こつなんかしょう

骨軟化症

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

骨軟化症(こつなんかしょう)※1とは、骨や軟骨の石灰化障害(せっかいかしょうがい)により「類骨」の割合が増えることで起こる病気です。

正常な硬い骨が形成されるためには、骨基質の石灰化(リン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどが沈着すること)が必要です。幼弱な未石灰化部分である類骨の割合が増えると、偽骨折による骨の痛みや骨折、筋力低下など、骨の弱さ(軟らかさ)に伴うさまざまな症状が生じます。

おなじように骨や軟骨の石灰化障害がきっかけとなる小児の病気に「くる病※2」があります。発症原因は同じだと考えられていますが、成長軟骨帯(せいちょうなんこつたい:成長期特有の軟骨組織のこと)が骨へと完全に置き換わるまえに発症するものは「くる病」、それ以降に発症するものは「骨軟化症」とよばれます。

骨軟化症(及び「くる病」)は、国の指定難病に定められている病気で患者数は多くなく、原因によっては長期の治療が必要とされることが多いといえます。なお、骨が脆くなる病気として一般的に知られている骨粗しょう症は、骨密度が低下する病気であり、類骨の割合が増加する病気である骨軟化症とは異なります。

原因

骨軟化症の原因は、「FGF23」が過剰に作られることによる低リン血症や、ビタミンDの作用不足、腎臓の尿細管障害やその他の石灰化障害などさまざまです。ここでは、FGF23関連低リン血症を原因とした骨軟化症について解説します。

【FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症(ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症)の原因と発症メカニズム】骨軟化症のなかには、「FGF23」というホルモンが過剰に作られ、低リン血症をきたすことで起こるFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症(ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症)があります。リン(P)はミネラル成分のひとつで、骨の成長や石灰化に欠かせないミネラルです。

FGF23関連低リン血症は先天的・後天的な原因によりFGF23が増え、腎臓におけるリンの再吸収障害が起こり、摂り込んだリンが尿中に過剰に排泄されることで起こります。またFGF23は、腸管におけるリン吸収も抑制する作用を持っています。

先天性FGF23関連低リン血症の原因は、遺伝子異常です。原因となる遺伝子異常によりFGF23が過剰に作られることで、血中リン濃度の低下が引き起こされるとされています。先天性FGF23関連低リン血症にはいくつかの病気が含まれますが、最も頻度が多い病型はPHEX遺伝子の異常によるX染色体優性低リン血症性くる病(XLH)とよばれる疾患です。しかし、本疾患においてFGF23がどういったメカニズムで過剰につくられてしまうかについては2018年1月現在、明確にされていません。

後天的なものの代表例としては、Phosphaturic mesenchymal tumor, mixed connective tissue variant(PMTMCT)と呼ばれる腫瘍によりFGF23が過剰に作られる「腫瘍性骨軟化症」が知られています。一部の腫瘍性骨軟化症の原因となる腫瘍では、病気を引き起こす体細胞変異(後天的で一部の組織にかぎられた遺伝子変異)が報告されていますが、すべての腫瘍でFGF23が過剰に産生される原因が解明されているわけではありません。

また、ファンコーニ症候群というFGF23とは関係なく、腎臓でのリン再吸収が直接的に障害される病態もあります。

症状

骨軟化症には以下のような症状や検査所見があります。

 症状

  • 骨痛
  • 筋力低下
  • 胸郭の変形(鳩胸:はとむね)
  • 脊柱(せきちゅう:体幹の軸となっている骨格)の変形
  • 骨折(ぎこっせつ:骨軟化症に特徴的にみられる骨の症状)
  • 骨折
  • 虫歯

 数十年の経過で出現する症状、病態

  • 脊柱靭帯の石灰化(後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症)
  • 腱の石灰化
  • 関節症

おもな症状は骨の痛みと筋力の低下です。骨の石灰化が障害されることで柔らかい骨ができるため、骨の変形などがみられます。また、適切な治療がおこなわれないと、著しい骨痛と筋力の低下から完全に寝たきりとなってしまう場合もあります。また、骨痛を感じないような軽度の骨軟化症でも、経過が長期に渡ると改善しない関節症や脊柱靭帯の骨化症(後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症)などを発症します。

検査・診断

骨軟化症では、このような項目が診断につながります。

  • 低リン血症
  • 高アルカリホスファターゼ血症/高骨型アルカリホスファターゼ血症
  • 筋力低下や骨痛といった症状の有無
  • 骨密度の測定
  • 画像検査(骨シンチグラフィー、骨MRI撮影、骨単純 X 線撮影など)

など

骨軟化症では慢性の低リン血症がみとめられるため、似ている疾患との鑑別をおこなうためにも低リン血症かどうかを明らかにすることが大切です。低リン血症があるにもかかわらず血中FGF23濃度が30 pg/ml以上であればFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されます。低リン血症があり、FGF23が30 pg/ml未満で、25OHDが20 ng/ml未満であれば、ビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症を疑います。
画像検査では骨シンチグラフィーや単純 X 線検査などをおこない、骨軟化症特有の所見がみられるかどうかを判断していきます。

治療

ビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症はビタミンD(自然型ビタミンDもしくは活性型ビタミンD)の補充で改善します。一方、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症やファンコーニ症候群などでは、リン製剤や活性型ビタミンD製剤をつかった薬物療法がおこなわれます。

しかし、これは病気の原因を標的とした治療法ではなく、症状を緩和させるための治療法です。こうした治療によって筋力低下や骨痛の改善がみられることが多くあります。しかし完全な症状の改善は得にくく、また血中リン濃度を正常値に保つように高用量の活性型ビタミンD製剤とリン製剤を使用すると、慢性腎不全の発症率を上げてしまうために注意が必要です。

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