院長インタビュー

政策医療の提供を続ける東徳島医療センター

政策医療の提供を続ける東徳島医療センター
木村 秀 先生

独立行政法人国立病院機構東徳島医療センター 院長

木村 秀 先生

この記事の最終更新は2018年06月19日です。

徳島県板野郡板野町で政策医療の提供に尽力している東徳島医療センターは一般診療とともに結核や重症心身障害児(者)への医療提供や在宅支援を行っています。同院が行っている政策医療や、徳島病院との病院機能統合に向けた展望について、独立行政法人 国立病院機構 東徳島医療センター 院長木村秀先生にお話を伺いました。

東徳島医療センター 玄関
東徳島医療センター 玄関(東徳島医療センターよりご提供)

東徳島医療センターの前身である日本医療団板西療養所は1945年10月に創設しました。その後、名称変更を繰り返し、2010年10月に現在の名称である独立行政法人 国立病院機構 東徳島医療センターになりました。地域のご高齢の方などには現在でも「板西療養所」の愛称で親しまれています。

1945年の創設当初から、一貫して政策医療の提供を行ってきました。国立病院機構では政策医療は「国民の健康に重大な影響のある疾病に関する医療その他の医療であって、国の医療政策として国立病院機構が担うべきもの」としています。この政策医療分野には、結核を含む呼吸器の病気や重症心身障害児(者)などが含まれています。

政策医療分野は大きく分けて3つの分野にカテゴライズされます。そのなかでも、当院が医療を提供している結核は「歴史的・社会的な要請・ほかの設立主体では困難な医療」というカテゴリーに属しています。そのため、政策医療を担う施設のひとつとして、現在でも結核医療の提供に尽力しています。

東徳島医療センター 病棟
東徳島医療センター 病棟(東徳島医療センターよりご提供)

さらに結核の治療だけでなく、重症心身障害児(者)医療の提供や一般診療も行い、政策医療の提供だけでなく地域への医療提供にも力を入れています。

以下では、当院の結核病棟や重症心身障害児(者)の政策医療についてお話しいたします。

東徳島医療センターは全部で276床のベッドがあり、その内の20床が結核病棟(ユニット)として機能しています。過去、結核は患者数も多く、命に関わる病気のひとつでした。現在では患者数も減り、過去の病気と思われています。しかし、2016年に厚生労働省が発表した結核罹患者数は17,625人でした。結核は過去の病気ではなく、現在でも年間1万人を超える方が感染し、発症している病気なのです。

そもそも結核とは、結核菌が飛沫(ひまつ)または空気を介して感染し咳や(たん)、発熱などのいわゆる風邪とよく似た症状が現れます。結核はそのほかの症状に、胸痛や血痰(けったん)(血の混ざった痰)や呼吸困難などの症状もみられます。一見すると風邪症状とよく似ていますが、2週間以上咳や痰が続く場合や血痰などがみられた際には結核をはじめとする呼吸器の病気の可能性があります。

当院は徳島県の感染症指定医療機関(第二種・結核)に指定されており、徳島県下の結核患者さんの治療を担っています。結核の治療は4剤を使用した治療を軸にして行います。さらに、入院期間を少しでも短くし患者さんの早い社会復帰を目指しています。

2017年クリスマス会の様子
2017年クリスマス会の様子(東徳島医療センターよりご提供)

1969年に政策医療のひとつである重症心身障害児(者)医療の提供を開始しました。重症心身障害とは、重度の肢体不自由と重度の知的障害などを合併している方々のことを指します。重度の心身障害児(者)の外来治療は小児科で行い、成人の入院患者は小児科と内科で分担して行っています。重症心身障害児(者)病棟は156床あり、入院治療が必要な患者さんだけでなく在宅の重症心身障害児(者)の短期入所も可能です。

さらに、小児科では常勤の医師1名と徳島大学から月に2回、腎臓病と神経の専門医がきて診療を行っています。神経外来では重症心身障害児の診察をはじめ、てんかん発達障害の治療を行っています。腎臓外来では、腎炎、ネフローゼなど治療を行います。

小児科外来では、重症心身障害児(者)の在宅支援だけでなく、高度肥満児や精神運動発達の遅れなどの指導をしています。そのほかにも、育児で気になることや困っていることなど、何でも気軽にご相談ください。

2016年サマーフェスタの様子
2016年サマーフェスタの様子(東徳島医療センターよりご提供)

当院には徳島県立板野支援学校が隣接しています。当院に入院している重症心身障害児も入院治療を受けながら支援学校へ通学することができます。現在、在宅の重症心身障害児(者)が短期間入院できるショートステイも行っており、また学齢期に長期の入院治療が必要な場合も、空きベッドを確保していつでも入院できる体制にしておりますのでご相談ください。

東徳島医療センターは徳島県吉野川市で医療を提供している国立病院機構徳島病院との病院機能統合を控えています。徳島病院は筋ジストロフィーをはじめとする神経・筋疾患難病の政策医療の提供に尽力しています。両病院は共に、現在行っている診療を提供できる体制を強化し、患者さんの療養環境を充実していく必要があります。そのような動きのなかで、同じく政策医療の提供をしている当院と機能統合をすることで、互いの強みである政策医療の提供をより充実させることができるのではないかと思います。

また、病院統合後は若手医師の教育現場にもなれるような施設を目指しています。政策医療を行うことや、一般診療の経験を重ねていくことで自分の得意な分野での診療以外にも患者さんを総合的に診ることができる医師の育成の場になると考えています。

たとえば、結核で入院している高齢者は結核以外の病気を持っている可能性も多くあります。重症心身障害(児)者も高齢化しており色んな病気を併発してきます。そういった患者さんに対して、自分の得意な分野だけの診療をするのではなく、患者さんに寄り添った医療を提供できる医師の育成に尽力していきたいと考えています。

結核ユニットDOTSカンファレンス
結核ユニットDOTSカンファレンス(東徳島医療センターよりご提供)
結核ユニットDOTSカンファレンス
地域包括ケア病棟退院支援カンファレンス(東徳島医療センターよりご提供)
糖尿病教育入院患者のカンファレンス
糖尿病教育入院患者のカンファレンス(東徳島医療センターよりご提供)

当院の理念を全職員が忘れずに、日々の業務にあたっています。現在の理念は、私が院長に着任したあとに全職員が参加して考え選ばれたものです。職員とともに考えた理念だからこそ、職員は同じひとつの目標に向かうことができます。

たとえば、入院治療を受けている患者さんはとても不安な日々を過ごしています。そんななかでも医師や看護師だけでなく、事務職員なども笑顔を忘れず寄り添った医療を提供することで、患者さんのいやしになれると思います。

当院の掲げる理念のもと、地域のみなさまや徳島県下の結核患者さんなどの政策医療の提供を必要とする方々に寄り添った医療を提供するために、自己研鑽を重ね、みなさまに貢献できるように努めてまいります。

東徳島医療センターの理念

やさしい笑顔で 患者さんに 心のかよった医療を行います

・地域のみなさんに愛され信頼されるよう ともに歩み 寄り添う医療を提供します

キャッチコピー

やさしい笑顔と、寄り添う医療

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  • 独立行政法人国立病院機構東徳島医療センター 院長

    木村 秀 先生

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