インタビュー

慢性肺アスペルギルス症とは? 肺の病気や過去の結核が誘因となる

慢性肺アスペルギルス症とは? 肺の病気や過去の結核が誘因となる
河野 茂 先生

長崎大学 学長/長崎大学医学部第二内科 名誉教授

河野 茂 先生

この記事の最終更新は2016年04月12日です。

「昔、肺結核に罹ったことがある」という方は、現在の日本でも非常に多くみられます。このように、既に症状が治まって久しい結核の病変部位などにアスペルギルス(カビの一種)が棲みついてしまうことで、血痰や喀血などの症状が現れる慢性的な病態を「慢性肺アスペルギルス症」といいます。慢性肺アスペルギルス症に感染しやすい方とは、どのような肺疾患に罹患している人が多いのでしょうか。治療法や患者さんへのメッセージと共に、長崎大学 学長の河野茂先生にお伺いしました。

器質的な疾患とは、体の組織や器官に損傷などが生じており、病変部位を物理的に特定できる疾患のことを指します。具体的には、

●陳旧性肺結核(症状が収まった“古い”結核のこと)

●肺非結核性抗酸菌症

COPD慢性閉塞性肺疾患

●間質性肺炎

気管支拡張症

●嚢胞を含む、空洞性病変

などの基礎疾患が挙げられます。

そのため、胸部X線検査を行うと、空洞性の陰影の拡大や空洞壁の肥厚(空洞周囲の浸潤影の拡大)、胸膜肥厚の進行や丸い形をした真菌の陰影などがみられます。

また、慢性肺アスペルギルス症の患者さんの大半は、過去に結核に罹ったことのある高齢者層で、若い世代にはほとんどみられなくなっています。

慢性肺アスペルギルス症は、非常に長い経過を辿って発症するケースが多くみられます。前項で述べた肺の空洞病変にアスペルギルスが生着してしまい、5年や10年といった長い期間をかけて緩やかに悪化していきます。

※進行スピードが速い慢性肺アスペルギルス症の方もいます。

これらは、肺や気管支から出血が起こることによる症状です。このほか、咳や胸の痛み、呼吸困難など、呼吸器の症状が現れます。また、持続的な発熱や体重減少なども挙げられます。これらの症状が1か月以上続くようであれば、慢性肺アスペルギルス症の疑いが高まります。

肺アスペルギルス症と診断された方のうち、喀血や血痰がみられたり、呼吸不全や発熱、体重減少がある方の多くは入院していただくことになります。咳や痰が出るだけであれば、外来での治療となります。

喀血・血痰がみられるときは、出血を止めるために止血剤を投与したり、手術が必要になることもあります。これに加えて、抗真菌薬を投与します。抗真菌薬には、有効性の高いミカファンギンやボリコナゾールなど複数の種類があります。点滴製剤と経口製剤がありますが、副作用の発現率が高いものや併用薬に注意せねばならないものもあるため、一人一人の病状をみて決定していきます。

アスペルギルスは空気中に無数に存在する真菌であり、肺に問題のない健康な方であれば通常病気を発症することはありません。

肺アスペルギルス症に感染する患者さんとは肺に元々器質的な問題があり、また、日常生活でアスペルギルスを吸い込まないよう遮断することもできませんから、治療は難しいものになります。

特に、慢性肺アスペルギルス症の中でも肺非結核性抗酸菌症を合併している患者さんは注意が必要です。肺非結核性抗酸菌症の治療にはクラリスロマイシンという抗菌薬を使用しなければなりませんが、これは肺アスペルギルス症の治療に使用するアゾール系抗真菌薬の濃度を下げてしまい、効果を減らしてしまう可能性があるのです。

このように治療には多くの難しさがあることから、慢性肺アスペルギルス症のリスク因子である肺の器質的疾患を防ぐ生活を送ることが大切です。特に、喫煙は様々な肺疾患の原因となりますから、喫煙習慣のある方は禁煙するよう医師からのメッセージとしてお伝えしたいです。

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