獲得性プリオン病は、ヒトからヒト、動物からヒトへの感染によって二次的に起こるプリオン病です。狂牛病との関連が指摘されている「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」も獲得性プリオン病のひとつです。本記事では、獲得性プリオン病について述べていきます。
※本記事は、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患克服研究事業) プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班の研究代表者である、九段坂病院 院長 山田 正仁先生にご監修いただいております。
獲得性プリオン病は、プリオン病に感染しているヒトから他のヒトへ感染したり、人獣共通感染症としてプリオン病の動物からヒトへの感染によって二次的に起こるプリオン病です。何らかの理由により、外部から異常プリオン蛋白が体内に持ち込まれることで感染が成立し、発症します。獲得性プリオン病には医原性プリオン病や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)、クールー病などが含まれます。
獲得性プリオン病はプリオン病の中では数%と比較的稀なものです。現在のところ、発症前の検査方法はありません。症状が出現した後に、脳脊髄液検査や脳波検査、画像検査などで診断します。治療では、精神症状を示す初期の段階で診断する方法を見つけることや異常プリオン蛋を減少させるワクチンのようなものを開発するなどの研究が現在進行中ですが、今のところ有効な治療法がないのが現状です。
医原性プリオン病は医療行為が原因で感染したプリオン病のことです。医原性プリオン病の中で発生件数の多い代表的なもの硬膜移植によるものです。これまで計140例以上発生しています。1999年4月からのCJDサーベイランスでは硬膜移植1915例中87例発生していることが報告されていますフランス、イギリス、アメリカなどではヒト下垂体ホルモン製剤から感染した例も多く報告されていますが、幸いにして日本での報告例はありません。このほか、角膜移植による例や手術や深部脳波記録用の電極による感染例が報告されています。
牛の海綿状脳症(BSE)、通称“狂牛病”との関係が指摘されているプリオン病です。1985年からイギリスでBSEが大流行し、1993年にはBSE発病数が3万件以上という状況になりました。感染型プリオン蛋白は特に牛の脳や脊髄に存在し、これらの部位を原料とした飼料によりBSEの感染が広がったといわれていますが、脳脊髄以外の臓器でもプリオン蛋白の存在が示唆されています。1996年にイギリスにおいて変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)という新たなプリオン病を発症し、BSEで汚染された牛肉による伝播が考えられました。
当初はイギリスでのみ発症した病気でしたが、BSE汚染牛肉の輸出により、フランスを始めとしたヨーロッパ各国、アメリカ、カナダで少人数ながら発病が認められています。日本人では1件の報告があります。ほとんどの症例でイギリスの滞在歴があることがわかっています。現時点では患者数が180名以上に上っています。vCJDの潜伏期間は正確にはわかっていません。イギリスでは、vCJD患者を初めて確認した1996年当時から現在まで、人がその伝達性のある危険部位を食べてから発症するまでの期間(潜伏期間)を8年から10年と考えられています。プリオン蛋白遺伝子の多型がvCJDの発症しやすさに関係していることがわかっています。
クールー病とは、人肉を食べる風習をもつパプアニューギニアのある限られた部族の間で流行したプリオン病です。食人習慣によって感染が広まったことは、その後の食人禁止措置によって患者数が激減したことから証明されています。食人禁止措置が50年以上経過した現在でも、クールー病の発病が認められています。このことから、獲得性プリオン病の潜伏期間は、およそ50年におよぶ長期であることがわかります。
国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 院長
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