけるのが難しい」とすらいわれています。「健康な人」を「IgEをつくらない人」と定義してしまうとほとんどの方が当てはまらないからです。それほどアレルギー体質の方が増えてしまっているのです。なぜ増えてしまったのかは分かっていません。

現在、若い人にアレルギーが増えてきた理由として考えられているのはアレルギー体質という遺伝と環境の複合要因です。この「環境」という部分にはさまざまな環境因子が考えられますが、まずは大気汚染、その一方で私たちを取り巻くきれいすぎる現代の生活環境、この2点が大きく関係しているのではないかといわれています。

次の記事では、なぜ現代の生活環境がアレルギーに関係するのか、そしてその結果起こる症状にはどのようなものがあるのかについてご説明します。

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