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日本集中治療医学会広報委員会企画:臨床工学技士座談会―多職種連携としての学術集会のあり方

日本集中治療医学会広報委員会企画:臨床工学技士座談会―多職種連携としての学術集会のあり方
橋本 悟 先生

京都府立医科大学 集中治療部

橋本 悟 先生

目次
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2019年3月1日〜3月3日、国立京都国際会館にて第46回日本集中治療医学会学術集会(以後、「学術集会」)が催されました。日本集中治療医学会広報委員会では、この機会に座談会「臨床工学技士に対する集中治療に関する教育の必要性と方向性」を行いました。同学会広報委員会の松田直之委員長、髙木俊介委員をお招きし、臨床工学技士4名による座談会の様子をレポートします。

参加者

日本集中治療医学会広報委員会

松田直之先生(広報委員会委員長)

髙木俊介先生(広報委員)

臨床工学技士

八反丸善裕さん(東京大学医学部附属病院)

梶原吉春さん(東大和病院)

森實雅司さん(済生会横浜市東部病院)

平山隆浩さん(岡山大学病院)

 

相嶋一登理事(日本集中治療医学会理事)

参加者自己紹介

髙木先生:

まずはお一人ずつ、簡単な自己紹介をお願いできますか。

八反丸善裕さん(東京大学医学部附属病院)

八反丸さん

東京大学医学部附属病院の八反丸です。

私はもともと人工呼吸や血液浄化に興味がありました。就職後、自然と集中治療にかかわりたいと考えるようになり、この道を選びました。

学術集会における最初の発表テーマは情報管理です。人工呼吸器と血液浄化装置に関するデータをアプリケーションにより取得してデータベースで管理し、有効活用する方法を発表しました。

梶原吉春さん(東大和病院)

梶原さん

東大和病院の梶原です。

私は1992年3月に学校を卒業し、同年4月に臨床工学技士として就職しました。そこで透析センターを開設する動きがあり、準備に携わると共に業務の一部を引き受けることになりました。そこに併設されていた集中治療室に配属されたことをきっかけに、集中治療に興味を持つようになりました。第30回学術集会に参加した際、当院における臨床工学部の課題と現状をテーマとして、初めての発表を行いました。

森實雅司さん(済生会横浜東部病院)

森實さん

済生会横浜市東部病院の森實です。

学校を卒業後、最初に就職した病院は3次救命施設で、集中治療室に関わることが多くありました。その当時は血液浄化や補助循環、人工呼吸について精通する医療従事者が少なかったことから、集中治療室と人工呼吸器に興味を持ち始めました。現在所属する病院に転職後は集中治療担当として仕事をしています。

当院には「小児肝臓消化器科」という特殊な診療科があり、全国各地から劇症肝炎*や急性肝不全*の子どもが搬送されてきます。臨床工学技士として集中治療に関わるなかで、肝不全で意識レベルが低下した患者さんに対して、どのように血液循環を活用すれば効果的であるかがわかってきました。この経験をまとめ、学術集会で初めての発表をさせていただきました。

劇症肝炎…肝臓の機能が急激に低下し、意識障害などが現れる重篤な疾患

急性肝不全…劇症肝炎のような肝炎像を伴わない肝不全

平山隆浩さん(岡山大学病院)

平山さん

岡山大学病院の平山です。

学校を卒業後は地方の中規模病院に務めていましたが、幅広くさまざまなことを経験したい気持ちが強かったので、多くの経験を積むことのできる大学病院の集中治療室に行くことを決めました。

私はまだまだ若手の部類で、学術集会における発表の経験は少ないです。最初の発表は、動脈圧波形解析による敗血症の診断補助手法に関する研究でした。この研究は、ありがたいことに優秀演題賞にノミネートされ、論文にまとめることができました。この体験が、ひとつの継続的な研究活動の力となっております。

日本集中治療医学会学術集会に参加することの意義とは?

