子どもが誤って物を飲み込んでしまい、それが気道に入ってしまうことを「誤嚥」といいます。気道に異物が入ることで呼吸器が炎症を起こし、喘鳴や呼吸困難が症状として現れます。ひどい場合は窒息してしまうこともあり、その際は緊急措置が必要となります。気道異物の原因には何があるのか、また窒息してしまった場合の対処法はどうすればよいのか、気道異物の予防法を含めて、東京都立小児総合医療センター呼吸器科の石立誠人先生にお話しいただきました。
症状に乏しくなかなか気付かれないものから、急激に呼吸が悪化し窒息となる場合もあり、様々な症状の出方をします。一般的には、子どもが突然激しくむせ込んだり、喘鳴、呼吸困難を起こした場合に気道異物を疑います。しかし、なかなか治らない喘息として治療されていて、検査してみてはじめて気道異物だと分かるといった長期の経過をとるものもあります。
枝豆を好きな子どもは多く、のどの奥にヒュッと入り込みやすいため、東京都立小児総合医療センターでも近年多くみられています。
もう少し大きくなった子どもでは魚の骨なども見受けられます。
●他に原因となる異物の具体例
ビニール(醤油の切れ端や玩具のビニール)
プラスチック
シール
プラモデルの部品
魚の小骨
ボールペンのキャップ
乳歯
痰の塊
生後6ヶ月頃から、子どもは身の回りの興味あるものを何でも口にもっていくようになります。年齢別にみると、3歳未満の児が全体の約80%、1歳児が全体の約60%といわれています。気道異物で運ばれてくる患者さんは、東京都立小児総合医療センターの場合、年に4~5件程度です。
・胸部X線検査
X線による検査で異物がどこに詰まっているかを確認します。気道に入っているのか、食道に入っているのかは側面の画像を撮るとわかることもあります。X線で写真に映るもの(歯、ボタン型電池など金属製のもの)と、映らないもの(食べ物、シールなど)があります。
・内視鏡検査
気道異物が疑われた場合は直接異物を観察します。喉頭異物の場合、喉頭ファイバースコープが用いられます。下気道異物の場合、全身麻酔が必要となり、そのうえで硬性気管支鏡あるいは気管支ファイバースコープを使って観察します。
気道異物の検査にあたり、大事なのは以下の3点だと考えています。
特にレントゲンで大事なことは、異物そのものが何なのかを知ることではなく、その異物によって生じた変化をみることにあります。たとえば肺が過膨張(肺が空気でふくらみすぎる状態)になったり、無気肺(肺がつぶれてしまう状態)になったりといったレントゲン上の変化が大事です。気道異物の場合、内視鏡で治療が行えるため手術になることはほとんどありません。
●気道異物で窒息してしまったときの対応
・まずは119番番通報をします
・意識の確認をします
・意識が無ければ心肺蘇生を行います(蘇生の記事にリンク)
・1歳未満であれば胸部突き上げ法と背部叩打法を交互に行います
・1歳以上であればハイムリック法(腹部突き上げ法)を行います
・救急隊が来るまで続けます
治療の流れとしては、全身麻酔をかけてから硬性気管支鏡の観察下に摘出を行いますが、異物が粉砕されてしまった場合は、異物を除去した後に気管内洗浄・吸引を行います。
異物摘出後は、喉頭・気道粘膜の浮腫などを予防するためにステロイドやエピネフリンなどの吸入や、点滴によるステロイド投与を行う場合があります。また、炎症所見がある場合は抗生物質を使用することもあります。
子どもが誤嚥してしまう大きさかどうかを調べる方法は、トイレットペーパーの芯を半分に切って、そこに入るかどうかを見るとわかりやすいです。万が一そこに入ってしまったものは子どもの手の届かないところに置きましょう。
また、子どもが何かを口に入れていても「怒らない」ことを心がけてください。明らかに食べ物ではない、おかしなものを口に入れても決して泣かせてしまってはいけません。泣いてしまうと呼吸が荒くなり、異物を吸い込んでしまいます。慌てず、「はい、吐き出してごらん」と促して冷静に吐き出させることが大事です。また、それが食べ物だった場合はスッと飲み込まないよう、少量の水分を取らせることも効果があります。食べ物の場合、より危険なものはぱさぱさと乾燥している食品です。
気道異物は気づかれにくい状態でもあります。なかには、ずっと子どもがぜいぜいしており、不思議に思っていたら、実は異物が入っていたと後になって分かることもあります。なかなか治らないゼイゼイが続いていた場合は注意が必要といえます。
誤嚥による気道異物は様々なシチュエーションで起こりうることを知っておき、危険だと思われるものを子どものそばに置かないように徹底してください。
東京都立小児総合医療センター 呼吸器科 医長
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