早期の肺がんでは症状が現れない場合が多いことから、症状による早期発見が難しいため、定期的に検査を受けることが重要です。また、肺がんが疑われた場合には、肺がんそのものを調べるだけでなく、他臓器への転移の有無を調べることが適切な治療を行うために大切です。今回は、獨協医科大学病院呼吸器外科の診療部長である千田雅之先生に肺がんの検査方法についてお話を伺いました。
肺がんの検査は、一般的に以下のような流れで行います。
<肺がんの検査の流れ>
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次章から、これらの検査方法について解説していきます。
記事1『肺がんの症状 症状が現れる頃には進行していることも』でもお話ししましたが、早期の肺がんでは症状が現れないことがほとんどです。そのため、肺がんは健康診断や人間ドック、また他の病気の経過観察中に行う胸部レントゲン検査やCT検査(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)で発見されることが多いです。
CT検査は、会社や自治体などの健康診断で行うことは通常ありませんが、一部の自治体ではCT検診も行われており、人間ドックでは選択項目として一般的に行われています。また、検診目的でCT検査を行う場合には、通常のCT検査よりも放射線量を少なく設定して行うことが一般的です。
肺がんであることが疑われたら、さらに詳細な検査を行います。肺がんの検査目的は大きく以下の2つに分けることができます。
まずは、レントゲン検査やCT検査などでみつかった異常が本当に肺がんによるものなのかを調べるための病理検査(内視鏡や手術などで検体を採取し顕微鏡を用いて詳しく調べる検査)を行う必要があります。また、化学療法で使用する薬剤を決定するために、EGFRやAKL(アルク)、ROS1(ロスワン)、BRAF(ビーラフ)などの遺伝子変異を調べる検査も行います。そのほか、免疫チェックポイント阻害剤による治療が可能かどうか確かめるために、PD-L1という物質の発現の有無も確認します。
これらを調べる検査方法としては以下が挙げられます。
肺がんが疑われる場合、まずは気管支検査を行うことが一般的です。
気管支鏡検査とは、口または鼻から気管支鏡(先端に小型カメラがついた管)を挿入して行う検査です。気管支鏡検査では、がんが疑われる部位の細胞や組織を採取することで、肺がんの確定診断を行うと同時に、遺伝子変異などを調べたりすることができます。また、検査は局所麻酔薬で鎮静をかけた状態で行います。
がんが疑われる腫瘍が気管支の末梢にあると気管支鏡が届かず、気管支鏡検査ができないことがあります。その場合には経皮肺生検を行います。
経皮肺生検では、X線透視下やCTガイド下、エコーガイド下などで腫瘍の位置を確認しながら、皮膚から肺に向けて針を刺して組織を採取します。
胸腔鏡検査とは、肋骨の間を小さく切開し、そこから胸腔鏡などの器具を挿入して腫瘍の一部を採取する外科的な検査方法です。レントゲン検査やCT検査の時点で、みた目から肺がんであることが強く疑われる場合に行うことが多いです。
先述した気管支鏡検査などは、病理検査の結果が出るまでおよそ1〜2週間かかります。
胸腔鏡検査では術中迅速病理診断(手術の最中に短時間で行う病理診断)を行うため、およそ1時間で肺がんかどうかの確定診断が可能です。そのため、肺がんであることが確定された場合には、そのまま肺がんの根治切除術へ持ち込むことができ、治療開始時期を早めることができます。
胸のなかに水がたまっているときには、たまった水のなかにがん細胞が散らばっていないかどうかを確認するために胸腔穿刺を行います。胸腔穿刺は、針を皮膚から刺し胸水を採取して行います。また、同時に胸水を排液することも可能です。
肺がんの検査では、がんが全身へ転移していないかどうかを確認することも重要です。転移の状況によっては手術ができるかどうかが決まるため、とても大切な検査です。具体的には以下のような検査を行います。
など
PET検査(陽電子放出断層撮影)とは、放射性薬剤を体内に投与したあとに専用の装置(PET-CT)で撮影し、病気の診断を行う検査です。
がん細胞には、正常の細胞よりも多くのブドウ糖を取り込む特徴があります。その特徴を利用して、PET検査ではブドウ糖とほぼ同じ性質を持つ放射性薬剤を使用します。がん細胞がある場所には放射性薬剤が集まるため、それを確認することでがんの転移を発見することができます。
脳MRI検査(磁気を使い、体の断面を写す検査)は、脳の転移の有無を確認するために行います。脳はもともと多くのブドウ糖を代謝しているため、脳内のがん細胞はPET検査ではみつけることが困難です。そのため、脳転移を確認するためにはMRI検査を行う必要があります。
獨協医科大学 呼吸器外科学 教授
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