医療法人社団全仁会 東都春日部病院(以下、東都春日部病院)は1998年、埼玉県越谷市で越谷北病院として開業しました。2015年に春日部市に新築移転してからも変わらず、地域に根ざし診療にあたってきました。“いつでも信頼され安心して利用できる病院を目指す”という理念の下、急性期から慢性期まで総合的な医療サービスの提供に尽力しています。
同院の院長である木村 理先生に、診療体制や特徴的な取り組みについてお話を伺いました。
当院は、二次救急指定病院として救急患者さんの受け入れを行っています。患者さんがいらしたら、すぐにCTやMRIなどの検査によって診断を行うことができる体制を築いています。重症度が高い場合は、救急車で連携病院である獨協医科大学埼玉医療センターへと転院していただき、手術などの治療を終えた後に当院に戻りリハビリテーションを受けていただくことも可能です。
当院は一般病床のほか、療養病床を設置し、さまざまな病気に対応しています。たとえば、アルツハイマー型認知症などの病気だけでなく、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)など脳神経系の指定難病の患者さんを受け入れる体制も整えています。また、透析室を設け、慢性腎不全の患者さんに対する人工透析を行っています。
他院で専門医の診察を受けた後、地元での療養を希望される患者さんにもできる限り対応したいと考えていますので、ぜひご相談ください。
私は日本消化器外科学会の第14代学会会長を務め、2019年には名誉会長職を拝命しました。また、日本消化器外科学会認定消化器外科専門医でもあるため、当院では消化器外科の診療に特に力を入れています。
私が専門としている膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、膵臓にできる腫瘍の一種です。当院では、IPMNの治療経験のある医師が中心となり、良性か悪性かを慎重に見極め、手術を行うべきかどうか検討します。患者さん一人ひとりの状態を確認し共に治療について考えながら、この病気の治療に尽力しています。
高齢化率の高い春日部市では、慢性疾患の患者さんが少なくありません。さらに、階段での転倒などによって骨折された患者さんも多く受診されます。当院では、高齢の患者さんに多い一般的な病気の診療はもちろんのこと、骨折の治療にも迅速に対応する体制を築いています。
当院では、患者さんの栄養管理にも注力しています。医師や看護師のみならず管理栄養士を含むチームで、それぞれの患者さんの栄養について議論しながら治療にあたっています。
私は、当院は“機能的な病院”であると自負しています。たとえば、救急や脳神経外科など、さまざまな診療科でCT・MRIによる検査を実施しています。こうした検査機器によって“血管のどこが詰まっているか”“転倒した患者さんの脳内に血腫はないか”といった情報を再構築することができるため、適切な治療につながります。また、当院では、必要な患者さんに迅速に検査を受けていただくために、できる限り外来予約で数か月先まで埋まっている、という状況を作らないようにしています。
当院では、糖尿病教室や敬老の日に合わせた余興・演奏会など、さまざまなイベントを開催しています。これらのイベントには、入院中の患者さんだけでなく地域の方にもお越しいただき、参加された皆さんにご好評をいただいています。
当院は大規模な病院ではないからこそ、毎日のように全てのスタッフと顔を合わせることができる点が特長のひとつであると思います。患者さんの情報や治療方針は電子カルテをスタッフ皆で共有し、どのような対応が最適かを常に議論しながら診療に取り組んでいます。
当院のスタッフはそれぞれ職業意識や使命感にあふれており、“何が患者さんのためになるか”を常に考えてくれています。日々の議論を通じて、多職種のスタッフたちが互いの能力を磨き上げる体制ができていると思います。
“お腹が痛い”“下痢をしている”など身近な症状から始まる消化器外科は、病気の初期の段階から関わることができる分野です。また、学問としても、非常に興味深い領域だと思っています。
外科医という職種に、“つらい”“割に合わない”という印象を抱く方もいらっしゃるかもしれません。しかし、消化器外科は内科医と連携しながら取り組める診療科目ですし、当院では常勤医師と非常勤医師の役割分担を重視しているので、ワーク・ライフ・バランスの取れた生活を送っていただけるはずです。
外科手術は特に、丁寧できちんとした性格の方が向いていると思います。女性外科医のキャリアパスについては日本消化器外科学会など各種学会でも検討されていますので、女性も含め、若い先生方にぜひ消化器外科医を志していただければ嬉しいです。
