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インタビュー

ビタミンD依存性くる病・骨軟化症の治療と経過、病院の取り組み

ビタミンD依存性くる病・骨軟化症の治療と経過、病院の取り組み
伊東 伸朗 先生

東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

伊東 伸朗 先生

目次
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ビタミンD依存性くる病骨軟化症とは、遺伝子の変異により生まれつき発症し、骨の痛みや変形などの症状が現れる、指定難病のひとつです。ビタミンDの製剤の補充などにより、骨や関節の症状にある程度は対処できるため、なるべく早く治療を開始することが重要です。

今回は、ビタミンD依存性くる病・骨軟化症の治療と経過、病院で行われている取り組みについて、東京大学医学部附属病院 伊東伸朗先生にご解説いただきました。

ビタミンD依存性くる病骨軟化症は、根本的に治療することは難しいと考えられていますが、骨折などの症状が引き起こされる前に、ある程度は対処することが可能な病気です。体内でビタミンDの作用が低下している状態がみられることから、活性型ビタミンD(ビタミンDの製剤)の投与などが行われます。

ただし、無治療のまま長期間が経過して、変形性の関節症が引き起こされた場合などは治療が困難になるため、なるべく早く治療を開始することが重要です。

また、1型と2型では、それぞれ治療法が異なります。

1型の場合、活性型ビタミンDの投与が行われます。1A型であれば、一般的に良く処方されている1α水酸化ビタミンDの投与も効果をしめします。

しかし、1B型では、体内に取り込まれたビタミンDが2段回の過程を経て「活性型ビタミンD」という形に変化する(活性化する)際の第1段階目の活性化に必要な酵素に異常があるため、1α水酸化ビタミンDが活性型ビタミンDに変化することができません。したがって活性型ビタミンDを用いて加療する必要があります。

このように、治療薬を選ぶ際にも違いが生じるため、治療がうまくいかない場合には可能な限り遺伝子診断まで行うことが重要です。早く治療を開始することで、繰り返す骨折や偽骨折による疼痛、寝たきりの状態などを防ぐことができます。骨や関節の症状に気づいたら、なるべく早く医師に相談してください。

2型の場合、通常量の活性型ビタミンDの投与では症状が緩和できません。しかし、高用量の活性型ビタミンDによって症状が改善~軽快する患者さんもいます。

また、高用量のビタミンDで治療が困難な場合でも、カルシウム製剤を併用して補充することによって、骨や関節の症状についてはある程度の改善が期待できます1)。この場合は、血中カルシウムの治療目標を低く設定し、腎機能障害を起こさないように注意することが重要です。

1型と2型の違いは?

1型は、体内で使えるように活性化された状態のビタミンD(活性型ビタミンD*)をつくりだすことのできない病型です。一般的な処方量の活性型ビタミンD製剤を投与することで症状が改善します。

2型は、受容体の異常により、活性型ビタミンDを体内でうまく使うことのできない病型です。非常に高用量の活性型ビタミンDで症状が改善~軽快する患者さんもいますが、なかでも髪の毛が生えてこない禿頭(とくとう)を伴う患者さんは症状が重く、治療が難しいとされています。

活性型ビタミンD…体内に取り込まれたビタミンDが活性化する過程の第二段階でつくられる物質。1,25水酸化ビタミンDと同義。

ビタミンD依存性くる病骨軟化症では、症状が軽度であれば、学校に通うことや就業が可能です。

2型のなかでも特に禿頭がみられる方(2A型の一部)の場合は、血中のカルシウム濃度が低いことや毛髪などの問題があるため、一般の生活の中で不具合が多いかもしれません。髪は、ビタミンD受容体に異常があることから、治療を行ってもうまく生えてこないと考えられています。しかし、そのほかの症状への対応は可能であるため、治療ができないとあきらめず、主治医の先生とよく相談して対処することが大切です。

日常生活で注意すべきことは、薬の内服を怠らないことと、定期的な受診を行うことです。

2A型の一部では、治療していてもカルシウム濃度が上昇しにくいため、テタニー(筋肉のけいれんが起こる状態)が起こる可能性があります。テタニーの予防には、ビタミンDやカルシウム製剤での治療を怠らないことが第一ですが、血液をアルカリ性にしてしまい、テタニーの症状を起こしやすくしてしまうような、過換気症候群(不安や緊張などにより過呼吸の状態になる症状)、激しい運動、脱水などをなるべく避けるようにも注意しましょう。

ビタミンD依存性くる病骨軟化症は、正しく診断することで適切な治療を行うことができる病気です。しかし、なかには骨粗しょう症ビタミンD欠乏症などの間違った診断がつけられている患者さんもたくさんいると考えられます。正しい診断につなげるためには、最終的には遺伝子検査などの詳しい検査が必要です。

東京大学医学部附属病院では、2018年6月に、さまざまな診療科の医師が集まって、骨粗しょう症のより高度な診断、治療、評価を行うことを目的とした診療を始めました。

また、骨粗しょう症と診断された方の中に、ビタミンD依存性くる病・骨軟化症の成人の軽症例のような、別の病気の患者さんが実際には多く含まれることを想定し、より正確な鑑別診断(病気の原因を見分けること)を行うことをもうひとつの目的としています。

骨粗しょう症の誤診のリスクとは?

