びたみんでぃーけつぼうしょう

ビタミンD欠乏症

最終更新日:
2023年12月06日
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2023/12/06
更新しました
2017/04/25
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概要

ビタミンD欠乏症とは、体に必要なビタミンDの作用が不足することで骨密度の低下などを引き起こす病気のことです。

ビタミンDは脂溶性ビタミンの1つで、食事から摂取する以外にも日光に当たることで皮膚でも生成されています。ビタミンDには腸からのカルシウムの吸収を促進し、腎臓でのカルシウムの再吸収を増加させるはたらきがあります。そのため、ビタミンD欠乏症を発症すると血液中のカルシウム濃度が低下し、それを補うために分泌される副甲状腺ホルモンのはたらきにより骨密度の低下を引き起こします。

原因

ビタミンD欠乏症は体に必要なビタミンDの作用が不足し、血液中のカルシウム濃度や骨密度が低下する病気のことです。

ヒトは生きていくのに必要なビタミンDを食事から補うほか、日光に当たることで皮膚でも生成しています。しかし、日本人では約8割の人が血中25水酸化ビタミンD濃度*が20ng/mL未満となるビタミンD欠乏状態であると報告されています。

本来、健常な成人であれば血中25水酸化ビタミンD濃度が極端に低下しても、腸管でビタミンDの活性が最終的に調整されているため、通常は症状が現れるビタミンD欠乏症に至ることはありません。一方で以下に該当する人は、血中のビタミンD濃度が欠乏状態(血中25水酸化ビタミンD濃度が20ng/mL未満)になると、ビタミンD欠乏症の症状が現れる原因になることがあります。

  • 腸管でのビタミンDの活性化を阻害したり、腸管からのビタミンDやカルシウムの吸収を直接低下させたりする要因を持つ方(高齢、慢性的な下痢、グルココルチコイド製剤の使用、クローン病などの炎症性腸疾患、胃や腸、膵臓<すいぞう>の手術後、神経性やせ症など)
  • ビタミンDの代謝に関わる遺伝的な影響を持つ方
  • 尿にカルシウムが出ていきやすくなる要因を持つ方(サイアザイド系降圧薬/利尿薬の使用、原発性アルドステロン症などの疾患)

また、乳児の場合には母乳に含まれるビタミンDの量が少ないケースもあることから、母乳のみで哺育されていることがビタミンD欠乏状態を引き起こす原因になることがあります。特に、小児期では腸管機能が成熟しておらず、骨の成長に際して成人よりも高い血中リン濃度を必要とすることなどから、消化器疾患、グルココルチコイド製剤の使用、遺伝的な影響といったビタミンD欠乏症の発症につながる要因が加わらない場合でも、ビタミンDが欠乏する単独の要因により、骨に影響を及ぼす“ビタミンD欠乏症”や、血中のリン濃度が低下し低身長や下腿の変形を起こす“くる病”を発症することがあります。

*血中25水酸化ビタミンD濃度:血液中でビタミンDが欠乏している状態であるかを判断するための指標となる検査項目で、食事由来や紫外線により皮膚で生成されたビタミンDの量を反映する。

症状

ビタミンD欠乏症では、血液中のカルシウム濃度の低下を補うために分泌される副甲状腺ホルモンのはたらきにより骨密度の低下が起こります。

健常な成人であれば、通常はビタミンDが極端に欠乏していても症状は出にくいといわれています。しかし、ビタミンDが欠乏している状態に加齢や消化器疾患、グルココルチコイド製剤の使用、遺伝的な影響などの要因が加わると、ビタミンD欠乏症の代表的な症状でもある骨密度の低下などを伴うことがあります。特に遺伝的な影響が強い場合には、血中カルシウム濃度の低下の程度が強くなり、非常にまれなケースだと手足や口のしびれ、動かしにくさが生じることがあります。

また、場合によっては同時に血中リン濃度が低下し、小児では低身長や足の変形(強いO脚やX脚)を起こす“くる病”や、成人では骨にひびが入りやすくなる“骨軟化症”を起こすこともあります。なお、若年であるほど血中リン濃度の基準範囲は高いことが知られており、おそらくは骨の成長に比較的高い血中リン濃度が必要であるためだと考えられています。このため、小児のくる病では成長障害や下肢の変形はきたしますが、血中リン濃度が極端に低下し成人の基準範囲以下となることは少ないため、骨にひびが入りやすくなる骨軟化症に至る子どもは非常に少ない傾向にあります。

