院長インタビュー

大阪医科大学附属病院が担う役割─地域医療に従事し、人間性豊かな医療人を育成

大阪医科大学附属病院が担う役割─地域医療に従事し、人間性豊かな医療人を育成
内山 和久 先生

大阪医科大学 一般・消化器外科学 教授、大阪医科大学附属病院 がん医療総合センター センター長...

内山 和久 先生

目次
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大阪医科大学附属病院は大阪府高槻市に位置しています。大学病院としての高度急性期医療、若手医師の教育に尽力しながら地域の市民病院的な役割も担い、地域の皆さんに親しまれている病院です。同院の特徴、若手医師の教育の場としての特徴を病院長の内山和久先生にお話を伺いました。

大阪医科大学附属病院 外観
大阪医科大学附属病院 中央手術棟 外観

当院は1930年に三島病院として開院し、地域の医療機関として安全で質の高い医療の提供を追求しながら、若手医師の教育の場としての側面も持っています。大学病院として高度急性期医療を提供するうえで常に新しい医療機器を取りそろえ、当院の手術を担う中央手術部では、CTハイブリッド手術室、アンギオハイブリッド手術室、バイオクリーン手術室、手術支援ロボット手術室(ダヴィンチ)を完備し緊急を要する手術にも対応できる体制を整えています。2018年6月には関西BNCT共同医療センターが開院しました。BNCT(ホウ素中性子補足療法)とはがん細胞にホウ素を取り込ませ、がん細胞を選択的に中性子にて破壊する画期的な治療法で、からだへの負担も少なく、QOLの向上が期待できます。BNCTは2019年10月現在で臨床研究段階の治療方法です。そのため、保険適応されていません。臨床研究にかかる費用は研究費より捻出されますが、それ以外の検査費用や入院費用などは患者さんの自己負担となります。

BNCTの対象疾患は、脳腫瘍頭頸部がん、肝臓がん、中皮腫、骨・軟部肉腫、皮膚がんなどです。治療後には脳が腫れる、正常組織への被ばくなどのリスクが皆無というわけではありません。また、中性子を照射する部分に含まれる腫瘍周囲の皮膚には脱毛や炎症を生じる可能性もあります。

治療が可能な疾患や費用は実施施設によって異なりますので、お気軽にお問い合わせください。

関西BNCT共同医療センター
関西BNCT共同医療センター

当院は特定機能病院をはじめ、さまざまな指定病院として機能しています。大阪府地域周産期母子医療センター、救急病院、地域がん診療連携拠点病院など、地域の高度急性期医療や周産期医療を担い、専門的な医療を提供しています。また、附設医療施設として、大阪医科大学健康科学クリニック、大阪医科大学三島南病院、大阪医科大学訪問看護ステーションを設置し、急性期から回復期、慢性期、在宅医療までを担う医療提供体制を整備し、地域医療の充実に貢献しています。さらに、がん医療総合センターを中心に先端がん治療にとくに力を注ぎ、2018年には全国で14施設ある地域がん診療連携拠点病院(高度型)の指定を受けました(2019年9月時点)。また、全国で15施設しかない小児がん拠点病院の認可を目指しています。2019年には、がんゲノム医療連携病院に指定されました。がんゲノム医療中核拠点病院と連携し、遺伝子パネル検査による診療や遺伝子カウンセリングの実施、がんゲノム医療に関する情報提供を行っています。

大阪医科大学附属病院
大阪医科大学附属病院

救急医療では、軽症の一次救急から入院治療の必要な二次救急の患者さんを受け入れています。三次救急については、近隣の大阪府三島救命救急センターが担っていますが、2022年開院予定の当院新本館A棟に大阪府三島救命救急センターの三次救急機能を移転する予定であり、今後は当院が一次救急から三次救急までを担うようになります(2019年10月時点)。

手術の様子

手術の様子

当院は、852床の病床を持つ大学病院として、31の診療科と14の中央部門を配し、高度急性期医療の提供に尽力するとともに市民病院的な役割を担い、地域の皆さんが安心して生活を送ることができるように努めています。また、当院の特徴の1つに立地のよさがあります。最寄り駅の阪急京都線高槻市駅からは徒歩3分、JR京都線高槻駅からも徒歩8分です。

化学療法センター、消化器内視鏡センター、周産期センター、血液浄化センターの4つのセンターがあります。この4つのセンターは各診療科から独立しており、診断・治療まで実施しています。

周産期センターでは、MFICU(母体胎児集中治療室)を6床、NICU(新生児集中治療室)を9床、GCU(新生児回復治療室)を6床備え、母子ともに健康で安全なお産になるように各部門のスタッフが常に連携をたもちながら、日頃から訓練されたチームワーク医療を行っております(2019年8月時点)。

