院長インタビュー

三条市の地域医療をささえる三条総合病院

三条市の地域医療をささえる三条総合病院
神田 達夫 先生

新潟県厚生農業協同組合連合会 三条総合病院 病院長

神田 達夫 先生

この記事の最終更新は2018年07月03日です。

新潟県三条市にて診療を行う三条総合病院は地域の中核病院として開院から医療提供に尽力しています。人工透析室の設置や訪問看護ステーションの設置など地域の医療ニーズに対応するために多くの取り組みを実現させてきました。また、同院は5年後の2023年に、燕市にある燕労災病院と統合し、県央基幹病院に移行することが決まっています。三条総合病院のこれまでの取り組みと、病院統合までの展望を新潟県厚生農業協同組合連合会 三条総合病院 病院長 神田達夫先生に伺いました。

三条総合病院外観(三条総合病院よりご提供)

三条総合病院は1933年(昭和8年)に組合立の診療所として開院したことから始まります。1944年(昭和19年)には組織変更に伴い病院となり、今なお地域で親しまれている「三条病院」という名称になりました。その後、内科、外科以外の診療科も整備され、1957年(昭和32年)に今の名称である「三条総合病院」となりました。人口の高齢化が進んできたことから、現在は急性期医療だけでなく、回復期医療にも力を入れており、院内には地域包括ケア病棟も配備しています。地域包括ケア病棟とは、急性期医療後、病状が安定した患者さんに対して退院支援を行い、自宅や介護施設等への復帰に向けた医療や支援を行う病棟のことをいいます。当院では退院支援のほかに、要介護認定の申請が必要な方に対しての支援を行うなど、患者さんが治療後も安心して生活できるようにサポートをしています。

病院前朝市の様子(三条総合病院よりご提供)
手術室─外科手術(三条総合病院よりご提供)

当院では「地域で行える医療は地域で提供すること」を心がけ、一般的な疾患はしっかり診れるよう体制を整えています。新潟県は広く、1県で首都圏4都県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の面積に相当します。患者さんは地域で治療を受けることが難しいと、近隣の新潟市や長岡市に向かわなくてはならないこともあります。治療を控えている患者さんにとって県内でも長距離の移動は負担です。患者さんも地域での治療を望んでいる方が多いため、可能な限り当院で治療を提供し、患者さんの思いに応えられるように尽力しています。

また、急性期医療を提供する内科や外科などの診療科のほかに歯科・歯科口腔外科を設置しています。急性期の治療が終わり、退院を控えている患者さんやリハビリテーションを行う高齢者の方には口腔ケアが重要になります。口腔内が清潔に保たれていないと、虫歯や歯周病はもちろん、口腔内の細菌が原因となり誤嚥性肺炎を発症する危険性も高まります。当院では入院中から口腔ケアを行うことで、退院後も安心して生活してゆけるよう支援しています。

朝のナースステーションの様子(三条総合病院よりご提供)

そのほか当院の特色として、急性期病棟、地域包括ケア病棟を含め、診療を担当している医師が経験豊富なベテラン医師であることが挙げられるかもしれません。複数の疾患を抱える患者さんも多く来院されますし、地域の患者さんがどのような考えを持っておられるかといった部分も治療を進めるうえで重要です。このような複合的な事柄を考慮したうえで、地域のみなさまの健康維持に貢献すべく、診療にあたっています。

院内研修会の様子(三条総合病院よりご提供)
透析室(三条総合病院よりご提供)

血液透析は1988年から開始しており、地域の透析医療に貢献してきました。2002年には透析室を拡充し、より多くの方々が地元で血液透析を受けられるようになりました。また、日中の透析治療の提供のほかに、月曜日、水曜日、金曜日は午後5時からの夜間透析も行っています。日中は仕事などで通院が難しい方でも治療が受けられる体制を組んでいます。当院では患者さん一人に看護師と臨床工学技士がペアになり血液透析を行っています。看護師や臨床工学技士が共に対応することで、透析中に何かあっても迅速に対応することが可能です。

透析室は患者さんが長時間過ごす場所ですので、少しでも快適になるよう「明るい」「綺麗」「モダン」といった雰囲気を大切にしています。また、透析室スタッフが自宅で育てていたバラを持ってきて透析室に飾ったりもしています。透析室に花を飾ることで室内が華やかになり、患者さんの心を和ませているようです。

