あなたが手術を受けることになったとしたら、術前に心臓超音波検査(以下、心エコー検査)を受ける必要があるかどうか、気になるのではないでしょうか。安全に手術できるか確かめるために検査を受ける人もいます。
心エコー検査は、超音波(エコー)を用いて、心臓の動きを動画として映し出す検査です。心臓のポンプ機能に問題があるかどうかを確認することができます。また、心臓発作や心不全を起こす危険についても評価することが可能です。
さらに、心エコー検査により、心臓が正常に働いているかを安全に確認することもできます。心臓病を医師が疑うとき、この検査は有用ですが、検査が必要でないケースも多々あります。以下にその理由を記します。
何の症状もない人が心臓のポンプ機能に問題があることは稀です。
心臓病や、そのように疑う症状がなければ、心エコー検査を受ける必要はありません。このような場合、心臓エコー検査は手術に悪影響を及ぼすような異常を見つけることはないでしょう。
標準的な心臓エコー検査は1000ドル~2000ドル(日本円で約12万〜25万円)の費用がかかります。(*日本の保険診療では3割負担で2700円程度です)仮に主治医が経過観察のために、経食道心エコー検査と呼ばれる検査をオーダーしたとすると、2000ドル以上(日本円で約24万円以上)の費用が追加でかかることになります。(*日本の保険診療では3割負担で4500円程度です)保険を適用しても、多ければ半額ほど自己負担する必要が出てくる可能性があります。
通常、心エコー検査は非常に安全です。放射線も使用しませんし、副作用ありません。しかし、この検査により誤った警鐘(※実際には病気ではないが、検査で陽性と出てしまうことなど)を鳴らしてしまうことがあります。心配になり、更に検査を受け、不必要な薬を飲み、手術が遅れるということもありうるのです。例えば、検査により何らかの異常が疑われた場合、経食道心エコー検査と呼ばれる別の検査も行うことがあります。この検査ではチューブを喉から食道まで入れるため、喉に痛みが出たり、稀ではありますが喉を損傷してしまうことがあります。
このほか、ランニングマシンで走った前後に検査を行う、負荷心エコー検査をすることもあります。この場合「要精密検査」となると、冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)を行うこともあります。これは非常に侵襲性の高い検査で、誤って検査を受けるには大がかりなものです。カテーテルと呼ばれる管を動脈から心臓へ通します。造影剤を注入して、X線照射が行われます。
術前に心エコー検査を行う必要があるのは以下の場合です。
・重篤な心臓病、例えば治療がうまくいっていない心不全、不規則な心拍(不整脈)、重い弁膜症など有する場合
・胸痛や息切れといった、心臓病を疑わせる症状がある場合
・以前よりも疲れやすくなったり、息切れしやすくなっている場合
このような場合、主治医が危険性を判定するために心エコー検査を行う場合があります。検査によって、手術の変更や延期をするかどうか判定します。
主治医や病院の術前担当チームが診察を行い、病歴を再確認します。
・何らかの検査をオーダーされたら、なぜその検査を行うのか理由を尋ねましょう
・4~6か月前からその時点までの検査結果を確認してもらうよう、主治医に依頼しましょう。通常、健康状態が変化しておらず検査を受けたのが最近なら、再度同じ検査を行う必要はありません。
・服用している薬剤、ビタミン剤やサプリメントの名前が載ったリストを持っていきましょう
・心臓病を疑わせる症状が現れたら、たとえどのようなものでも、診察が終わった後であっても報告しましょう
これらのステップを踏むことによって、手術はより安全なものになるでしょう。
禁煙をするのが早ければ早いほど、手術の合併症を防ぐことができます。手術に禁煙して臨むことは非常に重要です。禁煙をするのに手助けが必要なときは、主治医に相談しましょう。
術前に自分の血液をとっておき、貯血しておくことができます。これにより輸血が必要な時でも、自分の血液を使用することができます。輸血による感染症や拒絶反応が起こってしまうリスクを減らすことができます。
主治医にアスピリンや他の血液をサラサラにする薬の服用を中止すべきか、尋ねましょう。
・痛み止めが必要なときは、アセトアミノフェン
・イブプロフェンの使用は避けましょう。出血を引き起こす場合があります。
・病院まで送ってもらったり、夜間に付き添ってもらう人を探しましょう。看護やリハビリについてもお願いしましょう。
・保険証
・入歯、コンタクトレンズ、メガネ等とそのケース
・音楽プレーヤーやヘッドフォン、写真や部屋着を持って行きましょう
宝石やその他貴重品などは持ち込まないようにしましょう。
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能 前田広太郎
監修:小林裕貴、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長
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