めまいとは、“天井が回転するように感じて目が回る” “ふわふわと体が浮くような感覚がする”といった症状のことですが、ハッキリとした原因が分からないことも少なくありません。
ここではめまいの種類と原因、適切な診療科についてご紹介します。
“世界がぐるぐる回っている” “ふわふわする”と感じるように、めまいには主に2つのパターンがあります。ここでは代表的なめまいの種類をご紹介します。
めまいの中で一番多いのが、回転性のめまいです。“自分がぐるぐる回っている”“周辺がぐるぐる回っている”“自分も周辺もぐるぐる回っている”と感じます。また、回転性のめまいでは吐き気を催して実際に嘔吐してしまうほか、耳鳴りや難聴などを伴うこともあります。
回転性のめまいの原因は、三半規管など耳の中の平衡感覚を司る機能に生じた異常であることが多いといわれています。
“体がふわふわ浮いているような感じ”“車や船に酔ったときに似た感覚”“ゆらゆらと揺れ続けている気がする”ようなめまいは、浮動性や動揺性のめまいと呼ばれます。このタイプのめまいも、吐き気や頭痛を伴うことがあります。
浮動性や動揺性のめまいは、脳梗塞など脳に何らかのトラブルが生じているサインである場合もあります。このため、手足の麻痺やしびれ、言葉の障害を伴うこともあります。ふわふわと浮いているような感じがするめまいがある、またはめまいと一緒に手足の麻痺やしびれ、強い頭痛があるときは、早めに病院への受診を検討するのがよいでしょう。
めまいを起こす原因は複数あり、主に耳(内耳)、脳、首が原因となる3種類に分類することができます。
耳は外界の音を聞くだけでなく、体の平衡感覚を調整する器官でもあります。耳は外耳、中耳、内耳で構成されていますが、この内耳のバランスが崩れるとめまいが生じます。
内耳の前庭と呼ばれる部位にある耳石が剥がれて、三半規管に入り込むことで生じるめまいです。中高年以降の女性のめまいの多くは、BPPVといわれています。
起き上がった瞬間など、頭の位置が変わった際に非常に激しいめまいと吐き気を生じ、特定の方向を向くと症状が悪化するのが特徴です。
メニエール病は、1~6時間持続するめまいの発作を繰り返す疾患です。
回転性のめまいのほかに、耳の聞こえが悪くなったり、耳鳴りに悩まされるようになったりすることもあります。
風邪やインフルエンザなどで体内に侵入したウイルスが前庭神経へ到達して、炎症を起こすことがあります。これが前庭神経炎です。
前庭神経にダメージが加わると、平衡感覚などの情報伝達がうまくいかなくなるため、めまいが生じるようになります。
音を感じ取る内耳の細胞に何らかのダメージが加わることで起きる病気です。主な症状は突然の難聴や耳閉感(耳が詰まったような感覚)、耳鳴りですが、回転性のめまいを起こすこともあります。
細胞への血流障害やウイルス感染などが根本的な原因と考えられていますが、明確な発症メカニズムは解明されていません。一方で、睡眠不足や過度なストレスが溜まると発症しやすくなるといわれています。
聴神経は聴覚を司る蝸牛神経と平衡感覚を司る前庭神経があります。これらの神経に生じる神経鞘腫を総称し、聴神経鞘腫と呼びます。多くは良性ですが、神経にダメージを与えることで難聴や耳鳴り、めまいを起こすことがありますが、その程度はさまざまです。
脳そのもの、もしくは脳内の血管が異常を示してめまいを引き起こすことがあります。原因となる異常が脳のどこに生じたかによって、めまいの種類も変化します。
脳腫瘍が原因の場合、腫瘍が生じた部分によって生じるめまいが異なります。
脳腫瘍が進行するとダメージを受けた部位によって、次第に難聴や耳鳴り、頭痛、吐き気、麻痺などの症状も生じるようになります。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など、脳の血管の異常によって生じる病気のことを脳血管障害と呼びます。脳血管障害では、血管が切れる、詰まるなどの理由で十分な血液が行き渡らなくなることにより、脳にダメージが加わります。
平衡感覚を司る小脳や脳幹にダメージが生じるとめまいが生じるようになります。そのほかダメージを受けた部位によって意識障害や麻痺、強い頭痛や首の痛みが現れることもあります。
首の筋肉の緊張や、首に極端な負担がかかることでめまいを起こす場合があります。肩こりや頭重感(頭が重く感じる)を伴うこともありますが、筋肉の緊張が改善すれば自然とめまいもよくなっていきます。
頚部に負担がかかる原因としては、姿勢の悪さ、交通事故などによるむちうち、椎間板ヘルニアなどが挙げられます。
年齢を重ねることが、めまいの発生に少なからず影響を与えているともいわれています。これは、自律神経の調整機能や内耳や小脳などのはたらきが衰えると、血圧の調整や平衡感覚の処理がうまくいかなくなるためと考えられています。
服用している薬の副作用として、めまいが生じていることもあります。たとえば医師から処方される血圧を下げる降圧剤や鎮痛剤、抗パーキンソン病薬、精神安定剤、抗がん剤などはその代表例です。ほかに、市販の風邪薬もめまいの原因になることがあります。
こうした薬を服用してめまいが現れたときは、薬を処方した医師に相談するか、薬剤師に相談するようにしましょう。
検査してもめまいの原因がはっきりしないこともあります。特にこれといっためまいの原因が特定できないときには、ストレスから来る自律神経の乱れなども考える必要があります。
めまいというのは、それ自体が病気なのではなく、あくまでも病気の症状のひとつということがお分かりいただけたでしょうか。めまいの起こる原因によっては吐き気や頭痛といった症状も現れることがあります。
また、めまいの現れ方や症状によっては受診する診療科が異なってきます。ここでは、めまいの種類ごとの適切な診療科を解説します。
回転性のめまいがするとき、特に耳鳴りや難聴など聴力に難があるときや閉塞感を感じるときは、平衡感覚を司る内耳の異常が考えられるため、耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。
浮遊性や動揺性のめまいや、物が二重に見える、呂律が回らない、手足がしびれたり思うように動かせなかったりするときは、脳にトラブルが発生している可能性があります。
場合によっては一刻を争うこともあるため、症状が強い場合には急ぎの受診を検討しましょう。
整形外科の診療対象は運動器官を構成する組織全般のため、骨、軟骨、筋肉、靭帯、神経と多岐にわたります。
肩のコリや頭重感を伴うめまいは、頚椎椎間板ヘルニアなど首の筋肉の緊張を引き起こす病気が原因であることがあります。骨格や筋、神経について診てもらう必要があるため、整形外科の受診を検討するといいでしょう。
東京慈恵会医科大学附属病院 耳鼻咽喉科 助教
加藤 雄仁 先生の所属医療機関
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