骨粗しょう症と診断されている方の中には、二次性骨粗しょう症と骨粗しょう症類縁疾患(ビタミンD欠乏症、ビタミンD依存症、FGF23関連低リン血症、低ホスファターゼ症、原発性副甲状腺機能亢進症骨形成不全症多発性骨髄腫など)の患者さんが多く含まれていると想定されます。

このような診断の誤りがある場合、たとえば、くる病・骨軟化症や低ホスファターゼ症などの骨の代謝が落ちている病態であるのに、骨粗しょう症の治療でよく用いられるビスホスフォネートなどの骨の吸収を抑える薬を使用してしまうと、太ももの骨などの非定型骨折(通常では折れないような部分の骨折)などが起こり、改善しにくくなる恐れがあります。

東京大学医学部附属病院では、複数の診療科の医師の目を通して、二次性の骨粗しょう症もしくは骨粗しょう症類縁疾患を正確に鑑別するための取り組みを行っています。

たとえば、骨粗しょう症と同じように骨密度が低下する病気ではあるものの、実際には骨粗しょう症とは異なる病気(二次性骨粗しょう症と骨粗しょう症類縁疾患)にかかっている患者さんが実際にどれくらいいるのかを調べるために、遺伝子検査まで含めた詳しい検査を行っています。

ビタミンD依存性くる病・骨軟化症のように生まれつきの病気が疑われる場合には、患者さんと相談の上で、必要であれば遺伝子変異を調べる準備まで整えています。

そして、このような病気の発症頻度や治療の効果などを調べることで、患者さんや医師に対して、病気の啓発活動を行うことを目的としています。

骨粗しょう症の裏に別の病気が隠れていないかを十分に確認したうえで治療を開始する流れを、将来、開業されている整形外科や内科の診療所まで広めていき、誤った診断によって適切な治療が受けられず、痛みや骨折に悩む二次性骨粗しょう症、骨粗しょう症類縁疾患の患者さんを一人でも減らすよう努力したいと考えています。

伊東先生

ヒトは約2万個の遺伝子をもっていますが、どのような方でも約10個程度の重い病気になる遺伝子変異をもっています。そのため、いずれのご家庭にも常染色体劣性遺伝形式の重篤な病気をもったお子さんが生まれてくる可能性があります。子どもが重い病気になったのはご自身に大きな問題があるためだ、という思いをつのらせるご両親を時にお見受けしますが、それは全く間違った考え方です。

世界には治療法がまだ分かっていない病気も多くあり、それら一つ一つの治療法を開発していくことが我々医学研究者の役目なのですが、ビタミンD依存性くる病骨軟化症は、現在でも既に治療法が存在する病気です。1型では活性型ビタミンDの処方、2型では高用量の活性型ビタミンDもしくはカルシウム製剤の併用によって、症状を改善することができますのでご安心ください。また、患者さん本人のお子さんが同じ病気を発症する可能性は非常に低いと言えます。

ただし、患者さんが投薬を中断してしまうと、くる病、骨軟化症の症状が再び悪化するため、定期的な通院をすることがなにより大切です。

ビタミン D 欠乏症といわれている患者さんの中に、実は、軽症~中等症であるビタミン D 依存性くる病・骨軟化症の患者さんが含まれているのではないかと予想しています。

本当にビタミンD欠乏症であれば、サプリメントで販売されているビタミンD(自然型ビタミンD)の補充により治療が可能です。しかし、ビタミンD依存性くる病・骨軟化症であれば、自然型ビタミンDの補充だけでは症状が改善せず、活性型ビタミンDなどによる、より適切な治療が必要です。

ビタミンD欠乏症の治療をしているのになかなか症状が改善しないという方は、ビタミン D 依存性くる病・骨軟化症の軽症~中等症である可能性を念頭に置き、遺伝子診断などのより詳しい検査について、主治医の先生と相談して頂ければと思います。

 

【参考文献】

1)Yuka Kinoshita, et al. Endocrine Journal.2017; 64(6): 589-596.

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  • 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

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