院長インタビュー

次世代の歯科医を育てる明海大学歯学部付属明海大学病院

次世代の歯科医を育てる明海大学歯学部付属明海大学病院
大川 周治 先生

明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野 教授

大川 周治 先生

目次
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明海大学歯学部付属明海大学病院(以下、明海大学病院)は、埼玉県唯一の歯学部を持つ明海大学の付属病院として、地域住民の皆さんの診療にあたってきました。同院は、2020年に創立50周年を迎えます。患者さんのさまざまな症状に対応するために、歯科に加えて内科・眼科・耳鼻咽喉科の専門外来も備え、安心・安全な医療サービスを提供するために努めてきました。

同院の前病院長である大川(おおかわ) 周治(しゅうじ)先生に、明海大学病院における歯科治療の現在と未来、歯科医師生涯研修など充実の教育カリキュラムについてお話を伺いました。

当院は1970年、城西歯科大学(現・明海大学)の付属病院として開業しました。1979年には明海大学PDI埼玉歯科診療所を、2004年には明海大学PDI東京歯科診療所を、そして2005年には明海大学PDI浦安歯科診療所を開設し、最新の技術や設備を取り入れながら安全な医療をお届けしようと努めてきました。

この半世紀の間に社会を取り巻く環境の変化や、歯科、医科の医療技術の進化には目を見張るものがあります。当院ではより多彩な角度からの診療・診断を行うために口腔診断科、口腔保健科、小児歯科、歯周病科、歯科口腔外科、歯科補綴(ほてつ)科など13の科を持つ歯科専門外来を設けています。さらに、医科専門外来として内科・眼科・耳鼻咽喉科を備え、歯科と医科が互いに連携がとれる体制を築いています。

歯科と医科は緊密に連携をとらなければならないと考えています。たとえば、骨粗しょう症の患者さんが飲む薬の副作用によって顎の骨に炎症が起こり、何らかの歯科治療がきっかけとなり顎骨壊死を起こす場合があります。このようなリスクを考慮し、歯科治療を行う際には、歯科領域以外で患者さんがかかっている病気(高血圧症心不全脳卒中糖尿病など)や服用している薬について把握しなければならないと考えています。当院では、院内はもちろんのこと、院外の病院ともコミュニケーションをとりながら歯科と医科の連携に努めています。

明海大学病院の外観
明海大学病院の外観

当院では、歯科と医科の連携を密にし、患者さんに常に高度な先進医療をご提供できるよう心がけています。一般的な歯科治療のほかに、さまざまな専門外来を設けています。たとえば、成長期のお子さんの歯並びが気になったときは小児歯科を受診いただけば、嚙み合わせや生え代わりの時期を見極め、永久歯の生える場所を確保しつつ、嚙み合わせを整えるトータルな治療が可能です。また、顎関節症の患者さんや、スポーツ選手、口臭に悩む患者さんなど、さまざまな方のご相談に対応しています。

ほかにも、精神的障害や知的障害のある患者さん、そして飲み込む機能に障害がある患者さんのために障がい者歯科と摂食嚥下科による“障害者・地域医療連携センター”が用意されています。

地域医療に貢献しつつ、日進月歩の歯科医療の世界で当院のスタッフも日々進化し、皆さんのお役に立ちたいと考えています。

特別診療室
特別診療室

2020年より4月12日は“補綴の日”と認定されています*。補綴とは、歯や歯の一部が失われた場合に、人工物で補う治療法のことです。これは歯科の基本的かつ重要な技術で、当院はこの補綴を重視しています。たとえば、インプラント、部分入れ歯や総入れ歯も補綴にあたります。

歯科補綴科診療室
歯科補綴科診療室

この繊細な技術に磨きをかけることで“食べる力”をサポートし、健康寿命の維持向上に尽力しています。2005年からは専門医制度も発足しているこの補綴技術をさらに向上させ、その治療に使う新しい材料や技術の開発研究にも、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

*一般社団法人 日本記念日協会によって認定されている。4(フォー)10(テン)2(ツー)で“フォーテンツー”→“ホテツ”の語呂合わせから。

これまでの日本では歯学部を卒業した後、体系的に歯学を学ぶ場所がありませんでした。一歯科医として生涯学び続ける大切さを痛感している我々としては、それを見逃すことはできません。そこで、1999年、本学は明海大学・朝日大学歯学部生涯研修部を設置いたしました。

これは大学が企画、運営し、他大学にも門戸を開いているという点が特徴です。最新の歯科理論・技術を学べる生涯研修プログラムを歯科医師、学生に向けて提供しています。受講生は豊富な講座で歯科にまつわる領域を広く学び、受講後も最新医療へアプローチするサポートを受けることができます。進歩の早い現代の歯科医療に携わる方々にとって、心強い存在となっていると自負しています。

常に研鑽を怠らず、患者さんの期待に応える“進化し続ける歯科医師の証”として、日本初の“歯科総合医”認定医制度を制定しました。三つの称号を段階的に取得できるプログラムを整備しています。

この制度は、患者さんの“よい歯科医に診てもらいたい”というニーズに応えるもので、患者さんが安心して医療が受けられるよう、我が国の歯科医師の質の向上に貢献することが目的です。この認定によって、大学が生涯を通じてその歯科医師の歯科総合医としての質を保証し、社会に貢献する人材であることを証明します。

これからの歯科医療は患者さんとの充分なコミュニケーションの下に行われなくてはならないと痛感しています。歯科医学の進歩や材料の革新によって、技術は発展し続けているうえ、患者さんの医療に対する思いも多様化しているからです。患者さんの声に真摯に耳を傾け、適切な診療計画をつくり、一人ひとりに目を向けて医療にあたることが大切です。

歯科医師臨床研修は、そういった歯科医師が生涯学ぶべきことの第一歩として位置づけられています。また2014年度から、明海大学歯学部・朝日大学歯学部生涯研修部のベーシックプログラムの受講も修了の条件とし、研修のさらなる充実を図っています。

歯科医師臨床研修センター
歯科医師臨床研修センター

先生

当院は地域に密着した病院として、安心・安全で、さらに質の高い医療を提供できるよう努めています。これまでにお話ししてきましたように、私たちはそのために、さまざまな試みに全力で取り組んでいます。進行する高齢化とともに、当院が果たすべき役割も変化していくと考えています。今後も、率先して歯科の診療ルールをつくるよう努め、地域の皆さんがより安心して診療を受けられる体制を強化していきます。

お話ししましたように、当院は歯科医師の育成にも力を入れています。常に一歯科医または一医療従事者として研鑽を怠らず、「何のために自分は仕事をしているのか」を真剣に考えてほしいと思います。当院は、医科とも連携して幅広い歯科医療を展開しています。“社会性・創造性・合理性を身につけ、広く国際未来社会で活躍し得る有為な人材の育成をめざす”という明海大学の建学の精神の下、自分のためでなく、人のために仕事をする意識を持ち、技術の向上や知識の獲得に努めてほしいと思います。

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  • 明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野 教授

    大川 周治 先生

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