院長インタビュー

日々の診療にも尽力する長崎原爆病院が取り組む被ばく者治療

日々の診療にも尽力する長崎原爆病院が取り組む被ばく者治療
平野 明喜 先生

日本赤十字社長崎原爆病院 院長、長崎大学病院 名誉教授

平野 明喜 先生

目次
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長崎県長崎市に位置する長崎原爆病院は、地域の中核病院として日々の診療や救急受け入れに尽力しています。長崎市の原爆投下後に被ばく者の健康管理や治療のために開院した同院には、現在でも被ばく者が治療に来院しています。同院が取り組む被ばく者治療や日々の診療について、日本赤十字社 長崎原爆病院 院長 平野明喜先生にお話を伺いました。

長崎原爆病院 外観(長崎原爆病院よりご提供)

長崎原爆病院は1958年に被ばく者の治療と健康管理のために開院しました。当院が開院した1958年は長崎市に原子爆弾が投下されてから10年以上が経過しています。

被ばくした方々のなかには10年前後で白血病※やがんを発症する方もいらっしゃいます。戦後でまだ不安な日々を過ごす地域のみなさまに、病気の治療を提供するために長崎市内で開院した背景を持ちます。

※白血病……白血球ががんになる血液がんのひとつ

新築した院内(長崎原爆病院よりご提供)

2018年5月現在も被ばく者の方が来院しています。子どもの頃に被ばくされた方が高齢化し、がんの発症が多くなっていると感じています。もちろん、がんの発生には被ばく以外にも喫煙や飲酒などさまざまな原因があります。

放射能も、がん発症のひとつの原因として考えられています。そのため、当院では被ばく者治療のひとつとして、がん診療を多く実施しています。

PET-CT(長崎原爆病院よりご提供)
PET-CT(長崎原爆病院よりご提供)

被ばく者のがん診療だけでなく、一般の患者さんのがん診療も多く実施しています。そのなかで、外来でのがん化学療法も行っています。

また、訪問看護ステーションでは、がん患者さんのケアを行える体制を整えました。在宅での治療が必要な方や、がんの治療のために就労が難しい方など、患者さんの背景はさまざまです。被ばくが原因ではなくても、がん診療に力を入れていかなくてはならないと実感しています。

今後は、訪問看護ステーションでがん患者さんのケアにも対応し、治療から在宅復帰、お看取りまで患者さんのケアに従事していきたいと思います。

当院では開院から現在に至るまでに受診された患者さんのカルテをすべて保管しています。開院当初は被ばくした方々も多く来院し、治療にあたっていました。放射能による人体への影響は現在でもまだわからないことが多くあります。

このカルテは被ばく者の状態や、健康被害を後世に伝えるために保管してきました。紙のカルテでの保管だったものを、電子カルテにしていつでもみることができるようにしています。

当院は他の医療機関と協力して、地域の救急患者の受け入れを行っています。輪番制とは、地域の医療機関が順番に救急を担当するというシステムであり、長崎市では4日に1回の割合で2次救急患者までを受け入れるという体制です。

現在は、長崎市も高齢化が進み、高齢の患者さんの救急受け入れが増えてきています。高齢の患者さんは救急搬送をきっかけに受診するかたちになりますが、なかには高血圧糖尿病などの基礎疾患を持っている方もいます。

合併症などを持っている患者さんに対して、救急搬送された病状のみの治療を行うのではなく、合併症に配慮しながら治療を行わなくてはなりません。そのため、当院の救急医療では、患者さんを総合的に診療し、治療にあたっています。

カンファレンスの様子(長崎原爆病院よりご提供)

日本赤十字社は災害医療に力を入れており、当院も同様に災害に対する備えをしています。たとえば、災害救護活動の情報の共有や発信をはじめ、食料や水の備蓄も日頃から常備しています。

また、災害発生時に迅速な対応ができるように訓練をしています。救護所の設営や器具の使用など、いざ使用する場面に直面したときに迅速に使用できるようにしなくてはなりません。そのため、毎年実施している各種訓練への参加のほかに普段から器具の使用方法を学んでいます。

当院の災害救護班を被災地へ派遣しています。2016年に発生した熊本地震の被災地に派遣しました。被災地では同じく派遣された赤十字社の救護班や、各病院のDMAT部隊と協力し、災害救護に尽力しました。

若手医師の研修先となる、臨床研修指定病院に指定されています。そのため、若手医師の育成にも力を入れています。がん診療だけでなく内科の診療も多く実施しているため、内科から外科まで幅広く経験を積むことができます。

また、当院では若手医師に地域の病院の診療に早く慣れてもらうために、患者さんのファーストタッチを研修医が行うことが多くあります。もちろん先輩医師が近くで指導しています。

また、日本赤十字社の救急医療は研修体制も充実しています。たとえば、熊本赤十字病院は赤十字社の病院のなかでも救急医療に特に力を入れています。当院の若手医師は研修期間中に熊本県に行き、熊本赤十字病院で救急医療を学ぶプログラムがあります。

診療科ごとの垣根が低く連携を取りやすい環境です。各科と連携し、チーム医療を学んでいくことは今後の医療を担ううえでは重要だと考えています。

先ほどもお話ししたように、患者さんは高齢化が進み、ひとつの病状だけの診療ではなく、さまざまな合併症や基礎疾患の有無を確認しながら治療にあたらなくてはなりません。各科と連携し、患者さんを総合的に診療ができる医師になってもらい、次代の医療を担っていってほしいと思います。

病院名に「原爆」とあることから、一部の患者さんには敷居が高く感じられるかもしれません。しかし、地域の中核病院として日々の診療に尽力しています。がんや被ばく者治療以外の一般診療にも力を入れていますので、どのような症状でも受診してほしいと思います。

また、病院建物も新築したことで病室の配置も少し変わりました。新病院のベッド数は1割削減しましたが、病棟は大幅に拡張されました。さらに個室も増やし、患者さんのプライバシーに配慮した入院生活を提供できるようにしています。

たとえば、大部屋に入院している患者さんは日中でもカーテンを引いている姿をよく目にしていました。窓側の患者さんは日中でも日差しが入り込みますが、廊下側の患者さんは薄暗い印象がありました。

そのため、大部屋でどこからも日差しが入り込むようにすべてのベッド付近に窓を設置しています。日差しが入ることでカーテンを引いていても明るい室内になります。

病院建物も新しくなり、綺麗な環境で日々の診療や被ばく者治療、日本赤十字社の救護活動などにより一層力を入れていきます。それぞれの診療科や分野の特色を地域に発信していき、地域のみなさまに選んでいただけるような病院を目指してスタッフ一同努力を重ねてまいります。

窓が大きく明るい病室(長崎原爆病院よりご提供)
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