
めまいは日常的によくみられる症状のひとつです。疲れや寝不足から生じることもありますが、病気が原因で起こることもあります。
原因となる病気は耳や脳、精神的な病気など多岐にわたります。病気によっては、放置すると後遺症が残ることや命に関わる場合もあるため、めまいを軽く考えないようにしましょう。
では、どういった症状があるときにどの診療科を受診するのがよいのでしょうか。
病院の受診を検討するうえで注目すべきことは、めまいの程度、持続時間、伴う症状の種類です。
めまいの程度が強い場合や1時間以上続く場合、脳の症状(頭痛、首の痛み、片側の手足が動きにくい、半身の感覚がおかしい、物が二重に見える、ろれつが回らない、意識がもうろうとするなど)が伴う場合には、危険な病気が隠れていることがあります。
このような症状がみられたら直ちに病院を受診するようにしましょう。
上記以外であれば、数日以内に受診するようにしましょう。
症状が短時間(1分未満)のめまいのみなら、再度めまいが現れるか様子を見ることも選択できます。ただし、繰り返す場合には病院の受診を検討しましょう。
めまいの原因はさまざまで、原因によって受診に適した診療科が異なります。このとき重要になるのはめまい以外の症状の有無です。
耳鳴りや難聴、耳がつまった感じなどといった耳の症状を伴う場合は耳の病気が疑われるため、耳鼻科への受診が適切です。気持ちの落ち込みや、意欲の低下など精神的な症状を伴う場合には精神科を受診するのがよいでしょう。
あまり頻度は高くありませんが、脳の症状が伴う場合は特に注意が必要です。めまいを引き起こす脳の病気で代表的なものは脳卒中(脳出血か脳梗塞)です。脳卒中は時に命に関わることもあります。脳の病気を担当する診療科には、神経内科、脳神経外科、脳卒中科などがありますが、直ちに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶなどの対応も必要です。
そのほか、立ち眩みのようなめまい症状がある場合には心臓の病気が原因となっていることがあります。その場合は、心臓の病気を担当する診療科である循環器内科の受診が適切です。判断に迷ったら、最寄りの内科やかかりつけの病院で相談してみるのもよいでしょう。
病院を受診した後、一般的には“問診”と“検査”が行われ、それらの結果から治療方針が決定されます。
通常、受診後にまず行われるのが問診です。
問診とは、患者さんの病状(病気の状態)を判断するために医師が行う口頭質問のことで、めまいで病院を受診した際には、めまいがはじまった時期、めまいの性状(ぐるぐる回る、ふわふわするなど)、めまいの程度や持続時間、伴う症状、めまいの引き金(頭の位置を変える、頭をぶつけた、新しい薬をのみはじめたなど)などについて質問されるでしょう。そのため、事前に気になることをメモに残しておくとスムーズです。
めまいの症状があるときに行う検査には、音の聞こえ具合を調べる聴力検査、眼球の動きを観察する眼振検査、平衡機能が正しくはたらいているかを調べる平衡機能検査、X線やCT、MRIといった画像検査などさまざまなものがあります。
問診の内容に加えて、聴力に異常があるか、どのようなときに眼振(眼球がけいれんしたように動いたり揺れたりすること)が起こるか、平衡機能に異常があるかなどの検査結果からある程度病名を絞ることができます。
また、CTやMRIでは主に頭部を調べ、異常がある場合には脳の病気が疑われます。
めまいの症状に対しては薬を用いた治療が多く行われます。主に、以下のような薬が用いられています。
原因となっている病気によっては、薬以外での治療が行われる場合もあります。
代表的なものは、めまいを引き起こす病気でもっとも多い良性発作性頭位めまい症です。この病気は耳の奥の前庭にあるはずの耳石が三半規管に紛れ込むことでめまいが起こるため、頭を動かして耳石を正常な位置に戻す耳石置換法が行われることがあります。
また、脳の病気や、一部の耳から生じるめまいでは外科的な治療が必要になることもあります。
長期間にわたって続いているようなめまい症状に対してはめまい体操などのリハビリが有効です。
めまいを引き起こす原因は多岐にわたります。原因によっては早期治療が大切で、治療が遅れると後遺症が残ることや命に関わる場合もあります。軽いめまいでも繰り返す場合には一度、病院への受診を検討しましょう。
めまいの程度が強い、1時間以上続く、嘔吐がある、脳の症状を伴っている場合には、早急に受診するようにしましょう。
東京慈恵会医科大学附属病院 耳鼻咽喉科 助教
加藤 雄仁 先生の所属医療機関
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