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インタビュー

尿細管性アシドーシス(RTA)の症状・検査・治療

尿細管性アシドーシス(RTA)の症状・検査・治療
三浦 健一郎 先生

東京女子医科大学 腎臓小児科 講師

三浦 健一郎 先生

尿細管性アシドーシスは、腎臓の尿細管の異常が原因となって血液が酸性に傾く状態が起こる疾患です。アルカリの補充などの治療によりほとんど改善しますが、腎石灰化(じんせっかいか)や難聴という根治の難しい症状を示す方もいて長期的なフォローアップが必要とされています。また、お子さんに遺伝する可能性がある疾患のため、気になる方は遺伝カウンセリングを参考にするとよいでしょう。

今回は尿細管性アシドーシスの症状・検査・治療について、東京女子医科大学腎臓小児科講師 三浦健一郎先生にお伺いしました。

健やかな赤ちゃん

遠位尿細管性アシドーシス(Ⅰ型RTA)は、遠位尿細管で酸を排泄できない疾患です。

遺伝による遠位尿細管性アシドーシス(Ⅰ型RTA)の主な症状は、乳児期の成長障害です。哺乳不良*やそれに伴う体重増加不良がみられます。また尿濃縮力*の異常により、水を飲む量が増えて多尿になる(多飲多尿)ため、ほとんどの患者さんはおねしょが長引きます。

哺乳不良……赤ちゃんの哺乳力が弱く授乳が困難なこと

尿濃縮力……水分が多く排泄され過ぎないように尿を濃縮する力

成人してから発症した場合には、筋力低下や、電解質異常*の1つである低カリウム血症*が現れます。また低身長の方が多くみられます。

無治療の場合は骨にまで影響が及び、くる病骨軟化症を発症するといわれています。しかし症状が進行する前に治療を行うことが可能なため、骨が弱くなるまで症状が進行する方は今では減少しています。

電解質異常……体内のイオンの量が調節できなくなる異常

低カリウム血症……血液中のカリウム濃度が低い状態

遠位尿細管性アシドーシスの患者さんは、正常な人と比べて腎機能の働きがよくないといわれています。腎石灰化や腎結石の起こる方が多く、腎機能の状態には長期的に注意する必要があります。

腎結石症が起こって、腎臓にできた結石が移動して尿管(にょうかん)に詰まると、わき腹に激痛が生じることがあります。

遠位尿細管性アシドーシスと腎石灰化の関係性

遠位尿細管性アシドーシスの患者さんに腎石灰化が起こる確率は明らかになっていません。遺伝子解析が行われるようになり10年~20年程度しか経っていない昨今、小児の頃に診断を受けた方が40~50歳になるまでフォローされているケースがまだ少ないためです。

また、腎石灰化や腎結石症と診断されている方や、腎臓機能が悪く透析治療を行っているような方のなかに、まだ診断されていない遠位尿細管性アシドーシスの患者さんがいる可能性はあります。家族に腎結石や尿路結石のある方がいると、遺伝を疑って診断がつくこともあります。

先天性の遠位尿細管性アシドーシスではこの他に、難聴が起こる可能性があります。根本的な原因を取り除くことはできないため、耳鼻科との連携による継続的なフォローアップが重要となります。

診察中の小児と医師

近位尿細管性アシドーシス(Ⅱ型RTA)は、近位尿細管からリンやアルカリが失われてしまう疾患です。ほとんどの場合、ファンコーニ症候群の症状の1つとして発症します。

近位尿細管性アシドーシスは先天性・後天性に関わらず、多飲多尿や、骨軟化症骨粗しょう症などが引き起こされる可能性があります。しかし、失われた成分を補充するなど適切な治療を行えば、重篤な症状に至ることはありません。

近位尿細管性アシドーシスは、薬剤の副作用によって一時的に生じることがあります。多くの場合は投薬の中止によって症状が改善します。特にバルプロ酸などの抗けいれん薬による副作用の場合はほとんど症状を取り除くことが可能です。

ただし、抗がん剤治療を行っている方の場合、投薬を中断することができないまま尿細管性アシドーシスが進行し、末期腎不全に発展するケースがあります。非常にまれですが透析療法*や腎移植が必要になることもあります。

透析療法……血液中の老廃物を人工的にろ過する治療法

血液検査

尿細管性アシドーシスの診断は、血液検査の項目である血液ガス*の数値によって確定します。血液ガス分析では血液pH(血液中の酸とアルカリのバランス)を測定し、血液が酸性に傾いているかどうか判定することができます。

