院長インタビュー

地域の皆さんに「あってよかった」と思われる病院を目指して―信州上田医療センター

地域の皆さんに「あってよかった」と思われる病院を目指して―信州上田医療センター
吉澤 要 先生

独立行政法人国立病院機構信州上田医療センター 元院長

吉澤 要 先生

目次
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独立行政法人国立病院機構 信州上田医療センターは、長野県上田市にある医療センターです。同センターは地域がん診療病院や救急告示病院などに指定されており、地域におけるさまざまな医療的な役割を担っています。

今回は、同センターの提供する医療や、そのほかの取り組みについて、元院長である吉澤 要(よしざわ かなめ)先生にお伺いしました。

信州上田医療センター 外観
信州上田医療センター 外観

当センターは1997年に、国立東信病院と国立長野病院が統合したことで誕生し、開院されました。開院後は国立長野病院として運営していましたが、2004年に独立行政法人国立病院機構 長野病院となりました。

当センターは長野県上田市にあり、上田という地名を病院名に入れようと考え2011年に現在の名称である、独立行政法人国立病院機構 信州上田医療センターへ改称しました。

当センターには、上田市だけではなく、上田市の近隣である東御市、小県郡、坂城町などからも患者さんがいらっしゃっています。当センターはこの地域の基幹病院として、地域がん診療病院、地域医療支援病院、救急告示病院などの役割を担っています。この地域の医療機関と連携しながら、この地域だけで完結できる医療を目指し、日々診療にあたっています。

救急医療の勉強会の様子
救急医療の勉強会の様子

地域住民の皆さんに必要とされる医療の提供を地域内で完結できるよう、2018年現在、当センターでは26診療科を開設して医療を提供しています。本項では、当センターが提供する医療のなかでも、以下の3つの医療について詳しくご説明します。

当センターは、厚生労働省から地域がん診療病院に指定されています。胃、大腸、肝、肺、乳房などの主要ながん以外にも、口腔外科、耳鼻咽喉科、整形外科領域、前立腺がんなど泌尿器科領域のがんや脳腫瘍など、さまざまながんの診療が可能です。

当センターには、緩和ケア内科を設立しています。緩和ケア内科では、患者さんのつらさなどを和らげるために、身体症状や精神症状のコントロールを行っています。たとえば身体症状なら、痛み、倦怠感、吐き気、食欲低下など、精神症状であれば、つらい気持ちや、不安な気持ちなどを対象にしています。緩和ケア内科では、がん患者さんはもちろん、がん以外の病気を患っている患者さんの診療も行っています。

また、がん患者さんやがん患者さんのご家族のために、がん相談支援センターも立ち上げています。がん相談支援センターでは、病気の相談、経済的な相談など、さまざまな相談を承っています。

このように当センターでは、がん患者さんを多様な面で支えるために、さまざまな部門を設けています。

当センターは、救急告示病院としての役割を担うため、救急搬入を積極的に受け入れています。当センターにあるすべての診療科が救急搬入に対応しており、日々救急医療にあたっています。救急医療の知識や技術を身につけるために、当センターの医療スタッフは勉強会や研修会に積極的に参加しています。

当センターにある救急医療を行うための救急病棟は、院内のほかの病棟と比べると緊急入院、転入、転出が多いです。そのため救急病棟では、「この先どうなるのだろう」と患者さんが不安にならないよう、状況が許す限り丁寧で細かな説明を心掛けています。

救急搬送されてきた患者さんの場合、救急搬送の移動距離が短ければ短いほど医療処置の開始が早くなるため、患者さんの経過はよくなることが多いです。そのため、この地域の方々に何かあったときには、この地域で救急医療を完結できる体制が大切だと考えます。当センターは今後も、周辺の医療機関と役割分担をしっかり行いながら、救急医療にあたってまいります。

当センターは、この地域の周産期医療の役割も担っています。周産期医療とは、妊娠からお産に関する医療のことです。当センターでは、通常のお産はもちろん、妊婦高血圧症候群や双胎妊娠などのハイリスク妊娠やハイリスク分娩にも対応しています。産婦人科だけではなく、小児科などほかの診療科と連携をとりながら、診療やお産にあたることもあります。また、NICUと呼ばれる新生児の集中治療室も有しており、先天性の病気を持った新生児や低出生体重児を24時間365日診療できる体制を整えています。

当センターがこの地域の母子を守る、という使命感を持って、周産期医療にあたっています。

変わりつつあることを知ってもらうために取り組んだ病院際の様子
変わりつつあることを知ってもらうために取り組んだ病院祭の様子

当センターでは、「病院祭」を当センター内で開催しています。開催している理由は、当センターの現在の体制や取り組みを地域の方々に知っていただきたい、もっと地域に開放した病院になりたい、と考えたためです。

これまでの病院祭では、鶏肉を切って縫ったり内視鏡を使用したりする模擬手術などの医療体験、子どもたちによる合唱、地域の方々による太鼓の演奏など、多様な出し物を行いました。地域の皆さんに病院祭にご参加していただいたことで、当センターを身近に感じていただけていたら嬉しいです。

また、当センターはこの地域の方々の健康意識向上のため、公民館や、会社、学校などに出向き、出前講座や市民公開講座を行っています。がんの話、頭痛の話、ノロウイルスの話など、幅広い内容をお伝えしています。

ほかにも当センター附属の看護学校で、看護師養成も行っています。さらに地域医療教育センターでは、臨床研修指定病院として、医学部を卒業して医師免許を取得した研修医の教育にもあたり、また、看護師をはじめ多職種の教育も行なっています。若い医師や看護師の教育に力を入れることで、この地域の医療従事者の増加を期待しています。医療従事者が増加することで、この地域でより充実した医療の提供が可能になるのでは、と考えています。

このようなさまざまな取り組みを通して、地域に貢献し、より地域に根差した病院になりたいと考えています。

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  • 独立行政法人国立病院機構信州上田医療センター 元院長

    吉澤 要 先生

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