院長インタビュー

“歯科と医科の連携”を実現する松本歯科大学病院

“歯科と医科の連携”を実現する松本歯科大学病院
前島 信也 先生

松本歯科大学病院 病院長

前島 信也 先生

目次
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長野県・塩尻市に位置する松本歯科大学病院では、歯科診療部とともに医科診療部を設けています。歯科と医科の連携体制を実現しながら、さまざまな患者さんを受け入れています。また、口腔疾患をはじめとする病気の予防にも力を入れています。

地域に開かれた病院として、イベントや普及活動にも取り組む同病院。今回は、病院長の前島(まえじま) 信也(しんや)先生に、松本歯科大学病院の診療体制や取り組みについてお話をしていただきました。

当院は松本歯科大学に附属する病院として、1972年に開設されました。以来、地域の歯科医療を牽引する病院として、診療とともに、研究・教育・研修にも取り組んできました。

2008年には新病院としてリニューアルオープン。新病院では、歯科診療部とともに、さまざまな歯科専門外来や、予防のための健診システムを導入しています。また、内科、眼科、耳鼻いんこう科、整形外科、皮膚科などの医科診療部を新たに開設しました。基本方針である“やさしく、安全、親切で、確かな医療”をモットーに、歯科と医科が連携しながら、地域の皆さんへ総合的な医療サービスを提供するよう努めています。

松本歯科大学病院の外観
松本歯科大学病院の外観

さらに、当院では、スムーズに診療を受けていただける体制を築いています。たとえば、手術のための施設やCT・MRIなどの検査装置をはじめ、さまざまな医療設備が整備されています。また、電子化を進めており、ATMのような機械で自動支払いも可能です。

松本歯科大学病院の内観
松本歯科大学病院の内観

当院は大学に附属する病院なので、教育・研修にも力を入れてきました。“歯科医療人である前によき社会人であれ”という大学創設者の言葉の通り、人間性を重視した教育を行っています。また、松本歯科大学には総合歯科医学研究所を設けており、基礎研究にも従事できる環境があります。

なぜ歯科と医科の連携が大切なの?

広く知られているように、近年は少子高齢化が進行しています。実際に、当院を受診される患者さんにも高齢の方が多くいらっしゃいます。高齢の患者さんは、複数の病気を抱えていることが多いため、口腔局所だけでなく全身的な対処も重要になります。たとえば、歯の治療だけではなく、ほかの合併している病気を一緒に治療したり、常服薬の調整や中止をしたりするケースがあるのです。

そのような患者さんを総合的に診療することができるよう、当院では歯科と医科の連携体制を構築しました。

当院では、歯科と医科が連携を図りながら、治療に取り組んでいます。ここでは、代表的な三つの部門をご紹介します。

歯科と医科が連携しながら誤嚥性肺炎の予防や治療、さらに治療後のリハビリテーション(以下、リハビリ)に尽力しています。摂食嚥下機能リハビリテーションセンターでは、食べ物をうまく飲み込むことができるか検査を行ったり、飲み込むトレーニングなどのリハビリを実施したりしています。

保健予防活動にも取り組んでいます。健診センターで行っている人間ドックでは、歯科医師による口腔内診査を標準で行っています。たとえば、歯周病は、糖尿病動脈硬化系疾患と関連があると考えられています。これらの病気を予防するためにも、口腔内を清潔に保っていただけるよう努めています。また、健康づくりセンターでは通常の運動指導だけでなく、高齢者のフレイル*予防を行っています。

フレイル:加齢によって心身が衰えた状態

当院の細胞・再生医療センターでは、細胞・再生医療に関わる研究をサポートしています。当センターの支援のもと、臨床研究が実施されています(2020年4月時点)。

歯科診療部は、12の診療科を設け、虫歯や歯周病などの一般的な病気に加えて、複数の科が連携しながらさまざまな治療に取り組んでいます。たとえば、インプラント治療では、口腔外科、口腔インプラント科、矯正歯科などが連携し、カンファレンスを行いながら治療を進めていく場合があります。

手術の様子
手術の様子

ほかにも、歯科診療部では、さまざまな取り組みを行っています。たとえば、スポーツ歯科には一般社団法人日本スポーツ歯科医学会の認定医が在籍し、顎・顔面・口腔領域の外傷の予防に取り組んでいます。また、地域連携歯科では、障がいのある患者さんや高齢の患者さんの訪問診療にも力を注いでいます。

歯科診療部には、長野県歯科インプラントネットワークという組織の代表を務める医師がおり、安心・安全なインプラント治療を行うことができるよう活動しています。

当院の医科診療部には、内科、眼科、耳鼻いんこう科、皮膚科、整形外科を設けています。歯科診療部同様、それぞれの科が連携しながらさまざまな治療に取り組んでいます。

診療の様子
診療の様子

内科では、主に一般診療や病気の予防に取り組んでいます。また、睡眠時無呼吸外来を設けており、歯科と連携しながら、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに対して、軽症ではマウスピースを用いた治療などを行っています。

眼科では、4名の日本眼科学会認定専門医が中心となり、白内障の治療とともに網膜剥離など緊急の治療を必要とする患者さんも受け入れています(2020年4月時点)。

また、耳鼻いんこう科では涙道外来を設け、眼科と連携しながら、涙の通り道である涙道(るいどう)の閉塞を手術によって改善する涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)にも取り組んでいます。

入院病棟の個室
入院病棟の個室

当院では、地域との交流を大切にしています。たとえば、前述の健康づくりセンターは、広く地域の方にご利用いただいています。また、市民公開講座や観桜会などのイベントを毎年開催しています。

ほかにも“よく噛んでおいしく健康に”というテーマを掲げ“カムカム(噛む噛む)メニュー”の普及活動を行っています。噛むことを意識するようなメニューを広く公募し、審査を行ったうえで表彰しています。中学生や高校生から大人までご参加いただきご好評をいただいています。

健康づくりセンター
健康づくりセンター

進行する高齢化とともに、歯科医が果たすべき役割は変化してきていると思っています。歯科医の皆さんには、口腔機能の改善や維持、さらに口腔疾患の重症化予防に努めていただきたいと考えています。

高齢の方の増加に伴って、口腔ケアは今後さらに重要になるでしょう。医科の先生たちにも、歯科と連携しながら診療を展開してほしいと思います。

先生

お話ししたように、当院では医科と歯科の専門外来の充実とともに、歯科部門では予防のための口腔ケアにも力を入れています。医科部門では、内科をはじめ、眼科や耳鼻いんこう科などを設けています。脳神経外科が扱うような病気を除き、口腔を中心として主に首から上に生じる病気に関しては、対応できるスタッフが充実しています。大学病院ということで敷居が高いと思われることもありますが、そんなことはありません。何かあったときにはすぐに頼っていただける病院として、地域の皆さんのご利用をお待ちしています。

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