筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター
梶 有貴 先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...
徳田 安春 先生
Choosing Wisely
医学的な理由から、予定日より早めに出産しなければならないケースがあります。例えば、予定日から1週間以上経っても赤ちゃんを出産できない場合、医師は出産を開始・誘発させることがあります。また、赤ちゃんが危険な状態にある場合、帝王切開を行う必要があるかもしれません。
このような出産方法は、命を救うために行われます。しかし、出産を急いだ理由が妊婦あるいは医師の都合に合わせるためのものだとしたら、妊婦と赤ちゃんの両方に重篤な問題を引き起こす可能性が高まることもあります。本記事ではその理由を解説します。
満期産では少なくとも39週の妊娠期間が必要です。もちろん、中には自然に早く産まれる赤ちゃんもいます。妊娠合併症によっては、早期出産が最も安全な選択肢となることもあります。しかし、ほとんどの胎児はしっかり成長するために39週を必要とします。39週以前の出産は、妥当な医学的根拠が無ければ胎児にとっても母親にとっても最善の選択ではないでしょう。
1990年から2007年にかけて、満期産の数が減少しており、37週・38週で出産を迎える数は2倍になりました。理由の1つとして、帝王切開や陣痛誘発により予定日以前に出産を行うことが一般的になってきていることが挙げられます。近年では、不必要な早産を減らすために、さまざまな手段をとっている病院もあります。しかし、未だに数多くの出産がスケジュール上の都合によって行われているのです。
39週間妊娠を継続することは、胎児にも母親にも健康上の利点があります。例えば、37週・38週では胎児の肺や脳は成長途上であり、健康な体温を維持するのに役立つ脂肪を蓄えている途中です。
陣痛誘発、または帝王切開により39週以前に産まれた赤ちゃんは、呼吸や摂食に関する問題を有したり、重篤な黄疸をおこしたり、生後に集中治療を必要とする可能性が高くなります。また、脳性麻痺を起こす可能性も高くなり、運動、聴覚、視覚、思考や学習に悪影響を及ぼしかねません。加えて、胎児死亡全体の可能性は低いものの、妊娠39週以前に産まれた赤ちゃんの死亡率は比較的高くなります。
少なくとも39週の妊娠期間を経た女性は、産後うつに罹りにくくなります。早く産まれる場合と比べ、赤ちゃんに問題が起こりにくいことが理由かもしれません。
出産への準備として、子宮頸部は薄く柔らかくなります。その後、子宮口が大きく開大します。しかし、子宮頸部に変化が起こらない場合、医学的根拠が無ければ妊娠39週でも陣痛を誘発してはいけません。
胎児の準備が整っていない場合、出産が順調に進みにくくなってしまいます。特に初産婦の場合、帝王切開を実施する可能性が高まります。また、胎児は出産後に集中治療を受けなければならない可能性も高くなります。
子宮頸部に出産の準備ができている兆候があるとしても、陣痛は自然に開始しなければならない理由があります。自然分娩の場合は、誘発分娩よりも容易かつ短時間です。また、陣痛初期は家で過ごすこともでき、動き回ることもできますし自分の好きなように過ごすことができます。
一方、陣痛を誘発する場合は病院で行います。医療機器に繋がれ、少なくとも静脈ラインと胎児心電図モニターを付ける可能性があります。陣痛を開始するために薬を飲み、絶飲食になることもあります。
分娩誘発は医学的根拠がある場合には適切です。破水が起こっている場合や、陣痛が開始されない場合などです。予定日より1週間以上経っても陣痛が開始しない場合は陣痛を誘発する必要があるかもしれません。
病院の喧騒の中では、心に余裕がなくなるかもしれません。自分自身を上手にコントロールし出産を順調に送れるように、3つの方法を紹介します。
・出産の際にはサポートを求める
出産の間、継続的にサポートを受けている女性は、出産の期間も短くなり医学的介入の必要性が少なくなります。家族、親しい友人、熟練した助産師(ドゥーラ)といった人から助けを受けることができるかもしれません。
・計画を立て自分自身の声を聞く
出産に向けて複数の計画を立てましょう。例えば歩行や妊婦体操を行ったり、またはシャワーを浴びたりします。分娩すべき時がきたら、仰向けにはならずに、まっすぐ立つか体を横にして寝ましょう。いつから分娩すべきか自分の本能を信じることです。研究によると、妊婦が自分自身で分娩すべきと思ったときの方が、他人に言われて分娩を開始するよりも良いと言われています。
・すぐに赤ちゃんを抱く
健康な新生児は、裸のまま母親の胸に抱かれていても温かいままです。生後すぐに離され、きれいに拭かれて服を着せられた子よりも、長い母乳栄養期間ができることになります。
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 大阪医科大学医学部医学科 前田広太郎
監修:梶有貴、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長
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