髙木先生:

皆さんは、これまでにも学術集会に参加されていらっしゃいます。今回の学術集会の印象や、学術集会に参加することの意義についてお話しいただけますか。

刺激を受けて、仕事への熱意を引き出してくれる

八反丸さん:

私自身は今回で6回目の学術集会参加となります。

学術集会では、さまざまな施設で働く臨床工学技士の発表を聴くことができます。同じ職種の身としては、皆さんの発表に非常に刺激を受けますし、学術集会に参加することで「自分ももっと頑張りたい」と感じることができます。

情報を持ち帰り、学会に来られない人に共有できる

梶原さん:

学術集会には20年間、毎年参加しています。今年の学術集会は教育講演の数が多い印象があります。

学術集会は、多くの新しい情報を得られる場所だと考えています。学術集会に参加する意義は、得た情報を持ち帰り、学術集会に参加できなかった仲間たちにフィードバックすることで、新しい情報をチーム全体に共有できることにあると考えています。

梶原さん

松田先生:

20年間参加されているとは素晴らしいですね。最近の学術集会と以前の学術集会を比べて、変わったと感じるところはありますか。

梶原さん:

初めて学術集会に参加したときには、臨床工学技士用の教育講演やパネルディスカッションがほとんどありませんでしたが、最近は医師以外の医療従事者の教育講演やパネルディスカッションが増えてきていると感じます。

あらゆる分野の専門家が集い、多くのことを学べる場所

森實さん:

私は2009年から毎年学術集会に参加しています。臨床工学技士が参加できる学会はほかにもいくつかありますが、本学術集会ほど大規模で多職種が集まる学会は珍しいです。発表する側としても、発表を聴く側としてもよい経験になると感じています。

人工呼吸器のエキスパートだけを集めたシンポジウム、血液浄化の専門家を海外から招聘しての講演会など、他学会に参加しなければ聴けないようなトピックスがこの会場に集まっているので、幅広い知識を身につけることができます。

現状に満足しないことの大切さを実感できる

平山さん:

学術集会には、岡山大学病院に着任した2014年から今年まで、毎年参加しています。

初参加となる第42回学術集会で、初めて全国学会で発表を行いました。学会に参加されている臨床工学技士の方々は仕事への熱意にあふれた方が多く、質問の内容も専門知識が求められるものばかりで、衝撃を受けました。

自分の所属する病院内だけで仕事をしていると、固定観念にとらわれたり、解決できない問題も出てくることもあると思います。今後も学術集会に参加して先輩方と交流し、視野を広げ、成長し続けたいと思います。

多職種連携の重要性―現状と課題

髙木先生:

臨床工学技士の目線からみた多職種連携の重要性についてお伺いします。集中治療の現場では、それぞれどのような取り組みを行っていますか。ご意見をお聞かせください。

八反丸さん:

当院には、集中治療室専従の臨床工学技士はおらず、ほかの治療室と兼務で集中治療室を担当しています(2019年3月時点*)。専従ではないぶん、集中治療室に入ったときは、積極的に他職種とコミュニケーションをとるように心がけています。

集中治療室にいない間に起こった患者さんの容体変化については、電子カルテを参照したり、看護師とコミュニケーションをとって状況を確認したりといった形で情報を得ます。こうして得た情報から、集中治療室の機器の管理を行っています。

配置状況は現在の実態とは異なる場合があります。

梶原さん:

毎朝15分の臨床工学技士同士の申し送りや、医師や看護師を交えた定例カンファレンスでコミュニケーションを取り、情報共有を徹底しています。

また、医師の指示の下、臨床工学技士が看護師の業務の一部を手伝っていることも当院の特徴です。具体的には、吸引や手術を終えた患者さんのお迎えなどを、看護師と連絡を取り合いながら行うことが多いです。積極的にチーム全体でコミュニケーションをとると共に、職種の枠にとらわれず協力し合う体制が整っていると感じます。

森實さん:

臨床工学技士が臨床工学技士としてのアセスメントを持っていることが当院の特徴です。体外補助循環などの臨床工学技士が関わる医療行為に関して議論が求められるときは、多職種の集うカンファレンスの際に、臨床工学技士としての意見を出しています。

