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インタビュー

小児外科における内視鏡外科手術

 小児外科における内視鏡外科手術
家入 里志 先生

鹿児島大学病院 小児外科 教授・診療科長

家入 里志 先生

小児外科における現状と課題については「小児外科とは」でお話ししました。この記事では内視鏡外科手術が小児外科領域の疾患にとっていかに大きい役割を果たすのか、鹿児島大学病院 小児外科 診療科長の家入里志先生にお伺いしました。

小児外科の内視鏡外科手術ではほぼ全ての臓器を扱います。5000人に1人、10000人に1人などの希少疾患が多いので、小児外科内で専門性をわけるまででもないからです。本当にありとあらゆる疾患を扱います。私が携わったのは、胆のう摘出・鎖肛(さこう)・胃の噴門(ふんもん)形成・腎盂(じんう)形成・食道閉鎖・嚢胞性肺疾患、卵巣疾患、小児がんなど、対象となる病気は多種多様です。

内視鏡外科手術はもともと、1990年頃に欧米で始まりました。まず婦人科がラパコレ(Laparoscopic cholecystectomy:腹腔鏡下胆嚢摘出術)を始め、これが1990年代に日本にも導入されました。胆石を取るラパコレや虫垂切除にはじまり、その後先天性疾患を含めた小児外科特有の疾患に適用を拡大しています。一部の小児がんにも適用されますが、小児がんには抗がん剤による化学療法が非常によく効きます。そこで、まずは化学療法を行って患部を小さくし、切除できそうな大きさになったら内視鏡外科手術で治療を行なうことにしています。

一度開胸・開腹して筋肉を切ってしまうと、成長とともに体格がインバランスになってしまう場合があります。特に赤ちゃんの時に開胸をすると胸郭の変形を来してしまいがちです。そこでお子さんたちの手術後の健全な成長を妨げないために、成長に必要な体組織を損傷しない手術として内視鏡外科手術が小児外科領域でも積極的に取り入れられるようになりました。

内視鏡外科手術は筋肉を切らないので体組織の損傷を最小限に抑えられ、普通のお子さんと同じ成長が見込めることが大きなメリットです。かつ成人の患者さんと同様に「傷が小さい・痛みが少ない・社会復帰が早い」という低侵襲性(体への負担が少ないこと)も持ち合わせています。大きく切開しないので、整容性(創がめだちにくい)も高いといえます。 

「内視鏡外科手術が低侵襲である」という外科手術の一般的なメリットが、小児にとってはかなり大きいメリットになるということが、導入された後に明らかになってきました。「お子さんの正常な成長発達を妨げない」。これが内視鏡外科手術の重要なポイントです。

医師の立場から見て、小児の内視鏡外科手術の執刀数として多いのは虫垂炎とそけいヘルニアです。ほとんどの医師はここでの術式を経て別の術式を経験します。しかし先天的な形態異常の場合、術前の予想と術中に判明する状態が異なる場合も多く術式が標準化されていません。またお子さんの年齢により体格が異なるという問題(2kgの新生児から成人と同じ体格の中学生まで対象となる)もあり、全ての医師に均等に手術を経験してもらい、そのクオリティを保つのはなかなか容易ではないことが問題点です。成人外科領域では訓練するための術式があるからよいのですが、小児の場合はそのような術式が無いので、若手の医師には新生児・乳幼児の体格・形態を模したシミュレーターを使って経験を積んでもらっています。

内視鏡外科手術は導入されてまだ20年ほどと歴史が浅く発展途上でもあり、まだ多くの課題があります。しかし、私の今までの経験ベースでは、この手術により晩期合併症(年月を経てから起こる合併症)をかなり減らせるのではないかと考えています。

小児の場合、たとえ治療が終わっても患者さんにはその後の長い人生が待っています。10年~20年たった後にどのような影響が出るかを考えながら治療をして、出来るだけ体に不都合が残らぬようにすることを念頭に置き、フォローアップしていくことを考えています。

私のポリシーは、病気にかかった子どもたちが健全な形で社会に出られるようにすることです。内視鏡外科手術はそのために欠かせないツールであり、今後も小児科・外科の先生に啓蒙を続けていきたいと考えています。

 

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