院長インタビュー

「つくすこころ」であらゆる患者さんを受け入れたい-日本医科大学付属病院の取り組み

「つくすこころ」であらゆる患者さんを受け入れたい-日本医科大学付属病院の取り組み
汲田 伸一郎 先生

日本医科大学付属病院 院長、日本医科大学 放射線医学 主任教授、日本医科大学付属病院 放...

汲田 伸一郎 先生

この記事の最終更新は2018年02月09日です。

東京都・文京区に位置する日本医科大学付属病院は、長い歴史とともに発展を遂げた病院です。病院長である汲田 伸一郎先生は、「365日24時間体制で、断らない医療を実践していきたい」とおっしゃいます。この言葉を裏付けるように、同病院は救急医療に力を入れており、365日24時間体制の医療を実践しています。また近年、国内最大60床の救命救急センターが完成しました。

しかし、今では同病院が注力するのは救急医療だけではありません。がん診療や循環器診療などにも高い実績を有しています。今回は、病院長である汲田 伸一郎先生に、日本医科大学付属病院の取り組みについてお話しいただきました。

日本医科大学付属病院は、1910年(明治43年)に開設された長い歴史のある病院です。1977年には、厚生省認可第一号となる救命救急センターを設置し、その後、高度救命救急センターの承認を受けるなど、救急医療に昔から力を入れてきました。

しかし、注力してきたのは救急医療だけではありません。1993年には、高度の医療を提供する特定機能病院の承認を受け、2008年には地域がん診療連携拠点病院に指定されています。ほかにも、災害拠点病院やエイズ拠点病院などの承認を受けるなど、あらゆるニーズに対応しながら発展を遂げた病院といえるでしょう。

2017年時点で、当院は42の診療科を有し、病床897床の規模を誇っています。

日本医科大学病院 1
写真提供:日本医科大学付属病院

お話ししたように、当院は長い歴史とともに発展を遂げた病院ですが、近年では、学校法人日本医科大学アクションプラン21という再開発の計画のもと、新病院の建設を進めてきました。たとえば、2017年8月には本館新病棟が完成しました。この新病棟は、2018年1月1日にグランドオープンし、患者さんにもご好評いただいています。

当院は、救命救急センターの先駆け的な病院のひとつであると自負しており、昔から救急医療に力を入れてきました。その姿勢は近年でも変わらず、高度救命救急センターの充実も新病院の重点項目の一つです。

2017年の10月には、CCM(救命救急科)、CCU(心臓血管系の重症の患者さんを対象とした集中治療室)、SCU(脳卒中の治療やリハビリに特化した脳卒中ケアユニット)といった重症部門を一元化し、国内最大60床の救命救急センターが完成しました。

さらに、当院は救急・総合診療センターを有しており、24時間体制で救急対応を行っています。同センターでは、比較的軽症の救急患者さんを対象とした、さまざまな領域の疾患や外傷の初期診療を行っています。

また、患者さんご自身や紹介元である医療施設の担当医が診療科を特定するのが困難なケースがあります。このように、何科を受診すればよいのか分からない患者さんに対しても、必要に応じて専門各科と緊密に連携しながら診療を行っています。

写真提供:日本医科大学付属病院
写真提供:日本医科大学付属病院

当院は地域がん診療連携拠点病院として、個々の患者さんの病態に応じて、手術以外にも化学療法や放射線治療を組み合わせた最適ながん治療を行えるよう努めています。

当院のがん診療センターでは、内科系診療科、外科系診療科、放射線科、緩和ケア科などの担当医師、薬剤師、看護師、ソーシャルワーカー、事務職員らによって常に総合的な観点で診療を行い、よりよい医療を提供するため、地域診療機関との連携の強化にも力をいれています。

2006年に日本医科大学健診医療センター(PETセンター)が付属病院に併設され、2017年時点で、毎月350件以上のPET検査(放射性薬剤を投与し特殊なカメラで画像化する、がんの検査法の一つ)を実施しています。

