院長インタビュー

地域医療を提供するとともに、アスベスト関連疾患の研究にも取り組む岡山ろうさい病院

地域医療を提供するとともに、アスベスト関連疾患の研究にも取り組む岡山ろうさい病院
三好 新一郎 先生

岡山ろうさい病院 病院長、岡山大学 名誉教授

三好 新一郎 先生

この記事の最終更新は2018年02月22日です。

独立行政法人 労働者健康安全機構 岡山ろうさい病院は岡山県岡山市の南部にあります。21の診療科と14の専門医療センターを開設し、高度で安全な急性期医療の提供を目指しています。人工関節センターや脊椎脊髄センターによる整形外科疾患の治療に力を注いでいることに加え、労災病院としてアスベスト関連疾患の研究に取り組んでいることも同院の特色です。今回は、岡山ろうさい病院の院長である三好 新一郎先生にお話を伺いました。

当院は、労働者健康安全管理機構が運営する労災病院として1955年3月に設立されました。労働者健康安全管理機構は、労働者福祉の推進を目的とする厚生労働省管轄の独立行政法人です。全国34か所の労災病院をはじめ、看護学校や労働安全に関する研究所など、複数の関連施設を有し、労働者の健康の保持・増進を目的とする活動を行っています。

当院が設立された当初は、県東部に耐火レンガの工場地帯があり、そこで働く労働者がじん肺症を患うケースが多発していました。当院は、そのような労働者への医療提供を主な役割として開設された病院でした。現在は、産業構造の変化とともに当院が担う使命も変わり、地域住民の方々を対象とした医療の提供に努めています。

2013年3月には、7階建ての病院を新築しました。新病院の完成を機に病院名を「岡山ろうさい病院」と改めました。当院が労働者医療を担いつつも地域医療の提供へとその役割を拡大してきた背景を踏まえたうえで、みなさまに親しみをもっていただけるよう「労災」を平仮名で表記しました。

当院は、2001年に人工関節手術の提供を開始して以来、人工関節を用いた整形外科疾患の治療に力を入れてきました。2006年には人工関節センターを開設し、医師とコメディカルスタッフが密に連携を図るチーム医療を実践しています。

2017年には、脊椎脊髄疾患の専門的知識・技術をもつ田中雅人医師を副院長として迎えています。田中医師の着任に際し、脊椎脊髄センターを開設しました。最新のO-armイメージングシステムによる脊椎脊髄疾患の治療を提供していることが、脊椎脊髄センター最大の特徴です。O-armイメージングシステムを用いれば、患者さんの体内を撮像しながら手術を行うことができます。CTのような正確で鮮明な三次元画像をリアルタイムで撮影できるため、手術の精度が大幅に向上します。

このような最新機器の導入にくわえ、患者さんの痛みや負担を抑えた低侵襲手術に取り組んでいます。

また、同年に呼吸器アレルギー疾患の専門知識・技術を有する金廣医師も副院長として迎え、これに際して呼吸器アレルギーセンターも新設しました。さらには、形成外科医が2名体制となり、乳房再建術のような複雑な治療ができるようになったことから乳癌治療乳房再建センターを新設しました。

当院は、労災病院として長らくじん肺症の治療を行っていた経験をいかし、肺疾患に関する研究を行っています。なかでもアスベストに関連する疾患の研究に力を入れてきました。

院内に開設するアスベスト関連疾患研究センターでは、アスベストを原因とする肺がんおよび胸膜中皮腫に対する、診断方法と新しい治療法の研究を行っています。

アスベスト関連疾患のなかには、胸膜中皮腫のように吸入後30年ほど経過した後に発症する疾患もあります。2018年現在、日本がアスベストの輸入と製造を禁止してからようやく30年が経過しようとしています。アスベスト疾患をかかえる患者さんは、これからますます増加することが見込まれます。

同センターに加え、2018年3月には新たな研究機関として疾患研究研修センターを開設する予定です。今後もアスベスト関連疾患をはじめとした、さまざまな疾患に関する研究を続け、難病をかかえる患者さんの力になりたいと考えています

当院では、医師全員が自身の専門性にしばられず、さまざまな疾患に対応できる医療体制の構築を目指しています。たとえば乳がんを専門とする外科担当医に消化器疾患の手術を経験していただくこともあります。内科担当医であれば総合診療を行っていただくこともあります。そのため、当院は若手の医師が幅広い経験を積むことのできる病院であると自負しています。

当院は地域のみなさまとの良好な関係づくりにも取り組んでいます。その内のひとつとして、市民参加型イベントを実施して積極的な情報発信に努めています。現在は、玉野市で定期的に開催している市民公開講座のほか、当院を会場にした新たな講座の開催を検討しているところです。また、岡山市消防署や岡山市南警察署と共催し、年に一度実施している救急フェアでは、みなさまと共に救急患者さんや交通事故、災害発生時のための救助訓練を行うことで交流を深めています。

心肺蘇生法やAED(自動体外式除細動器)の使い方を学ぶBLS講習や、新型インフルエンザの発生に備えた訓練に取り組んでいることも当院の特色のひとつです。このほか院内一丸となって医療サービスの質向上を目指すTQM活動などを通して、よりよい医療提供の実現に向けた取り組みを続けてきました。

岡山市周辺地域には、当院を含む病床数300床以上の公的病院が7つあります。当院は、それらの医療機関と連携を図りながら、主に岡山市南部と玉野市に医療を提供してきました。今後も当院は、高齢化が進む地域によりよい医療が届けられるよう、最善をつくし急性期病院としての責務を果たしてまいります。

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  • 岡山ろうさい病院 病院長、岡山大学 名誉教授

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