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インタビュー

血管輪の手術治療

血管輪の手術治療
寺田 正次 先生

東京都立小児総合医療センター心臓血管外科部長

寺田 正次 先生

記事1『血管輪とはどんな病気?血管が輪になって気道や食道を圧迫する子どもの病気』で述べたように、血管輪は様々な種類があります。とはいえその手術は難易度の高いものではなく、手術によって改善することができます。しかし、稀に重症化することもあるため注意が必要とされます。東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科部長の寺田正次先生に、血管輪の手術治療についてお話しいただきました。

多く見つかる時期はおおよそ生後5~6か月です。生まれてすぐに判明するケースはそこまで多くありません。新生児状態から少し成長し、段々と元気になって動きも活発になり始めたときに、喘鳴(ぜんめい:ぜーぜーひゅーひゅーと音を立てて呼吸をする呼吸器症状)が目立ったり、風邪症状が重くなりがちだったりして気づくケースが多く見られます。

血管輪の診断は画像診断(CTなど)が有力で、小児心臓の専門医が診断すればすぐに発見できます。

血管輪は、後述するように、まれに命にかかわる重症な例もある病気ですが、通常レベルの場合は手術ですぐに治すことができます。

手術はいたってシンプルなものですので危険性も高くありません。

ただし、まれに重篤なケースも見られます。東京都立小児総合医療センターでも1例あったのですが、本当に重症化して呼吸困難になってしまったときは、気管にチューブを入れて酸素を取り込む措置(そち)が行われます。

気管の中に硬い管を入れるとともに、食事もできませんから、経管(鼻から胃に直接つながる細いチューブ、経鼻栄養ともいう)で栄養剤も送る必要があります。ただ、こういった医療措置が逆効果になってしまうことがあるのです。

気管に硬いチューブが入ると同時に、食道にも管が入ると、気管と食道の両方に硬い物質が入ってくることになります。こうなると血管輪に接している食道の一部(血管輪は食道と気管を囲うようにして形成されています)に高い圧が加わり、大動脈と食道が接している箇所に穴が開いてしまうことがあるのです。つまり中に硬い芯(管)が入っているために、大動脈と食道が擦れてしまうことで摩擦が生じ、それによって穴が開いてしまうのです。その結果、食道からの出血が起こります。

こうなってしまった場合、血管輪をすぐに解除して穴が開いてしまった部分を縫えば一時的には改善しますが、血管輪を外した途端、今度は気管との間に穴が開いてしまう危険性があります。これにより大量の血液が気管に流れ込んでしまうと、もはや救命することは不可能となります。

このように、重篤な例もまれにありますが、基本的にここまで重症化することはほとんどありません。

一般的な重複大動脈の子どもの症状は、先ほど述べたように喘息に似ています。ぜーぜーと呼吸が荒く、息をするたびに音がします。また、後食道回旋大動脈弓(後述します)の症状で典型的なのは、生活するうえで大きな支障は見られないものの、硬いものや固形物の食事を嫌がることです。これにより血管輪だとわかることがあります。

実際、喘息と診断されて喘息用の薬を飲んでいた子どもが、何らかの機会にたまたまCTを撮って、たまたま通りすがりの循環器科医がその画像を見て、血管輪を発見した例もあります。

東京都立小児総合医療センターの血管輪の臨床例と手術内容

血管輪治療

上記は東京都立小児総合医療センターの症例ですが、重複大動脈弓は比較的早い時期に手術が行われます。一方、1歳7か月で手術をしたケースもあります。これは症状の程度によって手術の適齢が異なるためです。右側大動脈に伴う血管輪や後食道回旋大動脈弓の場合は年齢が上がる傾向にあります。

手術としては、もっとも代表的なタイプである重複大動脈弓(詳細は記事1『血管輪とはどんな病気?血管が輪になって気道や食道を圧迫する子どもの病気』)の場合は、右と左の大動脈弓のうち細いほうの血管を切ります。これによって輪が途切れ、食道と気管を圧迫しなくなるため、症状も改善されます。

右側大動脈に伴う血管輪の場合は痕跡的に残る部分と大動脈憩室から出ている索を切断する形になります。後食道回旋大動脈弓の場合、食道の後ろに行ってしまっている大動脈弓をもとの位置に戻すのは困難なため、動脈管索だけを切断します。いずれの場合も手術は難解なものではなく、やる価値も十分にあります。

血管輪の場合、特に大きな手術条件はありません。年齢が低いから、あるいは体が小さいから手術できないということもないと考えてよいです。そもそも血管輪は診断が遅れる可能性が大きい病気といわれています。たとえ「ものを飲み込みにくい」と子どもが訴えたからといって、一般のご両親が血管輪を疑うことはほとんどないでしょう。さらに重複大動脈弓は、レントゲン写真(X線)では確認できないため、見逃されてしまうこともあるのです。

とはいえ、手術すれば良くなることは間違いない病気ですし、診断もCTを撮ればすぐに判明しますから、診断をされてもあまり不安にならず、心臓血管外科にご相談してくださればと思います。

 

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  • 東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科 部長

    寺田 正次 先生

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