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肺がんの手術方法は?合併症や術後の過ごし方についても解説

肺がんの手術方法は?合併症や術後の過ごし方についても解説
千田 雅之 先生

獨協医科大学 呼吸器外科学 教授

千田 雅之 先生

目次
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肺がんの手術では、がんの大きさや性状、発生した場所などによって切除する範囲が異なります。そして、近年の手術技術の進歩によって、これまでは肺全摘出術が必要であった症例に対して、切除範囲を狭めた切除も可能となり、胸腔鏡手術の適応の幅も広がってきています。

今回は、獨協医科大学病院呼吸器外科の診療部長である千田雅之先生に肺がんの手術方法や合併症についてお話を伺いました。

肺葉の構造

 

肺はいくつかの肺葉(はいよう)に分類され、右肺は上葉・中葉・下葉、左肺は上葉・下葉に分けられます。さらに、それぞれの肺葉はいくつかの区域に分けることができます。

肺がんの手術では、この肺葉や区域ごとに肺を切除する方法でがんを取り除きます。そのほか、片側の肺をすべて切除したり、区域のなかの一部分だけを切除したりする方法で行うこともあります。術式は主に以下の4種類です。

<肺がんの術式>

  • 肺全摘出術…がんがある側の肺をすべて切除する方法
  • 肺葉切除術…がんを肺葉ごと切除する方法
  • 区域切除術…がんを区域ごと切除する方法
  • 部分切除術((くさび)状切除)…がんがある区域のなかを部分的に切除する方法

また、リンパ節へがんが転移している可能性があり、肺葉切除以上ではこれらの術式に加えてリンパ節を切除する「リンパ節郭清(かくせい)術」を通常行います。

肺がん手術のなかでもっとも一般的な術式が肺葉切除術です。

2014年の胸部外科学会の報告によると、38,085件の肺がん手術のうち、肺葉切除術が27,584件、肺全摘出術が521件、区域切除術が4,143件、部分切除(楔形切除)術が5,438件となっています。このような統計データからも、肺がん手術の多くは肺葉切除術で行われていることがわかります。

肺がんが肺門部(肺の入り口の太い気管支)にあるときや、肺動脈と接しているとき、2つ以上の肺葉にまたがっているときなどには肺全摘出術が必要になる場合があります。しかし、肺全摘出術は、肺葉切除術に比べて死亡率(術後30日以内の在院死亡率)が高いことや、呼吸機能の低下などによって日常生活に大きな支障をきたすことからも、なるべく避けることが望まれます。

そこで近年、従来ならば肺全摘出術となってしまうような患者さんに対して、気管支形成術を積極的に行う病院が増えてきています。

肺全摘術と気管支形成術

気管支形成術は、がんがある部分の気管支を切除して、残った気管支同士をつなぎ直す手術です。

たとえば、肺門部にがんがある場合、肺全摘出術では気管支の根元から片側のすべての肺を切除してしまいます。一方、気管支形成術では、がんのない気管支を再び肺門部につなぎ直すことで、肺葉の切除を必要最低限にとどめて、正常な肺葉を温存することができます。

また、がんが肺動脈に及んでいる場合には、がんのある肺動脈を切除してつなぎ直す肺動脈形成術を行うこともあります。

区域切除術や部分切除(楔形切除)術など、肺葉切除術よりも小さな範囲の切除で済む手術が選択される理由は大きく2つです。

ひとつは、がんの性状からしてリンパ節転移の可能性が低いと考えられる場合です。その場合は肺葉ごと切除しなくとも、区域または部分的な切除だけでがんを取り除くことが可能です。

もうひとつは、もともとの肺機能が低く、肺葉ごと切除してしまうと手術に耐えることができないと判断された場合です。このような患者さんには、検査の画像上リンパ節転移の可能性があったとしても、手術の安全性を優先するために区域切除術や部分切除術を行うことがあります。

