2019年3月9日(土)、横須賀芸術劇場にて、日本医療マネジメント学会第18回神奈川支部学術総会が開催されました。テーマは「地域医療構想とポジショニング」と題され、多くの講演やシンポジウムが行われました。本記事では、小泉進次郎さんを迎えて行われた特別講演を中心に、その様子をレポートします。
長堀薫先生
本日は、日本医療マネジメント学会第18回神奈川支部学術集会にご参加いただき誠にありがとうございます。テーマは「地域医療構想*とポジショニング」としました。
現在、地域医療構想を前提として、病院の機能分化とネットワーク化が急速に進んでいます。そのようななかで私たちは、自施設の立ち位置とビジョンを明らかにすることが求められています。本日は活発な議論を行い、充実した時間を過ごしていただきたいです。
*地域医療構想・・・将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数を4つの医療機能ごとに推計し、地域における病床の機能分化と連携を進める取り組み。その目的は、超高齢社会にも耐えうる医療提供体制を構築すること。
山本登先生
本日はご参加いただきありがとうございます。本学術集会を率いていただいた長堀先生、ならびに、1年前からご準備いただきました運営スタッフの皆さまに、深く感謝を申し上げます。
地域医療構想が進むなかで、私たち病院は今後どのように方向性を見定めるべきか。この重要な課題について、会場の皆さまには互いに知恵を出し合っていただき、さらに、その成果を自施設に持ち帰っていただければ幸いです。
また、2019年7月には、名古屋で「第21回日本医療マネジメント学会総会」が開催されます。皆さま、奮ってご参加ください。
第21回日本医療マネジメント学会総会についてはこちらをご覧ください。
AIの開発を専門とする株式会社9WD 代表取締役である井元剛氏より、「AIが紡ぐこれからの医療」をテーマに、特別講演が行われました。
横須賀共済病院は、井元氏をパートナーに迎え、2018年より内閣府の「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム研究開発計画」の1つである、サブテーマBを進めています。本プロジェクトでは、病院内のタスクシフト(業務の移管)を目的として、AIによる診察内容の録音および電子カルテへの入力補助のシステムを開発です。
井元氏は、以下のように語りました。
「AIは人間の敵ではなく、仕事を奪うわけでもありません。AIは、人間をサポートしてくれる存在になるはずです。たとえば、AIによって院内業務のタスクシフトが実現すれば、それまで単純労働(カルテの入力や書類業務など)に割いていた時間を患者さんのために使うことができます。さらに、余剰の時間で、よりよいケアの提供、業務分析による状況改善などが可能になるでしょう。将来的には、AIによる新しい双方向コミュニケーションを実現したいと考えています」
市民公開講座には、横須賀市民をはじめとして多くの方が参加されました。まず、長堀薫先生よりご挨拶がありました。
長堀薫先生
市民公開講座では、米海軍第7艦隊のブラスバンドによる演奏、小泉進次郎さんとの対談などを行います。本講座は、「楽しく学べる」を基本にしていますので、ぜひご堪能いただければ幸いです。
次に、米海軍第7艦隊のブラスバンド『湘南ブラスクインテット』による演奏が披露されました。
同ブラスバンドは、艦隊や基地、外国の要人達に向けた演奏のほか、西太平洋中の地域における親善イベントなど、音楽を通じたサポートを行っています。
「医療から開ける未来」をテーマに、衆議院議員の小泉進次郎氏と長堀薫先生の特別対談が行われました。本項では、その特別対談の様子を一部要約してお伝えします。
長堀薫先生
小泉進次郎さんは、2018年10月に自民党厚生労働部会長に就任されました。それ以降、非常に精力的に活動されていますので、そちらを中心にお話を進めていきます。
小泉進次郎氏
厚生労働部会長に就任してから、医療や介護、年金、子育て、働き方改革など、さまざまな課題の現状を把握しました。厚生労働省は、国民の生活にかかわる多くの課題を扱う、まさに「国民生活省」ともいえるところです。ですから、私が見た景色を皆さんに共有したいと思い、スライドを用意してきました。
小泉進次郎氏
こちらは、横須賀共済病院を視察したときの写真です。横須賀共済病院では、AI(人工知能)のシステムを手がける方々とチームを組み、タスクシフトを目的としたプロジェクトを進めています。
小泉進次郎氏
こちらは、横須賀共済病院の初療室(重症患者用初期治療室)で撮影した写真です。このタブレット端末には、救急車の位置や搬送されている患者さんの情報が届くため、救命救急医は救急車の到着までにスタンバイすることが可能です。