保険診療以外にも検診PET検査も実施しており、がんの早期発見にも注力しています。実際に、当センターの検診で発見されたがん症例の96%は早期がんであったという報告がなされています。

先ほど「救急医療への取り組み」でお話しした60床の救命救急センターと同一フロアには、緊急用のCT・MRI検査室を配置しています。これにより急性冠疾患を疑う症例には緊急冠動脈CT検査を、急性の脳血管疾患を疑う症例に対しては緊急CT検査およびMRI検査によって迅速な診断を行った後、早期治療を開始することができます。

病院の再開発の一環で新たに建設された新棟には、22室の高機能手術室を新設しましたが、その一室をハイブリッド型手術室にしました。このハイブリッド型手術室は、手術室内に血管造影装置(造影剤を血管に注入しながら血管を写し出す専門の装置)を配備したもので、カテーテル治療と外科手術による治療を一つの部屋で行うことを可能にしています。

さらに、胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療(TEVAR・EVARと呼ばれる治療法)を施行することができます。また、将来的には、重症の大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)を行うことも視野に入れています。

写真提供:日本医科大学付属病院
写真提供:日本医科大学付属病院

私たち日本医科大学付属病院は、地域医療構想に沿った病院機能のさらなる効率化と医療連携の強化を図らねばならないと考えています。その使命を果たす一環として、当院のCCUとSCUの勤務医は緊急用の携帯端末を所有し、それぞれ「心臓救急専門ホットライン」「脳卒中ホットライン」として、地域の連携病院・診療所の先生方からのご連絡を24時間体制でお受けしています。

さらに、地域医療機関からのさまざまな疾患の緊急診療依頼にも迅速に対応すべく、新たに専用ダイヤルを設置しました。この専用ダイヤルは、患者さんの緊急度を判断することに長けたトリアージナースが応対することにより、スムーズな患者さんの受け入れを可能にしています。今後も、全職員が一丸となって「断らない医療」を実践していきたいと考えています。

また、当院では、地域医療機関よりご紹介いただいた患者さんの受診支援や、患者さんが抱えるさまざまな問題を解決するサポートを行うために患者支援センター(PSC)を拡充しました。

同センター内の医療連携部門では、地域医療機関の諸先生方との円滑な連携に努めています。療養支援部門では、患者さんやご家族が抱える課題や不安への取り組みや、入退院に向けてのサポートを行っています。さらに、「がん相談支援センター ふれあい相談室」を開設し、がん患者さんの療養生活がよりよいものになるよう、専門看護師が緩和ケアを含めたがん全般に関するご相談をお受けしています。

写真提供:日本医科大学付属病院
写真提供:日本医科大学付属病院

当院は、お話ししたような新病院の稼働により、機能的かつ高機能な病床、手術室、各種検査室を構築でき、充実した医療環境になったと自負しています。

しかし、こういったハード面をいかに活かしていくかは、医師をはじめとした当院で働く職員の取り組みにかかっています。

患者さんに満足していただくためには、職員にとっても働きやすく、誇りを持てる充実した職場にしていかなければなりません。若い先生方には、常に研究マインドを携えながら真摯に診療を行い、充実した経験を積んでいって欲しいと思っています。

若い力で当院をさらにステップアップさせるような気概を持ち、積極的に医療に取り組んで欲しいと考えています。さらに、今後も、このような気概を持つ方たちと共に働きたいと思っています。

汲田先生

当院は、お話ししたように長い歴史とともに発展を遂げた病院です。これからも、患者さんへ質の高い医療を提供したいという思いは変わりません。

今後も「つくすこころ」で、患者さんとご家族のために、医療の効率化と安全性の追求を推進していきたいと考えています。365日24時間体制で、あらゆる患者さんに対して「断らない医療」を実践していくために、地域医療機関との連携をさらに密にし、最先端の医療環境の実現を図っていくつもりです。

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  • 日本医科大学付属病院 院長、日本医科大学 放射線医学 主任教授、日本医科大学付属病院 放射線科 部長

    汲田 伸一郎 先生

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