ただし、他の疾患と比べて尿細管性アシドーシスの診断は遅れる可能性があります。血液ガスは基本的な検査ではありますが、病院でつねにデータが取られる項目ではありません。赤ちゃんに重篤な症状がみられるときには診断がつくまでさまざまな検査を実施するため、疾患が見逃されることはあまりありませんが、症状が穏やかな場合には検査を急がないこともあります。赤ちゃんの体重増加不良が長期的に続くなど明らかな異常がみられるときには、必ず医療機関を受診するようにしてください。

血液ガス……血液内の酸素や二酸化炭素などの気体のこと

尿細管性アシドーシスは、特徴的な症状が現れて初めて診断につながる疾患です。後天的には薬剤の副作用で発症することがわかっていますが、投薬の時点から発症を予測することは難しく、通常は副作用よりもその薬剤による治療効果の利益のほうが上回ると考えられるからです。

三浦先生

尿細管性アシドーシスの治療は対症療法です。現れた症状を補正することが治療の方針となります。失われたアルカリの補充と、カリウムの補充(電解質の補正)が主要な治療となります。ファンコーニ症候群が原因となっている近位尿細管性アシドーシスでは、リンの補充が必要な場合もあります。

遺伝による発症の場合は根本的に原因をとり除くことができないため、生涯にわたって治療が必要となります。薬剤の副作用による一時的な発症であれば、服薬の中止が原因を取り除くことにはなりますが、薬剤性でも基本的には対症療法で症状の改善を目指します。

なお、腎臓に結石が生じている場合は泌尿器科、難聴が起こっている場合は耳鼻科など、症状に応じた診療科と連携して治療に取り組みます。

アルカリを補充するためには、炭酸水素ナトリウムやクエン酸などの薬剤が用いられます。

遠位尿細管性アシドーシスでは、特に結石予防の効果を持つクエン酸がよく選択されます。クエン酸のキレートという作用が、結石の原因となるカルシウムを取り除くためです。クエン酸にはカリウムも含まれており、電解質の補正も同時に行うことができます。

また、結石予防には水分をしっかり摂取することが効果的です。

尿細管性アシドーシスの治療薬はごく一般的な飲み薬です。粉薬と錠剤のどちらを服薬するか選択することができます。飲みやすい薬剤が普及していなかった頃は、アルカリを水に溶かして治療用の特別な溶液を作るなど工夫されていましたが、現在は飲みやすくなっています。

きょうだい

女性にとって気になるポイントですが、尿細管性アシドーシスはほとんど妊娠時のリスクにならないと考えられます。ただし腎臓の機能が低下している方は、妊娠すると腎臓に負担がかかりやすくなることから、腎機能が正常な方に比べて妊娠時のリスクが高まることがあります。

尿細管性アシドーシスは遺伝する可能性がある疾患です。自身のお子さんに疾患が遺伝するかもしれないとき、気になる方は遺伝カウンセリングを受けるとよいでしょう。遺伝カウンセリングでは、遺伝に関するあらゆる情報提供や、疑問や不安に対するサポートが行われており、出産後の見通しや遺伝子検査などについて相談することができます。

遺伝子検査では、尿細管性アシドーシスの患者さんが持つ遺伝子が優性遺伝*と劣性遺伝*のどちらであるかについて調べることができます。優性遺伝の場合はお子さんに遺伝する可能性があり、劣性遺伝の場合に遺伝することはまれです。また、尿細管性アシドーシスを発症しているお子さんをもつ親御さんが次子を希望する場合、遺伝子検査によって、次子にも病気が発症する可能性があるのかどうかということと、その確率を知ることができます。

遺伝子検査はどこの病院でも受けられるわけではありませんが、患者さんの希望に応じて実施が可能です。

優性遺伝……2つで一組の遺伝子のうち、片方の異常のみで病気が発症すること

劣性遺伝……2つで一組の遺伝子のうち、両方が異常になった場合のみ病気が発症すること

尿細管性アシドーシスは、診断されれば適切な治療が受けられる疾患です。腎石灰化や難聴など根本的な治療の難しい症状が現れる方もいますが、ほとんどの症状は日常生活に支障が出ないよう補正することが可能です。診断を受けた方は、きちんと服薬するなどしっかり治療に取り組むことが大切です。

 

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