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逆流性食道炎はどのように治療する?酸関連疾患の検査・診断と治療

逆流性食道炎はどのように治療する?酸関連疾患の検査・診断と治療
池田 隆明 先生

横須賀市立うわまち病院 副病院長 消化器病センター長 消化器内科部長

池田 隆明 先生

消化のために必要な胃酸は、分泌が過剰になったり、逆流したりすると、胃や食道を荒らして酸関連疾患を引き起こします。

最近では食生活の変化や、鎮痛剤(NSAIDs)や低用量アスピリンを服用している高齢の整形外科・循環器内科系疾患の患者さんの増加など、様々な原因によって酸関連疾患の患者さんが増えています。酸関連疾患にかかった場合はどのように治療していくのでしょうか。引き続き、横須賀市立うわまち病院 副病院長 消化器内科部長 消化器病センター長の池田隆明先生にお話を伺いました。

逆流性食道炎は問診や内視鏡検査で診断が可能-酸関連疾患の検査と診断

問診を行う

酸関連疾患の診断においては、問診で患者さんの症状を詳細に把握することが重要です。

逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症の問診には『QUEST問診票』や『Fスケール問診票』が用いられることがあります。逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症は、問診でおよそ60〜70パーセントの診断が可能であるといわれています。

医師が問診を行っているイメージ

内視鏡検査で食道の状態を確認する

逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症、鎮痛剤(NSAIDs)による潰瘍は、内視鏡検査を実施することで診断をつけることがほとんどです。潰瘍に出血が認められれば、内視鏡下で止血を実施することもあります。内視鏡検査では食道の状態を細かく確認できるため、その他の病気の有無も調べることができます。

内視鏡検査 イラスト

内視鏡検査で異常がない場合はプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使ったPPIテストを行う

胸やけの症状がみられるが、内視鏡検査で異常がみつからない場合や内視鏡検査を行うことが難しい場合には酸分泌抑制薬によるPPIテストを実施します。

PPIテストでは、胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を1週間程服用し、内服によって胸やけなどの症状が改善されれば、逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症であると診断されます。

病変部位の組織検査

食道の病変が胃酸の逆流によるものか、他の病気によるものか判断が困難な場合は、病変部位の組織をとって検査を行うことがあります。しかし、組織検査を行うことはまれで、内視鏡所見のみで診断をつけることがほとんどです。

逆流性食道炎の治療

酸関連疾患はプロトンポンプ阻害薬(PPI)で治療する

酸関連疾患は、主にプロトンポンプ阻害薬(PPI)という酸分泌抑制薬の服用によって治療していきます。プロトンポンプ阻害薬(PPI)にはいくつか種類がありますが、その効力はほとんど同じですから、数種類のなかから個々の患者さんに合ったプロトンポンプ阻害薬(PPI)を選んでいきます。

新しいPPIの一種『P-CAB』

また、酸関連疾患の治療には従来のプロトンポンプ阻害薬(PPI)だけではなく、P-CABという2015年に発売された新薬を使うこともあります。

P-CABも酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)の一種ですが、従来のプロトンポンプ阻害薬(PPI)と作用のメカニズムが異なり効果発現に個人差が少なく、比較的均質に酸を抑えることができるといわれています。

逆流性食道炎の治療期間は人それぞれ

逆流性食道炎の患者さんの場合、胃酸の逆流しやすい状態が時間の経過で大きく改善することは少ないため、薬の服用をやめると再び胸やけや呑酸(どんさん)などの症状が発現することがあります。そのため基本的には症状が改善した後も、薬の量を減らして服用を続けていきます。

逆流性食道炎を放置すると?

逆流性食道炎は、治療を行わずに放置しているとごくまれですが食道腺がんを発症することがあります。食道は通常、扁平上皮(へんぺいじょうひ)という粘膜で覆われています。しかし、逆流性食道炎の状態が長く続くと、食道の粘膜が、胃や腸と同じ円柱上皮(えんちゅうじょうひ)という粘膜に変わるバレット食道に変化してしまいます。この円柱上皮(えんちゅうじょうひ)には食道がんの発生に関与している細胞組織が含まれているため、バレット食道になると食道腺がんが発生することがあります。

薬を飲んでいる人

薬物療法は胃酸のコントロールが重要

胃酸は消化や吸収などの働きに必要な物質ですから、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やP-CABを長期間服用することによって胃酸を抑制しすぎると、胃酸本来の機能も弱めてしまいます。

