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消化器内科・消化器外科・肛門科の3領域の調和を目指す―第72回日本大腸肛門病学会学術集会の抱負

消化器内科・消化器外科・肛門科の3領域の調和を目指す―第72回日本大腸肛門病学会学術集会の抱負
松井 敏幸 先生

福岡大学筑紫病院 臨床医学研究センター/消化器内科 名誉教授

松井 敏幸 先生

この記事の最終更新は2017年10月31日です。

2017年11月10日(金)11日(土)に福岡県福岡市にて開催される「第72回日本大腸肛門病学会学術集会」。主催者である日本大腸肛門病学会は、大腸・肛門疾患を扱う消化器内科、消化器外科、肛門科の3つの診療科の関係者が集まり、大腸・肛門疾患の研究発表やこれらの疾患に対し診療科をまたいだ専門医制度の創設を目指しています。2017年で72回を数える本大会のテーマは「大腸肛門病学会専門医像と3領域の調和」です。大腸肛門病学の発展のため、本大会が目指すものや見どころは何か、大会長である福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター 消化器内科 教授の松井 敏幸先生にうかがいました。

日本大腸肛門病学会は、消化器内科、消化器外科、肛門科の3科が中心となり大腸や肛門の疾患を扱う学会です。この3科をまたぐ疾患は複数あり、直腸肛門領域の腫瘍、クローン病潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や便秘などが挙げられますが、体制からして3科が協調することは難しい状況でした。特に肛門科においては、大学や総合病院では独立した診療科として存在することはほとんどなく、地域の開業医の先生が大多数です。ですから、たとえ肛門科の先生が新たな術式を開発したとしても、術式に命名するなどといったいわゆる「権威化」が難しい状況だったのです。

それぞれが連なる領域をみながらもうまく連携が取れていない状況を打破し、3科が協力して疾患の病態解明や治療法の研究を推進するため、1940年に日本大腸肛門病学会(設立当時は日本直腸肛門病学会)が誕生しました。

2017年現在、会員数は約7,000名で、内訳は外科医・内科医・肛門科医が7対1.5対1.5となっています。

本学会は主に大腸・肛門疾患の研究のほか、専門医制度の創設を視野に入れて活動しています。

そして、来たる2017年11月10日(金)11日(土)に、福岡県福岡市にて第72回日本大腸肛門病学会学術集会が開催されるはこびとなりました。およそ2日間の会期で3,000〜4,000名が参加する見込みです。次章から、本大会の概要や講演の一部をご紹介します。

本大会のテーマは「大腸肛門病学会専門医像と3領域の調和」です。

テーマを踏まえ、各種講演では、消化器内科、消化器外科、肛門科の3領域のバランスのとれた講演をそろえました。

会長講演では「難治性クローン病」について、私が登壇いたします。

特別講演では「腸内細菌叢とFMT」、トイレなどの水回りのメーカーで知られ、北九州市に本社を置くTOTO株式会社の開発担当者を招いた「大便器開発の歴史と最新のトイレ事情」を開催予定です。また、慶應義塾大学金井隆典教授による「腸内細菌叢とFMT」も予定されています。 

そのほか、下記の講演を予定しています(一例)。

招請講演

  • Diagnosis and management of ileal pouch disorders
  • Trend in increasing IBD incidence and common genetic backgrounds
  • Surgery for Complex Problems in Inflammatory Bowel Disease
  • A potpourri of coloproctology : ever-changing approach and evidence

教育講演

  • 直腸・肛門管の解剖:骨格筋と平滑筋の相補的構成について
  • 炎症性腸疾患診療のup to date
  • 排便機能障害における機能再生・再建の現状と展望