化学療法センターや消化器内視鏡センターでの化学療法、早期治療では各診療科とも緊密な連携を取って診療にあたっています。

また、血液浄化センターでは、各診療科とも連携し、急性腎不全、末期腎不全の患者さんだけでなく自己免疫性疾患・肝疾患などに対する血漿交換療法など幅広い病気に対応できるようにしています。

当院では低侵襲(患者さんの体に負担の少ない)な治療に努めています。たとえば、消化器外科診療では、大腸がんをはじめ消化器疾患に対しては腹腔鏡手術を得意としており、状況によっては美容的見地から高い評価のある単孔式の腹腔鏡手術を実施しています。

また、2013年にはダヴィンチを導入し、より患者さんの体の負担に配慮した治療方法を提案できるようになりました。ダヴィンチ手術は消化器疾患、婦人科疾患、泌尿器疾患などに実施しています。

当院は災害拠点病院の指定を受けており、国内や地域で災害が発生した際に当院のDMAT(災害派遣医療チーム)を派遣し、被災地の医療的支援を行っています。実際に2016年4月に発生した熊本地震の被災地にDMATを派遣し、患者さんを搬送しました。

また、2018年7月の豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町に、当院からJMAT(日本医師会災害医療チーム)を派遣しました。大阪府や地域が被災した際には、大阪府三島救命救急センターと一体となって地域の災害拠点病院として、災害時にも地域の皆さんが安心できるように災害現場でのトリアージや仮設診療所での治療の訓練を実施しています。

大阪医科大学構内にある歴史資料館 外観

大阪医科大学構内にある歴史資料館 外観

大学病院におけるもう一つの重要な役割として医療人の育成があります。特に若手医師の育成である臨床研修では、主に3つのプログラムを用意しています。1つ目は卒後臨床研修プログラム、2つ目は卒後臨床研修小児科重点プログラム、3つ目は卒後臨床研修産婦人科重点プログラムです。どのプログラムでも臨床研修医にとって充実した内容とサポート体制を整えています。

臨床研修では複数の診療科をローテーションしながら経験を積んでいきます。そのなかで、困ったことがあればすぐに相談できる先輩医師の存在は臨床研修医の心のサポートにつながると考えています。当院の臨床研修プログラムはメンター制度、チームリーダー制度を備え、臨床研修医のメンタル面等のサポートも充実させています。

メンター制度では、臨床研修医が各診療科の指導医や上級医、または2年目の臨床研修医のなかからメンターを選びます。何か困ったことや心配なことがあれば、メンターを頼って実りある臨床研修にしてほしいと思います。

チームリーダー制度では、臨床研修医のなかから6名を選び臨床研修医からの要望や提案、当院からの情報共有や意見交換などのコミュニケーションを円滑に行うために、臨床研修医が中心となって調整してもらっています。さらに、臨床研修室長、総括指導医、医療総合研修センターのスタッフとともに、チームリーダー会議を実施して、臨床研修プログラムについてのブラッシュアップにつなげています。

救急医療部当直研修は、プライマリケアを十分に研修するための制度です。自身の専門分野を決める際には思い悩むことも多くあると思います。しかし、医師になると患者さんを総合的に診療する能力が求められることは少なくありません。当院では、救急医療のローテーションだけでなく、救急医療部を主体とした救急医療に特化した研修を行うことで、救急症例を数多く経験することができます。

医療技能シミュレーション室(以下、MSSC)では、医療技能の体得・向上のためにシミュレータを整備したトレーニングルームを設置しており、多くのトレーニングプログラムを体験できます。シミュレータで何度も練習することができるので、いざ患者さんを相手にしたときには、それまでの練習が自信につながると思います。

MSSCは地域の医療従事者の方々にも開放していますので、どうぞお問合せください。

卒後2年間の臨床研修は、その後の医師としてのあり方を方向付けるといえるほど極めて重要な期間です。当院の臨床研修では、臨床研修医の一人ひとりが充実した研修期間を送ることができるようにさまざまな制度を設けています。常に新しい設備を備えた環境で、豊富な経験を積んだ先輩医師が指導にあたります。皆さんが今後の日本の医療を担っていく医師になれるように、一人の先輩医師として応援しています。

病院新本館建替イメージ(鳥瞰図)
病院新本館建替イメージ(鳥瞰図)

当院は大学病院として、高度かつ専門的な医療の提供を目指すことはもちろんのこと、新しい医療技術の研究開発も行っています。

医療従事者を志す方におかれましては、豊富な経験と常に新しい設備を備えた当院で私たちと共に働きましょう。

患者さんにおかれましては、かかりつけ医からの紹介状があれば、よりスムーズに診察することができます。ご不明な点があれば、ご相談ください。

スタッフ一同、患者さんが安心して生活を送れるように尽力してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。