小泉進次郎氏
こちらは、ダヴィンチという手術支援ロボットの操作を体験させていただいたときの写真です。ロボットを遠隔操作してみたところ、手の動きや感覚と非常に近く、操作性の豊かさを実感しました。
長堀薫先生
コンソールと呼ばれる操作台に入っているのが進次郎さんですね。ロボットの先には鉗子がついていて、手術では、患者さんの体、患部に接します。ロボット手術では、このように医師が患者さんに直接触れることなく手術を行います。ロボットの「手」は360度動かせるため、人間の手よりも優れているといえるでしょう。
小泉進次郎氏
横須賀共済病院には、患者さんやご家族のがんに関するさまざまな相談に対応する「がん相談支援センター」が設置されています。右側に写っているウィッグは、抗がん剤治療などの影響で髪が抜けてしまったときに使うものです。このように、がん相談支援センターでは、さまざまなケアを実施しています。
しかし、がん相談支援センターの存在は意外と知られていません。ですから、このお話を皆さんにお伝えしようと思いました。今は「2人に1人ががんになる」といわれる時代。もし自分や家族ががんになったとき、がん相談支援センターのような場所を知っていれば、頼ることができますし、不安を軽減できるでしょう。
横須賀共済病院「がん相談支援センター」についてはこちらをご覧ください。
小泉進次郎氏
次に、八王子市の素晴らしい活動をご紹介します。同市では、2013年に「がん予防推進計画」を策定し、がんの早期発見・早期治療に結びつくがん検診の受診率向上に取り組んでいます。
具体的には、自治体が行う特定健診*のデータに基づき、推奨される特定のがん検診について「個別勧奨通知」を実施しました。広く一般的なキャンペーンではなく、個人に向けた行動の勧めによって、がん検診が、他人事ではなく自分事になるのです。また、対象者へのクーポン券(検診費用、自己負担額が無料になる)の送付などを行いました。
5年間にわたる活動によって、八王子市では、大腸がん、乳がん、子宮頚がん検診において、著しく受診率が向上しました。今後、横須賀市でも、このような取り組みが進んでいくことを期待しています。
*特定健診・・・生活習慣病の予防を目的として、40歳から74歳までの方を対象にメタボリックシンドロームに着目した健診を行うこと
小泉進次郎氏
今は「人生100年時代」といわれる時代です。実際、1947年には平均余命が男性50歳・女性54歳でしたが、2010年には男性80歳・女性86歳となり、大きく延伸しました。この約70年間の平均余命の延び方を見れば、将来的に平均余命が100歳を超えることは、想像に難くありません。
このように人生が長くなっていくなかで、私たち1人1人が自身の健康づくりにもっと深くかかわりを持ち、行動を変えていく必要があるでしょう。このテーマは国としても重要な課題であり、人生100年時代における国づくりは「1人1人の行動に変化を起こすことができるか」にかかっています。
ぜひ、長堀先生には、このようなイベントを通じて、医療に関する発信を続けていただきたいと思います。本日はありがとうございました。
長堀薫先生
ありがとうございます。進次郎さんには、ぜひ、またこのようなイベントにお越しいただければ嬉しいです。
市民公開講座の終わりには、日本の未来を担う子どもたちから、小泉進次郎さんへ花束の贈呈が行われました。
このようにして、日本医療マネジメント学会第18回神奈川支部学術総会の市民公開講座は、大きな拍手に包まれ終了しました。
国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院 病院長
国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院 病院長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器病学会 消化器病専門医・消化器病指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本肝臓学会 肝臓専門医・肝臓指導医日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(消化器・一般外科領域)
横浜市立大学医学部卒業後外科医として診療や講師としての経験を積み、国家公務員共済組合連合会・横須賀共済病院にて診療を開始。
外科部長・診療部長を歴任、一度横須賀共済病院から離れるのもの、横須賀共済病院に今度は病院長として就任。以来管理者の視点から横須賀共済病院、そして横須賀・三浦を中心とした地域医療構想の発展に尽力している。
長堀 薫 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。