院長インタビュー

一般小児から重症心身障害児(者)のサポートまで行う、あしかがの森足利病院

一般小児から重症心身障害児(者)のサポートまで行う、あしかがの森足利病院
藤田 之彦 先生

保健医療・福祉施設あしかがの森 あしかがの森足利病院 院長

藤田 之彦 先生

目次
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保健医療・福祉施設あしかがの森 あしかがの森足利病院(以下、あしかがの森足利病院)は、身近な子どもの病気に対する診療に加えて、てんかんなどの神経疾患、神経発達症(発達障害)、重症心身障害児(者)への医療と福祉などを提供する病院です。また、地域の方々の内科や皮膚科、整形外科の診療を行っています。医療・介護・福祉を一体的に担い、地域の方々の健康を支えるとともに、職員の働きやすい環境づくりにも積極的に取り組んでこられました。

今回は、同院の院長である藤田(ふじた) 之彦(ゆきひこ)先生に、同院の特徴や取り組み、職員に対するサポートなどについて、お話を伺いました。

あしかがの森足利病院 外観
あしかがの森足利病院 外観

当院は元々、県立の結核療養所として開院し、その後は国立療養所のひとつとして新たなスタートを切っています。

戦後には、結核の患者さんが減少し、国立療養所の需要が落ち着いてきたことから、当院は重症心身障害児病棟(重心病棟)を設けることになりました。肢体不自由や知的障害など複数の病気を合併する重複障害の患者さんを診療できる施設が求められていたためです。

そして、国の政策により病院の統廃合が進むなか、当院は国立病院から民間の“社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会”に移譲されました。

現在は、重症心身障害児(者)の方々に対する医療と福祉の提供を引き続き行うとともに、一般の内科・小児科等の患者さんにも対応しています(2019年10月時点)。

当院は、小児科、内科、整形外科などを有しています。そのなかでも、特徴的な診療体制についてご説明します。

当院には、日本小児神経学会が認定する小児神経専門医や、日本てんかん学会が認定するてんかん専門医の資格を持つ医師が複数在籍し、さまざまな神経疾患の診療にあたっています。近年、神経発達症(発達障害)の患者さんが増えているなか、当院も発達障害に対する診療が可能な施設のひとつとして、患者さんに寄り添った診療を心がけています。患者さんは、栃木県をはじめ近隣の群馬県、埼玉県、東京都などからも受診されています。

当院では、 “朝起きられず学校に行けない”といった症状が見られる起立性調節障害の診療にも対応しています。私自身、起立性調節障害は大学で研究してきた分野であり、『小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン』の作成にも従事したことから、当院においても診療体制の整備に力を入れてきました。NIRS(近赤外分光法)と非観血的連続血圧計を用いた起立試験などを行い、患者さんの状態を適切に把握するよう努めています。子どもの心の問題にも対応しております。

当院の皮膚科は、一般的な皮膚の病気に対する診療を行っており、日本皮膚科学会が認める皮膚科専門医も在籍しています。重症心身障害児(者)の方々は、寝たきりの状態で過ごす時間が長いことから、皮膚が圧迫されて起こる褥瘡(じょくそう)などの皮膚疾患にかかりやすくなります。重症心身障害における皮膚科診療に対する需要が高いなか、皮膚疾患をしっかりとケアできることが強みです。地域の一般の方の診療も行っています。

当院では、医師、看護師、リハビリテーションスタッフなどが、重症心身障害児(者)に対する“個別支援計画”を作成しています。各職種の視点で、それぞれの分野の目標や達成度を検討し、今後の治療や療育の内容を決定していきます。このために、定期的な評価会議を多職種により実施しています。たとえば、栄養科やリハビリテーションスタッフは、障害を持つ方が経管栄養を利用する場合の対応や、経口で栄養を取るための課題、摂食指導などについて検討し、資料を作成します。半年に1回は個別支援計画のリニューアルを行っており、ご家族にもお伝えして、冊子にまとめたものをお渡ししています。

当院は、重度心身障害を持つ患者さんが18歳を超えた後も、 “児者一貫”の体制で入所を継続することが可能です。児者一貫体制とは、障害を持つ子どもも成人も、一つの施設で継続して診療可能な体制を確保すべきだという、国の政策です。

児者一貫した支援を行っている当院では、高齢の患者さんも元気で入所を続けております。その理由として、医療内容や医療機器が進歩したことに加えて、病院の生活環境が良好だということが挙げられるのではないかと思います。病棟では、管理栄養士が食事を全て管理しているため、栄養バランスの整った食生活になりますし、定期的な採血などの検査も欠かさず行っています。

当院のスタッフは、入所者さんたちに寄り添った対応を心がけています。落ち着いた環境のなかで、安心して生活していただければと思っています。

あしかがの森足利病院の医師たちと
あしかがの森足利病院の医師たちと

当院では、仕事と子育てを両立する職員や、働きながら勉強を続ける職員をサポートするため、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。女性の医師のなかには、当院に赴任した後、専門医の資格を取得した方もいます。

ライフステージの変化のなかでなかなか仕事と育児が両立できる仕事場が見つからない方や、勤めているなかで勉強を諦めている方もいるかもしれません。しかし、院長としては、皆さんの要望に応じてサポートを提供し、勉強や仕事を頑張って続けてもらいたいと考えています。当院では、子育ての支援だけでなく、医師の学会活動や論文を執筆する機会など、チャレンジできる環境を提供するよう努めているため、働きながらぜひ成長し続けていってほしいと思います。

先生

当院の入院施設は、内科と小児科の混合病棟で、重症心身障害児(者)の医療やケアを主体とし、一般の内科・小児科から神経難病まで対応しています。外来では、障害を持つ患者さんをはじめ、地域の方々の診療や健康管理を行うとともに、より充実した生活を送っていただけるような支援に努めています。

また、当院には小児科の医師が複数在籍しており、一般小児の診療に注力してきました。発熱などの軽い症状でも、ぜひ、お気軽に受診していただければと思います。

若手の小児科医の皆さんは、まずは一般小児科で、ジェネラリストとして活躍してほしいと思います。それに加えてサブスペシャリティとして、当院のように専門的な医療やケアを提供する施設で診療することも大事だと思います。

当院が診療を行っている子どもたちのなかでも、たとえば発達障害の患者さんは、成長に伴って、心の問題という二次障害が現れてくるものです。起立性調節障害を持つ場合を例に挙げると、朝起きられず学校に遅刻して、友達や先生などから「どうして来なかったの」、「サボってはいけないよ」などと声をかけられるうちに、居場所を失い、不登校につながる可能性があります。

このような、心に問題を抱える子どもたちの状況は、周囲からは理解してもらいにくいものです。そのために孤独を感じたり、居場所を失ったりする子どもたちがたくさんいます。若い先生方は、ぜひ、こうした子どもたちの心の問題にも寄り添える医師を目指してください。

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  • 保健医療・福祉施設あしかがの森 あしかがの森足利病院 院長

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