病院玄関 コンシェルジュ(三条総合病院よりご提供)

当院では地域医療に貢献するべく、二つの医療の実現を目標に掲げています。二つの医療とは、「質の高い医療」と「心ある医療」です。地域の中核病院である以上、技術や知識に裏打ちされた信頼度の高い、しっかりした医療の提供は必須です。地方の病院だから、中規模病院だからという理由で医療の質が落ちるようなことは絶対にあってはいけません。当院では施設・設備はもちろんですが、定期的に医師以外の医療スタッフも含めた症例検討会や勉強会を行うなど、最新の医学知識の更新や患者情報の共有化を図り、「質の高い医療」の実践に努めています。

その一方で、病気をみるだけではなく、患者さんに寄り添い、その立場に立って考えることは欠かせません。高齢の患者さんは入院を契機に、退院してもその後の生活の継続が困難になることがよくあります。患者さん自身の希望はどこにあるのか、誰と同居しているのか、介護は必要か、経済状況はなど、生活環境を詳細に把握し、患者さんの立場に立って考えて治療を進めなければ、患者さんを退院に導くことは困難です。患者さんとご家族に寄り添い、真に満足してもらえる「心ある医療」を提供することが重要と考えています。

当院は三条市に隣接した燕市の燕労災病院と統合し、2023年に県央基幹病院として新たなスタートを切ります。

三条市と燕市は新潟県のほぼ中央に位置することから、両市を含む周辺地域は県央地域と呼ばれます。保険医療区分においても、県央医療圏として新潟県に7つある二次医療圏のひとつとなっています。

県央医療圏には当院を含め7つの救急告示病院がありますが、いずれも200床程度の中規模病院で、脳卒中、冠動脈疾患、急性腹症外傷など、救急すべてに対応できる病院は存在しません。また、ICUをもつ病院もないことから十分な救急医療が提供できず、そのかなりの部分を近隣の新潟市や長岡市に依存しています。加えて、研修医や専門医が集まるような基幹型病院がないことから、過疎地でないにもかかわらず、人口十万人当たりの医師数が69人と、全国的にも医師の少ない新潟にあって県内最下位です。そのため、県央医療圏においても、救急医療の中心となり専門医教育や高度医療も担える基幹型病院が必要との気運が高まり、ちょうど10年前に県央4市町村の首長から新潟県知事宛てに「県央基幹病院」設立の要望書が提出されました。

現在、新病院の基本設計は終了し、県、設計企業体、病院職員によるワーキンググループで設計の詳細を詰めている段階です。まだ、開院までには多くの課題がありますが、県央基幹病院が新潟を代表する素晴らしい病院になるよう、当院としても協力を惜しまないつもりです。

県央基幹病院ができることは地域医療や住民にとって間違いなくよいことですが、統合ならではの問題点もあります。三条総合病院は新潟県厚生連が運営する公的病院ですので、新病院への移行にともない運営組織が変わります。そのため、職員のなかには職場が変わることへの不安を感じている者もいます。ただ、新潟県厚生連は県内に16もの病院をもっていますし、県央基幹病院は行政の責任で行っている事業ですので、雇用に関して不利益が生じることは決してないと職員には繰り返し話しています。職員全員が笑顔で前向きに働けるよう環境を整えることが私の役割だと思っています。そして何よりも、新病院移行のその日まで三条総合病院が現在と変わらず、この三条地域の医療に貢献し続けることが当院の使命と考えています。

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  • 新潟県厚生農業協同組合連合会 三条総合病院 病院長

    神田 達夫 先生

    1960年新潟県南蒲原郡生まれ。1985年に新潟大学の外科学教室に入局。2002年に消化器・一般外科学分野の講師に昇任。以後、10年にわたって研究・診療チーフとして上部消化管外科チームを率いる。その間、消化管間質腫瘍(GIST)の分子標的治療を全国に先駆けて実施。新潟大学を国内有数のGIST治療の有力施設に育て上げた。2013年に現在の三条総合病院の病院長に就任。地域の中核病院の病院長としての要職をこなしながら、5年後に開設される基幹型病院の準備に多忙な日々を送っている。

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