また、多職種が日常的にコミュニケーションをとることで、効率的な医療の提供を目指しています。たとえば、透析の予定が前倒しになった患者さんに処方する抗菌薬の調整について薬剤師と相談する、間接熱量計*で測定したエネルギー消費量を管理栄養士に共有するなど、お互いに必要とする情報が何かを考えて行動するように心がけています。

間接熱量計:安静時の消費カロリーを測定する器械。呼吸で酸素消費量と二酸化炭素産出量から評価する。間接熱量計で測定したエネルギー消費量を栄養士に共有することで、栄養士が患者さんの1日の献立を立てやすくなる。

松田先生:

医師と臨床工学技士のコミュニケーションでは、たとえば血液浄化療法を併用する場合の抗菌薬投与のタイミングなどについてご相談させていただくことがあります。血液流量の調節、ろ過量、選択している膜などの情報について共有することはとても大切ですね。

平山さん:

当院は3つの集中治療室が稼働しており、毎日各治療室に担当者を1人ずつ配置して、担当者が治療室を専任で受け持つ体制をとっています。

現在私が主に担当する救急集中治療室では、毎日多職種カンファレンスを行います。ここでは、自分たちの持つ情報を共有するよう意識しています。

集中治療室で円滑に効果的に業務をするためには、多職種間でのコミュニケーションが最も重要だと感じています。多職種連携を推進し、お互い気軽に相談できるチーム作りをしていきたいです。

髙木先生:

確かに、多職種連携を意識している施設でも、職種によって目標や使用言語が異なるのが現状です。集中治療室の中で、患者さんの治療という同じ目的でチーム医療を行っていても、各職種の業務内容と目標は同じではないので、すべてを共通化することは難しいでしょう。今後さらなる改善が望まれます。日々の情報共有とコミュニケーションを大切にしていきたいですね。

森實さん:

私は学生の頃、「臨床工学技士は機械を通して患者さんを診る」と教わったことがあります。

人を診るのはあくまで人であるはずですが、学校では患者さんの診方を教わっていません。臨床工学技士が患者さんやチームとコミュニケーションをとり多職種連携を進めるためには、このギャップを解決することも重要だと考えます。

これからの日本集中治療医学会学術集会に期待すること

髙木先生:

臨床工学技士の皆さんの目線で、今後の学術集会に期待することを教えてください。

八反丸さん:

若手の臨床工学技士の興味関心を惹くような企画やイベントがさらに増えれば、若手の参加者も増えてくるのではないかと思います。

梶原さん:

多職種で実際の医療現場を想定し、急変患者に対する知識や技術をレクチャーする急変時対応トレーニングなど、現場で実際に活かせるシミュレーション企画を学術集会でも取り入れていただきたいと考えます。

森實さん:

若手の臨床工学技士が参加したくなるような工夫をしていただきたいと考えます。

多くのことを学べる学術集会は、若手の臨床工学技士にとって役立つ学会だと感じています。ただ、若手の臨床工学技士が関心を抱くテーマと、学術集会で実際に行われるセッションの内容には差があるのかもしれません。ワークショップや一般演題に、より若手が魅力を感じるような企画を取り入れていただけることを期待します。

また、各演題の抄録の公表時期がもう少し早ければ、あらかじめ興味のあるセッションについて調べておくこともできるので、より多くの方が参加しやすくなるのではないでしょうか。

平山さん:

大学病院に赴任する前は、学術集会は自分にとって敷居が高いと思っていました。地方の小さな病院では一緒に参加できる方もほとんどいませんし、学術集会の場で知り合いに会うこともまずありません。かつての私のように、参加を踏みとどまっている地方勤務の臨床工学技士を、地域から引っ張ってくる作戦も必要ではないでしょうか。

平山さん

一人きりの参加はやはり憚られると思うので、経験者が一緒に学術集会に参加する仕組みがあると理想的です。疑問に感じたことを相談できて、一緒にセミナーや講演会をみて回れる相手がいれば、地方勤務の臨床工学技士もより参加しやすくなると考えます。