ここまでお話ししてきたそれぞれの手術は、胸腔鏡手術か開胸手術のいずれかの方法で行います。

胸腔鏡手術

胸腔鏡手術とは、肋骨(ろっこつ)の間の皮膚を小さく切開して、そこから胸腔鏡(先端に小型カメラがついた細い管)などの医療器具を挿入し、モニターに映し出される映像をみながら行う手術のことです。近年の肺がん手術の多くは、この胸腔鏡手術で行われています。

胸腔鏡手術には「VATS(バッツ)」と「ハイブリッド」という2種類の方法があります。

VATSでは、約4cmの皮膚切開と2〜3個のポート(穴)を開けます。そして、術者は胸腔鏡が映し出すモニターだけをみて器具を操作しながら手術を行います。

一方、ハイブリッドでは約6〜7cmの皮膚切開と1〜2個のポートを開けて、術者はモニターと患部の両方を交互に確認しながら手術を行います。

開胸手術

肺全摘手術や気管支形成術などの複雑な操作を必要とする手術は、一般的に開胸手術で行います。開胸手術は約15〜20cmの切開をして行います。

ここでは、肺がんの手術に伴って起きる主な合併症(手術や検査が原因となって起こる別の症状)についてご説明します。

左肺のリンパ節周辺には、反回神経(はんかいしんけい)という声を出す神経が通っています。そのため、左肺がんの手術でリンパ節郭清を行う際に左反回神経に触れることで、反回神経麻痺が生じることがあります。すると、症状として声のかすれなどが起こることがあります。

肺がんの手術後は肺炎にも注意が必要です。

術後の合併症として起こる肺炎は、主に口腔内にいる常在菌が肺に入り込むことで発症します。そのため、周術期(手術日を含む術前から術後にかけた期間)の口腔ケアをしっかりと行うことがとても大切です。また、肺炎などの感染症を防ぐために、保険診療として「周術期口腔機能管理」という口腔内のケアを徹底して行っている病院もあります。

気管支は軟骨でできているため縫合しても結合しづらく、まれに術後気管支に穴が空いてしまうことがあります。これを気管支断端瘻(きかんしだんたんろう)といい、術後3週間ほど経過してから起こることが多いです。

気管支断端瘻では、開いた穴(瘻孔(ろうこう))から(たん)が胸のなかに漏れ出してしまうことがあります。すると、胸のなかに漏れた痰が細菌に感染して(うみ)がたまる膿胸を発症したり、膿胸からさらに肺炎を発症したりしてしまうこともあります。

膿胸を発症した場合には、胸にドレーンを挿入して膿を吸い出す治療を行います。そのうえで、気管支断端瘻の穴を塞ぐための手術を行うこともあります。

肺がんの手術では、心臓周辺の神経に触れることもあるため、術後に不整脈が生じることがあります。この不整脈は一時的なものであり、術後1週間ほどで治まることがほとんどです。

手術に伴う安静状態が続くと、血液の流れが悪くなり、下肢の深部静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」を発症することがあります。そして、深部静脈にできた血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症を発症します。肺塞栓症では、肺の血管に血栓が詰まるために呼吸困難が生じたり、命にかかわる重篤(じゅうとく)な状態に陥ったりすることもあります。

千田雅之先生

肺がんの術後は呼吸訓練(呼吸器リハビリテーション)をしっかりと行い、肺炎などの予防に努めることが大切です。

手術直前まで喫煙習慣があった方などは痰が多く、気管支が詰まりやすい状態にあります。痰の詰まりによって肺炎などを発症する恐れがあるため、術後は低下した肺機能を改善させるために大きく息を吸ったり吐いたりする呼吸訓練を行います。

もともとたばこを吸っていた方は、禁煙を徹底していただきたいと思います。

また、術後1か月くらいの間に発熱があった場合には、先ほどお話ししたような気管支断端瘻や肺炎の可能性もありますので、早めに病院を受診してください。また、医師の指示通りに定期検査をしっかりと受けていただくことも大切です。
 

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