インタビュー

先天性喘鳴とは。気管支内視鏡による検査や治療が行われる小児代表疾患

先天性喘鳴とは。気管支内視鏡による検査や治療が行われる小児代表疾患
石立 誠人 先生

東京都立小児総合医療センター  呼吸器科 医長

石立 誠人 先生

この記事の最終更新は2016年04月27日です。

先天性喘鳴とは、生まれつき喉頭や気管の軟骨が脆く、呼吸時に狭窄が起こるため、呼吸困難や喘鳴を起こす先天性の病気です。先天性喘鳴の原因の多くは喉頭軟化症という病気であり、患者さんの半数は成長するに伴って軽快していくといわれます。ただし、稀に重大な病気を合併している可能性もあります。先天線喘鳴とはどのような病気なのかについて、東京都立小児総合医療センター 呼吸器科の石立誠人先生にお話しいただきました。

 

空気の通り道となる喉頭や気管の軟骨が脆くなっているため、呼吸をするときに気管の内腔が潰れて狭くなることで喘鳴(呼吸時にぜいぜいひゅーひゅーすること)が起こる病気です。

原因として、先天性喘鳴のほとんどは軽い喉頭軟化症といわれています。喉頭軟化症はのどの軟骨が柔らかいことが特徴ですが、大多数は成長とともに治る疾患です。その他の原因には、気管周囲の腫瘍や血管輪(血管輪の詳細は『血管輪とはどんな病気?血管が輪になって気道や食道を圧迫する子どもの病気』を参照)なども考えられています。

また先天性喘鳴は、吸気性喘鳴(吸うときに症状が現れる)に分類されます。

頭部縦割り画像
頭部各部名称

 

息を吸うときにぜいぜい、ひゅーひゅーといった雑音が聞こえます。その他、泣く、ミルクを飲むときに喘鳴が悪化するなどの症状が挙げられます。

生後2週間から1ヶ月ごろは、呼吸量が多くなって泣き声が大きくなるころであり、この期間に喘鳴が起こります。特に、興奮して泣いているときやミルクを飲んでいるときに悪化する傾向があります。生後すぐ喉頭軟化症を発症する場合もあるのですが、そのときは小さくて浅い呼吸をしている場合が多く、あまり気付かれません。大多数の先天性喘鳴は1か月~2か月(泣き声が大きくなり呼吸もはっきりできるようになってきたころ)に喘鳴が悪化することが多いといわれます。

ただし生まれてすぐぜいぜいと荒い呼吸をしていても、軽度であれば治ることも多いため、呼吸器科以外では「様子をみてください」といわれることもあります。様子をみて一か月たっても良くならない場合、あるいは哺乳が進まない場合に内視鏡検査が行われ、診断を確定することが多くなります。

喉頭軟化症の程度がひどかったり、他の病気があるときはぜいぜいとした呼吸音が長く続きます。ここまで悪化すると、ご家族も様子がおかしいと考える方が多いようです。かかりつけ医に紹介されて呼吸器科に来ると、大抵は何かしらの異常がみつかります。

喉頭軟化症の原因となる疾患は、喉頭軟化症や声帯麻痺など、上気道(空気の通り道のうち、口や鼻から声帯までの部分)の狭窄を伴う疾患になります。つまり先天性喘鳴のほとんどは上気道が原因です。そのため、まずは上気道側を調べていきます。異常がみつからなかった場合、今度は下気道(空気の通り道のうち、声帯よりもさらに先の部分)の異常の有無を調べます。

 

先天性喘鳴においてはファイバースコープ(詳細は記事1『子どもの気管支内視鏡とは? 大人の気管支内視鏡との違い』)を用いた検査を行い、呼吸時の喉頭の動きや形を確認します。

ファイバースコープで息を吸ったとき、喉頭の上部構造が引き込まれていることが確認できれば、喉頭軟化症による先天性喘鳴と診断できます。他の病気が疑われた場合は、MRIやCT、頸部X線を用いることもあります。

まれに声門下血管腫という、血管腫(血管の塊が赤く盛り上がったもの)が気道を閉塞してしまう重大な病気になっている場合もあります。この場合は造影CTで検査が行われますし、舌根嚢胞(舌の根元にできる嚢胞で、呼吸困難を引き起こす)の検査には頸部超音波検査が役に立ちます。

舌根嚢胞  提供:石立誠人先生

              

声門下血管腫
声門下血管腫 提供:石立誠人先生

 

原因が喉頭軟化症の場合は、成長とともに(半年経過したころ)自然に良くなることもあります。

ほとんどは2年以内に完治しますから、予後は概ね良いといって差し支えありません。ただし、腫瘍や血管輪などの別の病気が原因となっている場合は手術が必要です。

 

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    石立 誠人 先生

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