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よりよい希少がんの医療のために―今、考えるべきこと―
患者数が非常に少ないがん「希少がん」の医療のあり方に、今、注目が集まっています。希少がんはその「まれ」な発生頻度ゆえに、専門とする施設や医師数も少数にとどまっています。このように一般的ながんとは...
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よりよい希少がんの医療のために―今、考えるべきこと―

公開日 2019 年 01 月 11 日 | 更新日 2019 年 01 月 11 日

よりよい希少がんの医療のために―今、考えるべきこと―
川井 章 先生

国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長(希少がんセンター長)

川井 章 先生

患者数が非常に少ないがん「希少がん」の医療のあり方に、今、注目が集まっています。希少がんはその「まれ」な発生頻度ゆえに、専門とする施設や医師数も少数にとどまっています。このように一般的ながんとは背景が異なるため、治療成績の向上や新たな治療開発のためには、従来がん医療政策の柱とされてきた「均てん化」だけでは不十分だと考えられるようになっています。

希少がん医療を向上させるために知っておくべき状況や、医療者の方、患者さん一人ひとりが考えるべきこと柄について、国立がん研究センター希少がんセンター長の川井章先生にお伺いしました。

診療科目の名称は、院内標榜を掲示しています。

希少がん医療のあり方を考えるうえで必要な視点とは?

現在、わが国における希少がん医療のあり方に関しては、さまざまな検討が進められています。希少がんとは、人口10万人あたりの発生頻度が年間6例未満の「まれ」ながんの総称であり、私が専門とする骨の肉腫や軟部肉腫もその中に含まれます。この希少がんの問題を考える際には、「まれ」であるという希少がん全体に共通する特徴と共に、それぞれの疾患の特性も考慮する視点が重要であると考えています。

同じように「まれ」でも各疾患の持つ特性や患者像は異なる

小さな子どもと親

発生頻度が同じ程度にまれであっても、そのがんの好発年齢や臨床像、患者さんの持つ背景は、疾患ごとに大きく異なります。

たとえば、代表的な希少がんである骨肉腫は、成長期にある子どもに発症しやすい悪性腫瘍として知られています。仮にご自分のお子さんが骨肉腫と診断されたとしたら、たとえ県を跨いで遠方まで行くことになったとしても、少しでも症例の多い、治療成績の明示されている専門施設で治療を受けたいと考えるご家族は多いかもしれません。一方、遠方の施設へ通うことが難しい高齢の方に生じることが多い軟部肉腫はどうでしょうか。このような状況の場合には、遠くの専門施設まで行くことなく、できるだけ住み慣れた地域の病院で可能な範囲の治療を受けたいと望まれる方も決して少なくはありません。

同じように「まれ」ながんであっても、その疾患の特徴と共に、患者さんそれぞれの背景、望む医療のかたちは大きく異なっているのです。

「自分が患者あるいは家族だったら?」という視点で考えてみる

現在、希少がんと定義される悪性腫瘍は200種類にのぼります(2019年1月時点)。その医療提供体制を考える際には、一人ひとりが「自分の家族あるいは自分自身がこの『まれ』ながんに罹患したらどのような医療を望むか」という視点に立って考え、議論を重ねることが大切なのではないかと思います。

改革のために必要な検証

最大の目的は治療成績の向上

希少がん医療制度改革の最大の目的は、治療成績の向上にあります。しかし、希少がんの中には現時点では標準治療が確立されていないもの、治療成績が十分に明らかになっていないものも少なくありません。希少がんの治療成績は改革により本当に改善されるのか、しっかりと検証しながら施策を進めていかなければなりません。

治療成績以外の視点

小さな子ども同士が会話している

もちろん、生存率や治癒率などの客観的な指標以外にも、考慮すべき視点は存在します。集約化によって形成される「自分と同じ病気の患者さんが同じ病棟で闘病している」という療養環境は、特に希少がんの患者さんにとっては有形無形の力になることは間違いありません。

また、医師にとってもこれまで数年間で1~2例しか診療する機会がなかった疾患を数多く診ることができるようになることは、技術的にも精神的にも好影響を及ぼすものと期待されます。

小児がん対策から学ぶことも必要

希少がん対策に先んじて始まった小児がん対策から学べることは多いと感じています。小児がんは希少がんと同じく発症頻度が低いまれな病気です。そのため、診療拠点を絞ることにより治療成績やケアの質が向上することが期待され、いち早く集約化が進められたことで、2013年には全国で15の施設が小児がん拠点病院に指定されました。その貴重な経験や知見は、希少がんの対策を考えるうえで大切な示唆を与えてくれると考えられます。他方、疾患の多様性、多診療科の関与、患者さんの持つ背景の多様性など、小児がんにはない難しさも希少がんには存在しています。両者の類似性と相違点を十分に認識したうえで、より幅広い立場から、多様な衆知を集めた議論を重ねることが必要と考えています。

希少がん情報の集約化と発信                         

スマートフォンかパソコンで何かを調べている温かい家族

希少がんを実際にどれだけの施設で、どのように診療していくかに関しては、解決しなければならない課題が今もたくさんあります。一方、希少がんに関する情報の収集、発信に関しては、すでにいくつかの取り組みが始まっています。

2018年、国立がん研究センターは国の希少がん中央機関に指定されました。そのミッションのひとつとして、希少がんに関する正確で新しい情報を、広く社会に伝えていくことが掲げられています。希少がんは、その「まれ」さゆえに、医療者にとっても患者さんにとっても十分な情報を入手することが難しいという問題を抱えています。

この問題に少しでも応えるべく、希少がんセンターでは専任の看護師が患者さんや医療者からの相談にお答えする「希少がんホットライン」を開設し、希少がん患者さんが最適な診療を受けられるお手伝いをしています。

また、希少がんに関する信頼できる最新の情報を広く伝えることを目的として、希少がんセンターのWEBページの内容を充実させると共に、FacebookなどのSNSを用いた情報の発信も開始しています。さらに、2017年からは、さまざまな希少がんに関して専門家が疾患や治療の解説を行う「希少がんMeet the Expert」を毎月開催し、その模様はWEBを通して広く一般の方に公開されています。ぜひ、一度ご覧いただければ幸いです。

これらは始まったばかりの小さな取り組みではありますが、このような取り組みが集まって大きな流れとなり、希少がんの医療が少しずつ改善されていくことを願っています。

「国立がん研究センター希少がんセンター」のホームページもご参照ください。

厚生労働省研究班とMedicalNoteが連携して情報を発信する「希少がん対策サイト」もあわせてご覧ください。
 

国立がん研究センター中央病院にて、骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長を務めている。また、専門性の高い希少がんの診療を実践し、研究活動を推進すべく発足した希少がんセンターのセンター長も併任する。専門は骨肉腫や軟部肉腫などの骨軟部腫瘍の診断と治療。
常に患者さんやご家族の視点に立ち、最適な選択肢を考えながら診療にあたっている。