院長インタビュー

どのようなときも地域の皆さまを支える存在でありたい―災害対策に努める和歌山労災病院の取り組み

どのようなときも地域の皆さまを支える存在でありたい―災害対策に努める和歌山労災病院の取り組み
南條 輝志男 先生

和歌山ろうさい病院 病院長

南條 輝志男 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

この記事の最終更新は2019年02月18日です。

独立行政法人労働者健康安全機構和歌山労災病院は、地域の皆さまを支える病院を目指し、医療提供を行っています。同院は、平常時のみならず、災害時にも地域の医療拠点となれるよう、幅広い取り組みを行っています。また、医療連携を強化し、地域の皆さまが求める医療の提供に努めています。

どのようなときも地域の皆さまを支える取り組みについて、病院長である南條輝志男先生にお話を伺いました。

和歌山労災病院外観 
和歌山労災病院外観 

当院は、2012年に和歌山県災害拠点病院の指定を受けました。災害拠点病院とは、災害時に24時間体制で医療提供が行える環境が整備されているかを、さまざまな観点から評価されます。当院はこれらの条件を満たし、指定を受けた後も、災害時医療の拡充に努めています。

代表的な取り組みとして、2015年7月に災害医療研修棟を新設したことが挙げられます。この研修棟は、災害時に必要である機能を集約するために建設し、屋上にヘリポートを設置しています。また、災害時に地域の皆さまの一時的難場所として機能する、多目的ホールをつくりました。平常時は、年4回の市民公開講座の開催や、災害医療の実践トレーニングを積むスキルスラボとしても使用しています。

災害医療の備蓄倉庫や研究室をつくり、図書室なども整備しました。災害時には、災害対策本部の会議室として使用できる機能を有しています。

このように、平常時から災害に備えることで、災害時においても医療提供ができる病院づくりを行っています。

ドクターヘリを使用した災害訓練の様子
ドクターヘリを使用した災害訓練の様子

当院は、2012年にDMAT指定病院になりました。DMATとは、災害が発生した際、現地に派遣する医療チームのことです。DMATは、災害時の救急医療の訓練を専門的に受けた医師・看護師などの医療従事者で構成されています。主に、災害急性期に当たる48時間以内の救急医療に当たります。

当院のDMATは、他県の災害時にも活動を行っています。2011年には、当院のDMATの前身である和歌山労災病院診療チームが、東日本大震災の際に避難所で巡回・診療に当たりました。また、2016年の熊本地震の際にも、DMATを派遣して現地で医療支援を行いました。

災害時に備え、他病院のDMATと合同で、災害実地訓練を行っています。合同訓練に取り組み、チーム内外での連携強化や新たな課題が見えてきました。その課題に対し、実際の災害時対応に活かすべく、チームで振り返りや研修に取り組んでいます。

脳出血脳梗塞などの脳神経疾患は、突然症状が現れ、緊急の手術や治療が必要な場合が多くあります。そのため、24時間対応できる体制を整えています。急な頭痛や手足のしびれ、めまいなどの症状が出た際には、我慢することなく、早めにご相談ください。

当科では、脳神経血管内治療に力を入れています。脳神経血管内治療とは、くも膜下出血を引き起こす因子となる脳動脈瘤などに対する治療です。くも膜下出血とは、脳動脈瘤と呼ばれる血管のふくらみが破裂することで、脳内に出血を起こす病気です。出血が原因で、言語障害・手足の麻痺といった後遺症が残る方がいらっしゃいます。

そこで、脳神経血管内治療では、脳動脈瘤の段階で治療を行います。これにより、出血を未然に防ぎ、後遺症のリスクを避けることが可能になります。

脳動脈瘤に対する脳神経血管内治療では、太腿部の血管からカテーテルという細いチューブを差し込み、コイルを脳動脈瘤の中に挿入します。これにより、動脈瘤内に新たな血液が送り込まれなくなり、動脈瘤の破裂のリスクを減らし、くも膜下出血を防ぐことができます。

当科は、主に肝炎肝がんの治療を目的として、2017年に新設いたしました。特に力を入れているのが、肝がんに対するRFAと呼ばれるラジオ波焼灼療法です。RFAは、皮膚の上から電極針を刺し、ラジオ波を流すことで、がんを焼く治療法です。開腹手術に比べ、傷が小さく、治療が短時間であるため、患者さんへの負担が少ない低侵襲な治療とされています。

肝がんは、がんの大きさや数や位置によって、治療法が大きく異なります。当科では、日本肝臓学会認定の肝臓専門医が、検査結果をもとに診断を行い、患者さんそれぞれに応じた治療法をご説明いたします。また、がんの状況だけではなく、患者さんの今後のライフスタイルのご希望を伺い、それに沿う形で治療法を提案しています。

糖尿病デーイベント
糖尿病デーイベント

当院では、医療連携室を設置し、院内のみならず地域の医療機関との連携の窓口を設けています。かかりつけの医療機関から当院に受診する場合には、医療連携室をご利用ください。

当院は、地域の医療機関と医療連携を緊密に取っています。今後とも、必要な医療を必要な方に提供できるよう、地域の医療機関との連携に努めてまいります。

また、医療相談室では、受診相談から医療・看護相談まで、幅広い相談に応需しています。医療に関するお悩みや手続きに関するご相談などありましたら、お気軽にいらっしゃってください。

医師は、患者さまと関わる中で、知識だけではなく、人として多くのことを学びます。そのため、自分の目で見ることと、振り返り反省することを怠らず、医師としてのキャリアを積み重ねていってください。

また、若手医師の皆さまには、地域医療に興味を持って欲しいと考えています。地域医療で技術を磨き、世界で戦える力を養っていってください。地域医療から世界へ羽ばたく意欲のある若手医師の皆さまに、ぜひ当院に来ていただきたいです。

地域の皆さまの日常の平穏が続くことを願ってやみません。しかし、災害は突然起き、生活を一変させる脅威です。それゆえ、日頃からの備えが重要であると考えています。

当院は、どのようなときも、地域の皆さまを支えることができるよう、医療体制の整備、備蓄品の拡充などの災害対策に努めてまいります。また、平常時も地域の皆さま に寄り添う医療を提供できるよう、職員一同、励んでまいります。

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。