また、くる病および骨軟化症を起こすと小児、成人ともに歯髄(しずい)(歯の奥にある空洞)に感染を生じる歯髄炎を起こしやすくなります。

検査・診断

ビタミンD欠乏症が疑われる場合は次のような検査を行う必要があります。

血液検査

ビタミンDが欠乏している状態と診断するためには、25水酸化ビタミンD濃度と呼ばれる血液中でビタミンDが欠乏している状態であるかを判断するための値を測定します。この血液検査では、25水酸化ビタミンD濃度が20ng/mL未満であるときに、ビタミンDが欠乏している状態と判断します。

また、症状を伴うビタミンD欠乏症の診断には、血中カルシウム濃度と副甲状腺ホルモン(インタクトPTHまたはホールPTH)濃度の測定が必要です。25水酸化ビタミンD濃度が20ng/mL未満であるときに、血中カルシウム濃度が正常範囲より低く、副甲状腺ホルモン(インタクトPTHまたはホールPTH)濃度が高ければ、症状を起こし得るビタミンD欠乏症と診断できます。

日本人では約8割がビタミンD欠乏状態といわれていますが、消化器疾患やグルココルチコイド製剤の使用、遺伝的な影響といったビタミンD欠乏症を発症しうる要因がなければ強いビタミンD欠乏状態であっても、基本的には症状を伴うビタミンD欠乏症は起こりません。

一方でそれらの要因の中でも、特に遺伝的な影響により小児のくる病や成人で骨軟化症を起こしている場合には、血液中のリン濃度が低く(カルシウム濃度は正常範囲の真ん中より低値)、加えて骨型アルカリホスファターゼの濃度が上昇しています。

画像検査

ビタミンD欠乏症では、骨密度が低下するので骨密度測定がすすめられます。

また、肋骨(ろっこつ)下腿(かたい)、足に骨痛があり骨軟化症が疑われる場合、骨折が非常に小さいと単純なX線では写らないことがあります。非常にまれなケースではありますが、そのような場合には骨シンチやMRIでサイズの小さい骨折を確認することが可能です。

治療

日本におけるビタミンD欠乏症に対する治療法は、サプリメントとして販売されている天然型ビタミンD製剤を用いた薬物療法が主体です。特に以下に該当する場合には内分泌内科や小児科を受診し、ビタミンD欠乏症を起こす要因や遺伝的な影響を詳しく調べてもらい、専門的な治療を受けるとよいでしょう。

  • 低カルシウム血症を起こしていたり、骨密度低下の程度が強かったりする場合
  • 実際に肋骨(ろっこつ)大腿骨頭(だいたいこっとう)、大腿骨や下腿骨の軸となる部分に骨折を起こすなどの症状を伴う骨軟化症を起こしていて、遺伝的な影響が強いと思われる場合
  • 小児で程度の強いO脚やX脚、低身長などの症状を伴うくる病を発症している場合

予防

ビタミンD欠乏症は、高齢、慢性的な下痢、グルココルチコイド製剤の使用、クローン病などの炎症性腸疾患、胃や腸・膵臓の手術、神経性やせ症といった要因を持つ人が、ビタミンD欠乏状態(25水酸化ビタミンD濃度が20ng/mL未満)となることで症状が現れる病気です。そのため、ビタミンD欠乏症を予防するには、ビタミンDを含む魚介類や卵類、乳製品、キノコ類をバランスよく取ったり、適度に日光に当たったりすることで血中の25水酸化ビタミンD濃度を充足状態(30ng/mL以上)にしておくことが大切です。

また、天然型ビタミンDのサプリメントを摂取すると、効率よくビタミンD濃度を充足状態にできることがあります。

特に、母乳のみで哺育されている乳児は、ビタミンD欠乏状態になりやすいといわれています。乳幼児や小児では消化管疾患など、ほかのビタミンD欠乏症を発症し得る要因がない場合でも、ビタミンD欠乏のみでビタミンD欠乏症やくる病を発症する可能性があり、天然型ビタミンDのサプリメントを活用することが推奨されています。

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