胸やけなどの自覚症状がなくなった場合は、薬の量を減らしたり、他の薬に置き換えたりするなど胃酸のコントロールが必要になります。

鎮痛剤(NSAIDs)による潰瘍の治療

鎮痛剤(NSAIDs)による潰瘍の治療ではプロスタグランジン製剤の服用も行う

鎮痛剤(NSAIDs)による潰瘍の治療では、できる限り鎮痛剤(NSAIDs)の服用を止めてNSAIDsではない鎮痛剤に変更し、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染がみられる場合は除菌を行います。

鎮痛剤(NSAIDs)の中止が難しい場合には、逆流性食道炎と同様にプロトンポンプ阻害薬(PPI)やP-CABの服用で胃酸をコントロールする治療を行います。また、プロスタグランジン製剤という胃粘膜を保護する薬を使用する場合もあります。

出血に対しては内視鏡下で止血を行いますが、まれに止血が困難な場合は外科手術を行うこともあります。

逆流性食道炎で外科手術が必要なケースはまれ

薬物療法で症状が改善されない逆流性食道炎の場合は、胃酸の逆流を防ぐために、胃と食道のつなぎ目(噴門)を修復する噴門形成術という外科手術が行われることがあります。

しかし、外科手術が必要なケースは非常にまれで、ほとんどの患者さんは薬物療法によって症状が改善します。

逆流性食道炎など酸関連疾患を予防するには?

食生活に気をつけることで予防する

脂肪の過剰摂取は、食道下部の括約筋が緩む原因となります。

また、肥満になると腹圧が高くなり、胃酸が逆流する原因となるので、肥満を予防するという意味でも脂肪の摂りすぎには気をつけましょう。肉を過剰に摂取すると、消化のために胃酸分泌が盛んになり、潰瘍のリスクが高まります。

食事

鎮痛剤(NSAIDs)服用の注意点とは?

鎮痛剤(NSAIDs)と一緒に胃の粘膜保護薬を処方されることがあります。しかし、胃の粘膜保護薬だけでは、潰瘍を完全に予防することは困難です。ですから鎮痛剤(NSAIDs)は不必要に長期間服用せず、短期間に留めることが大切です。

また潰瘍の既往(病歴)がある方は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を一緒に服用することで潰瘍を予防します。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は除菌しないほうがいい?

記事1『胃酸が逆流する原因は? 逆流性食道炎をはじめとする酸関連疾患とは』でも述べたように、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)と酸関連疾患は大きく関わっています。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因であることが明らかになっています。また、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染者が、鎮痛剤(NSAIDs)を服用することで、潰瘍発生のリスクが高くなります。そのためピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は除菌するほうが望ましいといえますが、除菌を行うと胃酸分泌が盛んになることを意識しなければなりません。

池田先生からのメッセージ

我慢せずに医療機関を受診することが大切

酸関連疾患のなかで逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症はすぐに命に関わる病気ではありませんが、どなたでもかかる可能性のある身近な病気です。胸やけなど気になる症状がある場合には、自己判断によって市販薬を使うのではなく、早めに医療機関を受診してください。

低用量アスピリンによる出血性の潰瘍が増えている

鎮痛剤(NSAIDs)よる潰瘍のなかでも、特に低用量アスピリンによる出血性の潰瘍が増加しています。低用量アスピリンの服用によって発生した出血性の潰瘍は、他の鎮痛剤による潰瘍に比べて、止血が困難であるという特徴があります。これは、低用量アスピリンに抗血小板作用があるためです。

低用量アスピリンは、鎮痛ではなく心筋梗塞や脳梗塞を防ぐ目的で、循環器系疾患などで処方されることが多い薬剤です。そのため、NSAIDsの一種であるという認識がない方も多くいらっしゃいます。一般的に安全な薬であるというイメージが強いのですが、低用量アスピリンによって潰瘍が発生するリスクがあることを認識し、必要以上に服用しないよう意識してください。

また、整形外科や循環器内科で処方された鎮痛剤(NSAIDs)や低用量アスピリンによって潰瘍ができた場合でも、それを治療するのは私たち消化器内科の医師です。

消化器内科以外の診療科の医師も、鎮痛剤(NSAIDs)や低用量アスピリンによって胃の粘膜が荒れて、潰瘍が起きるというリスクがあるということを理解しておく必要があると感じます。鎮痛剤(NSAIDs)や低用量アスピリンを処方する際には患者さんへの事前説明を行うことはもちろん、潰瘍の既往(病歴)がある患者さんには予防的にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与することも可能だからです。

鎮痛剤(NSAIDs)を服用する場合は効能だけでなく、潰瘍発生のリスクがあるということを認識して、必要以上に服用することがないように気をつけなければなりません。