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ADA欠損症の治療
ADA欠損症とは、ADA(アデノシンデアミナーゼ)という酵素の欠損によって免疫不全をきたし、さまざまな症状が起こる病気です。ADA欠損症に対する唯一の根本的な治療には、造血幹細胞移植があります。...
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ADA欠損症の治療

公開日 2018 年 04 月 16 日 | 更新日 2018 年 04 月 16 日

ADA欠損症の治療
有賀 正 先生

社会医療法人母恋 理事長/北海道大学 名誉教授

有賀 正 先生

目次

ADA欠損症とは、ADA(アデノシンデアミナーゼ)という酵素の欠損によって免疫不全をきたし、さまざまな症状が起こる病気です。ADA欠損症に対する唯一の根本的な治療には、造血幹細胞移植があります。ADA欠損症の治療について、北海道大学医学部小児科の有賀正(ありが ただし)先生にお話を伺いました。

ADA欠損症の治療における基本方針

造血幹細胞移植、酵素補充療法、遺伝子治療などの選択肢がある

ADA欠損症に対する治療には、造血幹細胞移植、臍帯血移植などの選択肢があります。また、感染症がある場合にはそれぞれ感染症の治療を行います。

造血幹細胞移植・臍帯血移植

造血幹細胞移植は、唯一の根本的な治療といえる

造血幹細胞とは、骨髄のなかにあり血球(赤血球・白血球・血小板)のもととなっている細胞です。造血幹細胞は骨髄のなかで細胞分裂を繰り返し、自己複製していくと同時に、3種類の血球に分化していきます。

造血幹細胞移植とは、ドナーから提供された造血幹細胞を患者さんに移植する治療法です。ADA欠損症の治療においては、唯一の根本的な治療といえます。(2018年2月現在)

移植前には前処置を行う

造血幹細胞移植はほかの人の骨髄細胞を入れ替える治療法であり、強い副作用をもたらすリスクがあります。また、造血幹細胞移植では、化学療法(抗がん剤など、薬を使ったがんの治療法)や放射線治療などの移植前処置を行います。

移植前処置を行うことで、免疫力を低下させ造血幹細胞を受け入れやすい状態をつくります。

感染症があるときには感染症を治療してから移植を行う

患者さんに感染症があるときに造血幹細胞移植を行うと、感染症の悪化など治療効果によい影響を与えない可能性があります。そのため、造血幹細胞移植を行う際には感染症の状態を確認し、感染症がある場合には、まず感染症を治療してから移植を行います。

ADA欠損症の診断がついたらすぐにドナーを探し始める

記事1『ADA欠損症とは? 症状・予後』でもご説明したように、ADA欠損症はできるだけ早期に治療を始めることが望まれる病気です。そのためADA欠損症と診断がついたら、すぐに造血幹細胞移植のドナーを探し始めます。

緊急時やドナーがみつからない場合には臍帯血移植を行うことがある

造血幹細胞移植の際には、患者さんの兄弟、両親の順にHLA(ヒト白血球型抗原:白血球の血液型ともいえるもの。移植の際にはドナーと患者さんの型が一致している必要がある)の型を調べます。

緊急を要する移植の場合、ドナーがうまくみつからない場合には、臍帯血(さいたいけつ)移植を選択することがあります。

臍帯血移植とは・・・臍帯(さいたい:妊娠中の母体と胎児を結ぶもの)と、胎盤に含まれる血液を合わせて「臍帯血」といいます。臍帯血のなかには造血幹細胞がたくさん含まれています。出産後、不要になる臍帯血を保存しておき、患者さんに移植することを「臍帯血移植」と呼びます。

ADA欠損症の治療における現状と今後の展望

新たな治療法(酵素補充療法や遺伝子治療)の実用化に期待している

ADA欠損症の治療として、酵素補充療法と遺伝子治療が注目を集めています。

酵素補充療法

酵素補充療法とは、ウシ由来のADAをポリエチレン・グリコールに埋め込んだPEG-ADAという薬剤を、週に1〜2回、患者さんに投与する治療法です。酵素補充療法に用いる薬剤は日本ではまだ治験中で未承認であり、一般的な使用は難しい状況です。(2018年2月時点)

遺伝子治療

1990年にアメリカで、ADA欠損症に対する遺伝子治療が初めて使われました。

現在実施されているADA欠損症に対する遺伝子治療とは、自分の骨髄細胞を取り出して正常な遺伝子を導入し、再び自分の体に戻す治療法です。ADA欠損症に対する遺伝子治療は、まだ臨床研究の段階にあります。(2018年2月時点)

遺伝子治療は「自分の細胞を使う」という点において、より生理的(自然)な治療法と考えることができ、今後さらなる研究・実用化の発展が期待されます。

ADA欠損症の治療について—患者さんやご家族へのメッセージ

有賀正(ありが ただし)先生

ADA欠損症は、早期発見・根治的治療によって治癒が見込めることがわかっています。そのため今後は、新生児の時期にスクリーニング検査(ある集団から特定の個人や集団を導き出すふるい分けの検査)を導入することが目標となります。

新生児の時期にスクリーニング検査を行うことで、ADA欠損症を含めたSCIDを早期に発見し、治療を開始できると期待されています。

ADA欠損症の治療法は以前よりも選択肢が増え、造血幹細胞移植も徐々に改良が進んでいます。以前のように「治らない病気」という認識は変わりつつあります。希望を持って、治療を行いましょう。

ADA欠損症(有賀 正先生)の連載記事

北海道大学医学部を卒業後、国内外で小児科医として研鑽を積み、2004年より北海道大学大学院医学研究科小児科学分野で教授を務め、2018年には北海道大学名誉教授に。同年より、社会医療法人母恋の理事長として地域医療に貢献している。