特別企画

  • 「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」制定に対する日本大腸肛門病学会の取り組み

そのほか、シンポジウムやパネルディスカッションなどの内容については下記をご覧ください。

第72回日本大腸肛門病学会学術集会 プログラムはこちら

本大会の特別企画ガイドラインセミナーでは、便秘、大腸ポリープ、肛門疾患、便失禁、ストーマ関連合併症、大腸ESDの6疾患を取り上げます。

  • わが国初の慢性便秘症ガイドラインの概要
  • 大腸ポリープ診療ガイドライン -解説と今後の課題
  • 便失禁診療ガイドラインの概要
  • 肛門疾患診療ガイドライン -評価と課題-
  • 日本消化器内視鏡学会編「大腸ESD/EMRガイドライン」の概要
  • ストーマ造設とストーマ関連合併症に関する手引き

ガイドラインセミナーの1テーマである便秘は、近年、新薬が登場しています。便秘というと軽くみられがちですが、なかには直腸がまったく機能しないタイプの便秘もあります。そうした直腸が機能しないタイプの便秘では、内科的治療のほかにも外科的治療があります。

いくら新薬が出ても、それですべてを解決できるわけではありません。薬ではまかないきれない部分を、外科的治療ですぐに解決できます。これは内科医だけではできないことです。

また、肛門科の主たる疾患であるは、最終的に手術を実施して治療する例もあります。しかし近年では注射のみで治療できる方法も出てきています。

このように、内科・外科・肛門科の三者が手を組めば大腸・肛門疾患を治療できる道筋がみえてくるのです。

先にも述べましたが、特別講演ではトイレなどの水回りの製品のメーカーであるTOTO株式会社の開発担当者を招いた特別講演を行います。

TOTOは、通常の水回り製品だけでなく、患者さんの自然な排尿状態を測定できる便器や、排便臭のデータ取得できる便器の研究・開発などを行っています。

メーカーの技術力と医学を組み合わせて、より患者さんの負担の少ない検査や、日々の排泄からの疾患の早期発見が可能な時代がきていることを体験できる内容になっています。

そのほか、メーカーとの共催セミナーも21演題が決定しています。演題の一部は以下のとおりです。

  • 便秘型過敏性腸症候群の診断と治療-過敏性腸症候群と慢性便秘症の両診療ガイドラインをふまえて―
  • 腸内細菌から見た大腸の役割―小腸と大腸では大違い―
  • 大腸癌後方ラインにおける治療戦略 ―常識と非常識―
  • IBD関連腫瘍の疫学・診断・治療
  • Harmonicで目指す!技術認定医合格
  • 私の痔瘻手術~リニア式経肛門的超音波検査を利用した深部の痔瘻の治療~
  • IBD治療に用いられるバイオ医薬品について
  • 3領域が競争心と敬意を持ち、患者さんへ医療を還元する

本学会は、異業種ともいえる外科・内科・肛門科の3種をまとめて、医学の発展や患者さんへの医療の還元のために協力できる環境をつくることがその役割ととらえています。たとえばの患者さんがいた場合、彼らは内科に行けばいいのか外科に行けばいいのか、肛門科に行けばいいのか迷ってしまいます。

繰り返しになりますが、大腸や肛門の疾患をみるこの3科が一体となり、それぞれの知識や技術を共有し、互いに敬意を表しながらさらなる研鑽を積むことがよりよい医学の発展を支えていくことでしょう。そして3科による新しい専門医ができれば、より体系的に大腸・肛門疾患の臨床や研究ができると考えています。本大会では三者が互いに認め合い、磨きあえる場をつくることができればと思います。

学術総会

学会名:第72回日本大腸肛門病学会学術集会

    The 72nd Annual Meeting of Japan Society of Coloproctology

会 期:2017年(平成29年)11月10日(金)・11日(土)

会 場:福岡国際会議場(福岡市)

    〒812-0032 福岡市博多区石城町2-1 TEL: 092-262-4111

会 長:松井 敏幸(福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター(消化器内科)教授)

副会長:二見 喜太郎(福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター(外科)診療教授)、荒木 靖三(社会医療法人高野会くるめ病院 院長)

テーマ:大腸肛門病学会専門医像と3領域の調和

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