医用画像を診断に役立てるためのアプローチとして注目される「Radiomics」や「Radiogenomics」。実際にどのような方法で画像を診断に結びつけていくのでしょうか。「Radiogenomics」を例にとって、京都府立医科大学放射線診断治療学先端的磁気共鳴画像研究講座特任准教授の酒井晃二先生にわかりやすく解説をしていただきました。
「Radiogenomics」はまだこれからの学問ですが、実用化されればどのようなプロセスで診断が行われるのかを紹介します。
肺がんの例で説明します。まず画像を心臓や肺などの領域ごとに色分けします。さらに肺の中のこの部分に腫瘍があるということがわかるように区別します。この作業をセグメンテーションといいます。近年、このセグメンテーションの作業については自動化もしくは半自動化でできるようになってきており、特に難しい例を除いては、腫瘍がほぼ正確に抽出できるようになるまでに技術が進歩しています。そして、正確に抽出された腫瘍について、その中にある異常な領域をとらえ、その特徴をあらゆる側面から分析します。
例えば、形がギザギザなっているところや、その体積、進展方向の推定などといったことです。また、抽出された領域の内部は均一ではなく、いろいろな組成で構成されており、その分布の様子や占有体積などについても情報を数値化します。これが医用画像を数値情報に置き換える「データ化」というステップです。
一方で、この病変部分の遺伝子解析を行い、先ほどのデータ化された特徴との相関を調べます。このときに病名、遺伝子パターンが判別されていて、数字的特徴も算出出来ていたら、それらの関係をコンピュータが学習していきます。そのデータが我々の信頼に足るくらい大量に蓄積されると、いずれは新たな患者さんについて、生検(生体の組織や臓器から材料を採取して病理診断を行うこと)を行う前に、医用画像を解析しただけで、どのような病気かをこれまでよりも精度よく判別する情報を提供するというのが、「Radiogenomics」の目指すところです。
頭部のように腫瘍等の除去時以外に何度も侵襲的な細胞・組織の採取がしにくい場所では、生検を伴うことなく診断が可能になる日が来るかもしれません。
もちろんCTはX線を使うため、最低限の侵襲性はあります。ここにMRIやUSを使った画像のデータ化が進めばさらに検査自体の低侵襲を目指すこともできます。
酒井 晃二 さんの所属医療機関