こつけいせいふぜんしょう

骨形成不全症

最終更新日
2020年09月23日
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2020/09/23
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

骨形成不全症とは、全身の骨や歯が生まれつき弱く、些細な刺激で容易に骨折したり骨が変形したり、虫歯ができやすくなる病気のことです。

発症頻度は骨変形をきたさない軽症例も含めて2~3万人に1人とされるまれな病気です。重症例では成長が遅れるばかりでなく、一生涯にわたる治療と管理の継続が必要となります。また、骨形成不全症は骨や歯の(もろ)さだけでなく、皮膚や臓器を形成する組織にも異常を引き起こし、難聴心臓弁膜症などを発症するケースも少なくありません。

一方で、目立った症状がないまま一生を終えるケースもあるとされており、症状の現れ方や重症度は人によって大きく異なることも特徴の1つです。

原因

骨形成不全症は生まれつき発症する病気であり、約90%は骨や靱帯を形成するのに必要な“I型コラーゲン”の生成に関わる遺伝子の異常によるものと考えられています。

また、近年ではこのほかにも骨形成不全症を引き起こす遺伝子変異が数多く発見されています。これらの遺伝子変異は親から子どもに伝わることも分かっており、両親のうち片方のみが異常遺伝子を持っていると子どもに伝わって発症する“優性遺伝”形式のものと、両親の双方から異常遺伝子を受け継がなければ発症しない“劣性遺伝”形式のものがあります。

症状

骨形成不全症の特徴的な症状は、全身の骨が弱くなることで軽度な刺激で、特に長管骨(腕や足、指の骨)や肋骨などが骨折したり、背骨や大腿骨(だいたいこつ)などが変形して成長したりしてしまうことです。

また、そのほかにも歯が正常に生育しない、虫歯になりやすい、関節の可動域(動く範囲)が過剰になるといった症状や心臓弁の異常などを引き起こします。特に、本疾患の中でI型コラーゲンの生成に関わる遺伝子異常によるものは白目が青っぽく見えること(青色強膜)があります。

さらに、それらの症状に付随して、変形した骨の痛み、肺が圧迫されることによる呼吸機能の低下、心臓弁膜症による心不全などの症状が現れることもあります。そして、骨形成不全症の約半数に難聴が見られるとされています。

ただし、骨形成不全症によるこれらの症状の現れ方や重症度には大きな個人差があることが分かっています。転んだ際に、指の骨や肋骨にひびが入って治りにくいなどの軽い症状を経験するのみで、ほとんど目立った症状がないまま成長するケースもあれば、分娩時に頭蓋骨骨折などを引き起こして生後数日で亡くなるケースもあります。

検査・診断

骨形成不全症が疑われるときは、次のような検査が行われます。

血液検査

骨形成不全症では特徴的な血液検査の値はありません。ただし、骨形成不全症と似たような症状を呈する病気(くる病骨軟化症低ホスファターゼ症副甲状腺機能亢進症など)の鑑別を目的として骨の形成に関わる酵素であるアルカリフォスファターゼ、リン、カルシウム、25水酸化ビタミンDの血中濃度、カルシウムやリンの代謝に関わる副甲状腺ホルモンの値などを調べるため血液検査が行われることが一般的です。

画像検査

全身の骨の状態を評価するため、X線検査が行われることがあります。

骨形成不全症では、大腿骨などの長い形をした骨や頭蓋骨、背骨の変形が見られることが特徴です。また、骨密度が低値となるため、X線検査では骨が通常より薄く描出されるようになることも診断に役立つ情報となります。

実際の骨密度検査では、骨変形をきたす重症型で幼少期から著明な低下を認めます。また骨変形をきたさない軽症例でも、若年者や閉経前女性であるにもかかわらず低値をとり、また閉経後女性や高齢男性では、より骨密度の低い重症骨粗しょう症を呈する症例が多くなります。

遺伝子検査

骨形成不全症は遺伝子変異によって発症することが分かっています。そのため、確定診断のために骨形成不全症の原因となる遺伝子変異の有無を調べる検査が行われます。

現在、骨形成不全症の原因となる主要な遺伝子の検査が保険適用となっています。

各症状に適した検査

骨の異常以外にも骨形成不全症は全身にさまざまな症状を引き起こします。そのため、病状を評価するために、それぞれの症状に合わせた検査を行うことがあります。

具体的には、難聴に対する聴力検査心臓弁膜症による心臓超音波検査などが挙げられます。

骨形成不全症軽症例の診断

骨変形をきたさない骨形成不全症の軽症例でも、女性の場合は閉経後、男性の場合は高齢となってからさらに骨密度が低下し、重篤な骨折を起こす可能性があります。

若年者や閉経前女性でもスポーツをしているときや転んだ際、風邪や気管支喘息でせき込んだ際などに手足や指の骨、肋骨にひびが入ってしまったことがある方々は積極的に骨密度検査を行います。年齢不相応に低値であれば血液検査などでほかの病気の可能性を除外したうえで、遺伝子検査で本疾患の診断が検討されます。

また、閉経後女性や高齢男性であっても骨密度の低下がより高度である場合には、同様にほかの病気を鑑別したうえで骨形成不全症の診断を目的とした遺伝子検査が行われることもあります。2020年9月現在、本疾患に対するより根本的な治療法は存在しませんが、後述の骨折リスクとなる行動に注意して生活することで骨折を予防することができます。

治療

骨形成不全症と診断された場合は、基本的に骨を丈夫にするための薬物治療が行われます。現時点で骨形成不全症を根本的に改善する治療はなく、骨折を防ぐためにも骨密度の増加、骨の痛みの改善などを目指してビスホスホネート製剤の投与が行われます。

しかし、骨形成不全症にビスホスホネート製剤を使用すると、すでに低下している新しい骨と古い骨の入れ替わり(骨代謝回転)がさらに低下してしまい、大腿骨の転子下(軸の部分の上のほう)に骨折を起こす“非定型骨折”の発症を増やすともいわれています。副甲状腺ホルモンと類似の作用を持つ骨の形成を促進するテリパラチドという薬が効果的であるとも報告されていますが、やはり著明な効果は認めていません。本疾患の原因となっているI型コラーゲンの異常を改善するような、より根本的な治療薬の開発が待たれます。

一方、骨が大きく変形して成長したような場合や大きく偏移した骨折を起こした場合などは、手術で骨の形を修復する治療や骨折の治療が必要となります。

また、心臓弁膜症を併発している場合は、心不全への進行や悪化を防いだり利尿薬など心臓の負担を軽減したりするための薬物治療や、心臓弁の異常を根本的に改善するための手術が必要となることがあります。

予防

骨折の予防

骨折を予防するために転倒しないように注意する、骨変形をきたしていない軽症例では骨折のリスクとなるような激しいスポーツや仕事を避けるといった日常生活での注意点が挙げられます。また、骨粗しょう症骨軟化症が併発するとより骨折のリスクが上昇するため、日光によく当たり、魚やきのこといったビタミンDを多く含む食事を摂取するなどしてビタミンD欠乏症の併発を避けるように注意します。

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