2020年1月15日、中国武漢で発生した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の日本国内初の感染者が確認されました。それからの日本国内および世界の混乱は現在皆さんが目の当たりにしている通りです(2020年4月時点)。私は発生の翌日2020年1月16日には、すぐに病院長として対策に取り組み始めました。
まず、患者さんに向けて、武漢から帰国された場合には申告していただき対応することなどを記した自筆のポスターを院内10数か所に掲げました。さらに、2020年1月17日には臨時感染対策会議を開き“埼玉県東部地域の空中にも新型コロナウイルスが浮かんでいる状態”を想定した対応をスタッフに促しました。それまで毎朝開いていた看護部長、事務長、事務次長との執行部会議では、新型コロナウイルス感染症の対応策を検討し、日々刻々と変わる状況に対応するよう努めたのです。
2020年1月27日、2020年2月2日にはスタッフ全員を大会議室に集めて現状と対応、心構えについて呼びかけました。2020年1月30日には当院で初めて発生した新型コロナウイルス感染症が疑われる患者さんに対して、救急隔離導線の確認とCT、ガウンテクニック(感染が起こらないようガウンやマスクを適切に着脱すること)を用いた感染対策を実際に施行いたしました。
その後、2020年2月初旬に起こったダイヤモンドプリンセス号での感染拡大、2020年3月2日からの全国小中学校・高校の休校、2020年4月7日の非常事態宣言の発令など事態は深刻化しています。
当院の新型コロナウイルス感染症対策は、初動としては十分な対応だったと思っています。病院長として危機に対する敏感なアンテナを持ち、それをスタッフに素早く伝えて情報を共有し、対策を日々更新してきました。私は、上に立つ者が自分の言葉で語りかけることは、組織を率いていくリーダーとして非常に重要なことであると考えています。“大切なスタッフを守ること”を念頭に置いて、たとえ同じような内容でも繰り返し語りかけていくことが重要であると信じています。
毎月初めに行われる昼礼では、スタッフ全員に病院長訓示を行っています。2020年4月6日の昼礼には、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)を取り入れ、スタッフ間の距離を確保するためにこれまで行われてきた会議室だけではなく外来通路スペースを合わせて利用しました。
このように当院では、大切な患者さん、スタッフを守るため、日々新型コロナウイルスと戦っています(2020年4月時点)。
当院のスタッフの職業意識の高さには、本当に頭が下がる思いです。特に、コメディカルと医師の結びつきは非常に有機的であると感じています。その結びつきは、当院の大きな魅力のひとつです。これをますます磨き上げ、これからも地域の皆さんに有益な医療サービスを提供していけたらと思います。
当院では、地域の皆さんのご期待に応えることができるよう、スタッフ一丸となって努力を続けていきます。現在は、風邪や胃腸炎をはじめとした一般的な病気の患者さんに多く受診していただいています。将来的には、CTやMRIをさらに生かし、より高度な医療においても頼っていただける病院になりたいと思っています。
医療法人社団全仁会 東都春日部病院 病院長、山形大学 名誉教授、学校法人青淵学園 東都大学 臨床教授
医療法人社団全仁会 東都春日部病院 病院長、山形大学 名誉教授、学校法人青淵学園 東都大学 臨床教授
日本外科学会 特別会員日本消化器病学会 名誉会員・功労会員日本肝胆膵外科学会 名誉会員・肝胆膵外科高度技能指導医日本臨床栄養代謝学会 名誉会員・認定医・終身認定医日本胆道学会 名誉会員・認定指導医日本老年医学会 老年科指導医・老年科専門医・特別会員日本消化器外科学会 名誉会長・名誉会員・消化器外科専門医日本膵臓学会 名誉会員日本外科代謝栄養学会 特別会員・教育指導医日本消化管学会 胃腸科指導医・胃腸科専門医日本成人病(生活習慣病)学会 認定管理指導医日本腹部救急医学会 特別会員・腹部救急教育医・腹部救急認定医日本消化器画像診断研究会 名誉会員手術手技研究会 特別会員日本神経内分泌腫瘍研究会 理事日本外科病理学会 名誉理事長日本高齢消化器病学会 名誉会員
1979年より消化器外科・乳腺甲状腺・一般外科医師としてキャリアをはじめる。1998年には山形大学第一外科学講座 主任教授に就任。膵臓手術のオピニオンリーダーとして、臨床・研究ともに日本をリードしており、2008年からは日本消化器外科学会理事に就任.2019年名誉会長・名誉会員に推戴された。2017年には、著書「木村理 膵臓病の外科学、南江堂、2017年」を上梓した。
木村 理 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。