日本では30年間にわたり、本格的ながん対策が推進されてきました。しかしながら、いまだにがんは日本人の死因の第1位であり、今後も継続的に対策を進めていく必要があります。そのひとつとして、がん対策推進基本計画が2007年に策定されました。現在はこの計画に基づいてがん対策が行われています。本記事では、がん対策推進基本計画の内容と目標の達成について、国立研究開発法人国立がん研究センター理事長 堀田知光先生にお話を伺いました。
政府は、1984年(昭和59年)より、対がん10カ年総合戦略、1994年(平成6年)には、がん克服新10か年戦略を策定し、がん対策に取り組んできました。その結果、がんのメカニズムを解明するとともに、各種がんの診断・治療技術は一定の進歩を遂げてきました。さらに2004年(平成16年)には、第3次対がん10ヵ年総合戦略を策定し、がん罹患率と死亡率の減少を目指して、がん対策に取り組んできました。
上記のように、10年ごと、30年間にわたり対がん10カ年戦略を行ってきました。しかし、がんは依然として国民の生命や健康にとって重要な問題となっています。そのような現状を克服するため、2006年(平成18年)にがん対策基本法が成立し、翌2007年(平成19年)にがん対策推進基本計画が閣議決定されました。現在はその計画に基づいてがん対策が行われています。
がん対策推進基本計画における全体目標は次のとおりです。
2007年にがん対策推進基本計画が始まってから今年で8年目になります。しかし、第二期計画の中間評価としてで当初の計画の目標が達成できるかを推計したところ、その目標の達成が困難であるという結果になりました。そのため、総理大臣の指示により厚生労働省が主体となって「がん対策加速化プラン」を策定し、第二期基本計画残された期間に、短期集中的にがん対策に取り組むこととなっています。(参照「がん対策加速化プランとは-短期集中的に取り組む3本の柱」)
(引用:厚生労働省資料)
75歳未満の年齢調整死亡率を20%減少するという目標設定のための施策(要素)の内訳は次のとおりです。
がん対策推進基本計画では、成人の喫煙率30%程度あったものを半減するという目標を立てていました。しかし、20%前後まで減少したものの、近年はその減少が横ばいになりつつあり、喫煙率の目標値にまで達することができていないことが、死亡率未達成の原因のひとつではないかと考えられています。
がん対策推進基本計画では、主要な大がん(胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮がん)の検診受診率を50%にすることを目指しましたが、30〜40%程度にとどまっています。
医療の開発やがん医療専門の医療関連職種の育成、医療機関の連携などを図ることで、全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術などの格差の是正を図ることを目指すものです。
目標値20%のうち、10%の減少は、がん対策推進基本計画の開始以前から、医療の進歩にともなって自然のトレンドとして下がっています。その自然に減少する10%からさらに10%を、上記の対策などの積極的な介入によって下げるというものです。
繰り返しになりますが、これまでの施策では死亡率20%削減の目標達成が難しいという予測を受け、「がん対策加速化プラン」を策定し、短期集中的にがん対策を行うこととなりました。