医療法人警和会 大阪警察病院(以下、大阪警察病院)は、関西有数の商業地域である大阪市天王寺区に位置しています。大阪市都心南東部を広くカバーする中核的な病院であり、大阪府の三次救急医療機関、大阪府災害拠点病院、大阪府がん診療拠点病院などに指定されています。大阪警察病院の診療体制や特色などについて、病院長の越智隆弘先生にお話を伺いました。
大阪警察病院は、1937年に警察・消防職員を対象とする職域病院としてスタートしました。開設当初は標榜診療科数9・病床数230という規模でしたが、現在では標榜診療科数31・許可病床580と、地域の急性期医療を担う中核的な病院に発展しました(2019年8月時点)。
開設当初から、「心優しき全人的医療」を理念のひとつとして、常に病める方々の立場に寄り添いながら、安心と信頼をもたらす病院であれと心掛けてきました。それが、当院が80年あまりに渡って、天王寺区を中心とする地域住民の皆さんに選ばれてきた理由だと思います。
当院の診療体制は、31の診療科と12の医療センターで構成しています。当院が持つ急性期病院としての特色を十分に活かすため、各科の診療機能を12の医療センターに集約して、複数の診療科が連携しながら患者さんの症状に適した医療を提供しています。
当院は、三次救急対応の医療機関に指定されており、救命救急医療はER・救命救急センターを中心に運営しています。同センターでは、軽症の一次救急から集中治療室での入院治療を必要とする三次救急の患者さんを含め、24時間体制で可能な限り受け入れています。救急患者さんの受け入れは救急車をはじめ、ドクターヘリによる搬入にも対応するなど、地域のみならず周辺地域の救急患者さんにも対応できる体制を整備しています。
当院は災害拠点病院にも指定されており、DMAT(災害派遣医療チーム)を保有しています。DMATは、周辺地域だけでなく国内の被災地などに医療支援のために派遣することもあります。実際に2011年に発生した東日本大震災、2016年に発生した熊本地震にDMATを派遣し、被災地で医療支援や患者さんの搬送を行いました。
高度な専門医療を安定的に提供し、患者さんの満足度を高めることも、急性期病院としての重要な使命といえます。専門医療の提供を患者さんの満足度につなげるためには、病気の治療にとどまらず、患者さんの体の負担を軽減する低侵襲の治療を提供することが求められると思います。
急性期病院の使命を実現するため、当院では低侵襲な治療を積極的に行っています。具体的には、内視鏡を用いたがん手術、小切開心臓手術(MICS)、ステントグラフトを用いた大動脈瘤手術、経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)などです。
また、医療機器・設備に関しては、手術支援ロボット・ダヴィンチや、血管撮影装置・CT機能・手術支援機器を統合したハイブリッド手術室などを導入しています。これらの医療機器・設備には、出血が少なく傷の回復が早い、手術中に高出力の血管造影装置を同時並行で稼働できるので、手術部位の3次元画像をその場で確認しながら手術できるといった特徴があり、当院でも積極的に使用しているところです。
大阪府がん診療拠点病院である当院では、5大がん(肺がん・胃がん・肝がん・大腸がん・乳がん)を中心とした、がんの診療をしています。
当院では、診療科を横断したカンファレンスを実施して、腎機能に障害のある場合の抗がん剤治療などハイリスクながん症例にも適切に対応しています。病院付属の人間ドッククリニックと連携してがんの早期発見に力を入れるなど、総合的な診療体制でがんの根治にのぞんでいます。
地域医療支援病院である当院にとって、地域の医療機関と連携し、地域医療の質を向上させることは重要なプロジェクトの1つです。
当院の主要な機能は急性期・専門医療であることから、日常的なかかりつけ医療や回復期・慢性期の医療については、近隣の診療所や病院のご協力のもと、適切な機能分担を推進しています。
さらに、スムーズな連携を可能にするために地域医療連携センターでは、地域の医療機関や保健機関とも協力しながら、医療相談やセカンドオピニオンも実施しているので、ぜひご利用ください。
また、医師会の先生方とも、地域医療支援病院運営委員会や緩和ケア研修会、医療従事者公開講座などを通じて交流を深め、情報交換を密に行っています。
2017年9月に創立80周年を迎えた当院にとって、病院建物・施設の老朽化は解決すべき課題です。これまでは現在地から移動することなく改修を重ねてきましたが、提供する医療規模の拡大にともない、抜本的な解決策を取る必要が出てきました。
そこで当院は、NTT西日本大阪病院と交渉を重ね、事業譲渡を受ける形での合併を実現しました。2019年4月からNTT西日本大阪病院は第二大阪警察病院として生まれ変わり、二病院体制をスタートさせました。
NTT西日本大阪病院には、膠原病・リウマチ科、腎臓内科、血液内科など当院にはない診療科があり、地域の医療ニーズに応えてきました。このたびの合併によって外科系に強い当院の特徴との相乗効果が期待できます。
将来的には、第二大阪警察病院の敷地内に新たに新病院の建物を建設します。その建物で両院の診療を開始する見込みです。両院の医師および職員が手を携えながら研鑽を重ね、これまで以上に充実した地域医療を提供できるよう尽力してまいります。
新病院の移転工事が完成するまでの数年間はご不便をおかけしますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
当院は、創設当初から地域の皆さんが求める医療を提供してまいりました。合併を経て新たな組織に進化するにあたって、もう一度初心に返り、専門医療の充実だけでなく、患者さんに寄り添う心優しき全人的医療を提供できるよう、医師および職員一同さらなる研鑽を重ねていく所存です。
若手医師の皆さんは、自分の専門だけでなく、専門以外の領域についても、幅広い知識を習得してください。患者さんが満足できる医療を安定して提供するためには、専門分野だけでなく関連する周辺領域への理解も欠かせないからです。広い視野を持ち、常に患者さんの気持ちに寄り添いながら、温かい心で診療にのぞめる医師になってほしいと思います。
当院が急性期医療を担う病院としての役割を果たせるのも、地域の先生方の多大なバックアップがあるからこそです。相互扶助の精神のもと、地域に必要な医療を互いに循環させながら、今後もこれまで同様の協力関係を築いていければ幸いです。
医療法人警和会 理事長、大阪警察病院 院長、大阪大学 名誉教授、国立病院機構相模原病院 名誉院長
医療法人警和会 理事長、大阪警察病院 院長、大阪大学 名誉教授、国立病院機構相模原病院 名誉院長
日本整形外科学会 指導医・整形外科専門医
1966年に大阪大学医学部卒。医学博士。1990年から2004年まで大阪大学教授(環境医学、整形外科学、医工学治療学を歴任)を務め、1999年から2001年まで大阪大学医学部長に。現在は大阪大学名誉教授、国立病院機構相模原病院名誉院長、行岡病院骨関節センター長、大阪警察病院院長、医療法人警和会理事長に就任。
専門は整形外科学。特に、関節リウマチを主とする関節疾患の病態研究・臨床研究、外科手術支援ロボットを主とする医用機器開発研究の面で力を入れた。
学会活動では日本リウマチ学会理事長(1999年から2005年)、日本整形外科学会理事長 (2005年から2007年)、スポーツ関連では日本高等学校野球連盟副会長(2007年から2017年)を歴任した。
越智 隆弘 先生の所属医療機関
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