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がん対策加速化プランとは-短期集中的に取り組む3本の柱

がん対策加速化プランとは-短期集中的に取り組む3本の柱
堀田 知光 先生

国立がん研究センター 名誉総長、がん研究振興財団 理事長

堀田 知光 先生

この記事の最終更新は2016年01月08日です。

政府は、「がん対策加速化プラン」を策定し、次期のがん対策推進基本計画策定までに、現在の目標を達成しようと取り組んでいます。がん対策加速化プランとはどういうものか、また今後はどのようにがん対策が進められていくのかを、国立研究開発法人国立がん研究センター理事長 堀田知光先生にお話しいただきました。

がん対策推進基本計画の全体目標である「75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少」の達成が難しい状況であることを受け、2015年6月に厚生労働省主催のもと、がんサミットが開催されました。(参照「がん対策推進基本計画とは-がんを克服するための対策」)そこで、総理大臣から厚生労働大臣に対して「がん対策加速化プラン」を策定し、次期基本計画策定までの残された期間までに、短期集中的に実行すべき具体的施策を示しがん対策に取り組むことが指示されました。
がん対策加速化プランの3つの柱は次のとおりです。

  1. がんの予防
    予防や早期発見を進め、「避けられるがんを防ぐ」こと
  2.  がんの治療・研究
    治療や研究を推進し、「がんによる死亡者数の減少」につなげていくこと
  3.  がんとの共生
    就労支援や緩和ケアなどを含む包括的な支援により、「がんと共に生きる」ことを可能にする社会を構築すること

がん対策加速化プランは前述したとおり、以下の分野に絞り、短期集中的に実行すべき具体的施策を示しています。

  • 遅れているため「加速する」ことが必要な分野
  • 当該分野を「加速する」ことにより死亡率減少につながる分野

 

「がん対策加速化プラン」の3本の柱

(引用:厚生労働省資料)

これまでの対がん戦略はがん研究を中心に進められており、1984年から「がんの本態解明を図る」ことをテーマとした対がん10カ年総合戦略、1994年には「がんの本態解明から克服へ」をテーマとしたがん克服新10か年戦略が進められてきました。さらに2004年には、第3次対がん10ヵ年総合戦略が「がんの罹患率と死亡率の激減」をテーマに推進され、2013年で最終年度を迎えました。この戦略期間中の2007年に制定され2012年に見直されたがん対策推進基本計画に基づき、2014年から「がん研究10か年戦略」が策定され、現在推進されています。

文部科学省・厚生労働省・経済産業省それぞれで進められるがん研究を、省庁縦割りではなく、共通の目標に向かって連携を図りながら進める必要があるとの考えによって2015年4月に新たに設立された国立研究開発法人(日本医療研究開発機構)では、がん研究10か年戦略に基づき各省が協働し、研究面でスピードを上げて成果をあげることを目指しています。主な研究内容は次のとおりです。

①がんの本態解明に関する研究
②アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究(※アンメットメディカルニーズ=強く望まれているが、いまだに有効な治療法が確立されておらず、医薬品などの開発が進んでいない治療分野における医療ニーズ)
③患者に優しい新規医療技術開発に関する研究
④新たな標準治療を創るための研究
⑤ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域

  • 小児がんに関する研究
  • 高齢者のがんに関する研究
  • 難治性がんに関する研究
  • 希少がん等に関する研究

⑥がんの予防法や早期発見手法に関する研究
⑦充実したサバイバーシップを実現する社会の構築を目指した研究(サバイバーシップ=がんを経験した方が生活していくうえで直面する課題を、家族・医療関係者・他の経験者と共に乗りこえていくことや、そのためのサポート)
⑧がん対策の効果的な推進と評価に関する研究

(引用:厚生労働省資料)

がん研究10か年戦略では、これまでフォーカスされにくかった小児がんや高齢者がん、希少がんに関して注力することが定められています。これらの基礎となるのが、ゲノム情報に基づいた新たな治療法の開発と個別化医療であると考えます。網羅的に人の遺伝子解析を行い、そのなかからがんになりやすい遺伝子を特定したり、あらかじめ薬の治療効果を予測するなど、個人に合わせた「個別化医療」を進めていく研究が重要です。

がん対策推進基本計画において最も重要な死亡率の削減に関しては、小児がんや希少がんなどを克服していくことでがん全体の治療を底上げすることとなり、目標を達成できると考えています。

 

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