学術集会の参加で得られるもの―臨床工学技士へのメッセージ

髙木先生:

一言ずつメッセージをお願いいたします。

八反丸さん:

学術集会は、新しいことを知り、新しい情報を学べる場だと思っています。

繰り返しになりますが、学術集会に参加すると本当に多くの刺激を受けます。仕事に対する熱意が高まり、研究や実験をもっとしていきたいと思うことができます。また、普段ひとつの病院で勤務していると、別の病院に務める先生や臨床工学技士と知り合う機会はなかなかありませんが、学術集会では他施設の方々とも広く知り合えます。

梶原さん:

八反丸さんのおっしゃる通り、学術集会は集中治療の専門家から直接、新しい知識を学べる貴重な学会です。これだけ多くの医師や医療従事者が一堂に会する機会は滅多にないので、若手の臨床工学技士にも積極的に参加していただき、情報に触れてほしいと考えています。

森實さん:

学術集会は、他病院に所属する方から自分の研究について意見をもらえる場所です。自分の研究テーマと類似するテーマについて発表する臨床工学技士や、自分が疑問に思っていたことを研究して明確なデータとして示してくれる臨床工学技士に出会うこともあります。自分の研究について共有し、新しい知識と人に出会うことのできる場所として、学術集会の魅力が伝わればよいと考えます。何度も参加することで、毎年少しずつ知り合いが増えてくることも楽しみのひとつですね。学術集会が交流の場になっていると感じます。

平山さん:

学術集会に参加するたび、新しい発見や刺激、出会いがあります。私が感じたように、周囲の方々にもさまざまな世界があることを体感していただきたいと考えます。

また、学術集会で発表を行うプロセスは、ノンテクニカルスキルの向上にもつながると感じています。発表のための準備や研究は簡単な作業ではありませんが、一人ひとりの努力が、ひいてはよりよい集中治療をもたらすのだと伝えたいです。

相嶋一登理事から臨床工学技士の方々へのメッセージ

髙木先生:

最後に、臨床工学技士である日本集中治療医学会 相嶋一登理事からメッセージをお願いいたします。

相嶋理事

相嶋理事:

森實さんがおっしゃったように、かつて一部の学校では「臨床工学技士は機器を通して患者さんを診る」という教育が行われていることがありました。これは裏を返せば、臨床工学技士は患者さんに関わらない職種であると指導していたことになります。しかし、そのようなことはありません。臨床工学技士も患者さんに関わるべき重要な存在であり、医師や看護師などと同様、患者さんへ医療を提供する一員として、責任の一端を持つ覚悟が求められます。

患者さんへの責任を持つ覚悟を決めると、万が一治療がうまくいかなかったときに悔しい思いをするようになります。そして、再び悔しい思いをしないためにはどうすればよいかを考えるようになり、よりよい治療の探索や、過去の反省につながるのです。

疑問が生じれば、その疑問を解決しようとして学びが始まります。学術集会に参加して他者の発表やセミナーを聴講することで、疑問の答えがみつかれば、持ち帰った知識を現場で活かすことができます。

また、看護師など他職種の医療従事者と一緒に勉強する機会もあるので、お互いの理念を知るきっかけにもなると考えます。

臨床工学技士は裏方ではなく、患者さんに面と向き合う医療従事者のひとりです。医療従事者として、患者さんへの責任を持って医療に携わっていってください。

梶原さん、森實さん、八反丸さん、相嶋理事、平山さん
写真左側から、梶原さん、森實さん、八反丸さん、相嶋理事、平山さん

相嶋理事の締めくくりの言葉をもって座談会は終了しました。

 

第46回日本集中治療医学会学術集会については下記の記事も併せてご覧ください。

会長インタビュー「第46回日本集中治療医学会学術集会を終えて」

日本集中治療医学会学術集会レポート「会長講演と優秀論文賞講演・表彰式」

日本集中治療医学会広報委員会企画「初めての学術集会参加―若手看護師の場合」「密着!学術集会初参加の若手看護師の1日―受付から聴講まで」