医療法人恵愛会 恵愛病院(以下、恵愛病院)は、前身の“つるせ産婦人科”の開設以来、埼玉県を中心に何人もの赤ちゃんを取り上げ、子どもの成育を見守ってきました。
子育ての環境が大きく変化し、妊娠や出産に関わる医療も発展し続けているなか、産科、小児科の専門病院として新しい命にどう関わっていくのか、同院の理事長と院長を兼任されている林 隆先生にお話を伺いました。
当院の前身は1971年に開設された“つるせ産婦人科”です。私の父が始めたクリニックで、その後、規模が大きくなり一時期は内科や外科もしていたのですが、2004年に現在の場所に移転したのを機に産科と小児科に特化した病院となりました。
病院名も変わり、移転もしましたが、一貫してお産を中心とした医療を行い、地域に貢献してきたと自負しています。
お産では無痛分娩にも対応しながら、妊婦さんが安心して出産できるよう、医療面はもちろん、施設やサービスの面でも充実を図っています。また、赤ちゃんが生まれた後も、健やかな成長を見守ることができるよう小児科外来も設けています。
また、不妊治療にも対応できるよう、2011年に生殖医療センターを開設しました。現在は恵愛生殖医療医院(埼玉県和光市)として独立し、妊娠についての相談や治療にあたっています。
産婦人科から小児科まで、女性の健康から妊娠、子育てをトータルにサポートできる体制を目指しています。
産科に特化した病院ですから、緊急の事態にも対応できるよう心がけています。ときには母子ともに命に関わるような症状に対応しなければならないこともありますから、分娩室と手術室は近くに配置しています。
この十数年で無痛分娩を選択する方も増えてきました。無痛分娩とは麻酔を用いて陣痛を和らげる出産方法ですが、当院では背中の脊髄付近から局所麻酔薬などを投与します。無痛分娩は、麻酔による合併症が起こる可能性もありますが、その頻度は高くありません。また、吸引分娩や鉗子分娩の割合が増えることが分かっています。
無痛分娩を行っている産科病院であっても、分娩を行えるのが昼間のみであったり、事前予約が必要であったり、医療機関の事情によって対応はさまざまです。
当院では産科と麻酔科が協力して無痛分娩を行っており、原則予約不要で、24時間対応しています。無痛分娩を行う場合、通常の分娩入院費用に加えて100,000円かかります。また、計画無痛分娩の場合には、準備のために前日入院する必要がありますので、さらに15,000円の追加費用が必要です。
自然分娩の予定だった妊婦さんも、陣痛の痛みに耐えきれないということもありますから、そうした場合に無痛分娩に切り替えることもできます。無痛分娩に柔軟に対応できる体制を整えておくことで、妊婦さんも安心して出産に臨んでいただけるのではないでしょうか。
乳幼児健診のほか、小児科の一般外来を行っていることに加え、いずれも予約制ではありますが、小児循環器外来、小児腎臓外来、小児神経外来といった専門外来も設けています(2020年5月現在)。
小児科一般外来は、予防接種などの元気なお子さんと、発熱や風邪などのお子さんのエリアを分けて診察しております。アレルギーなども含めた血液検査や、ウイルスや細菌などの迅速検査も行っています。
なお、当院は小児科の入院病棟がありませんので、入院が必要になった場合は主治医から連携先の病院などを紹介させていただきます。一方で、当院で生まれたお子さんであれば、出産時の状況も分かっていますので、より的確な診断や治療法の選択がしやすいという利点があります。新生児の頃から、かかりつけ医のように当院を利用されているお子さんも多くいらっしゃいます。
このほか、新生児の病気を早期に発見するために、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)や埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)と連携して、通常の検査(スクリーニング)とは別に、有料のオプショナルスクリーニングを行っています。費用は11,000円(税込み)で、ポンペ病や重症複合免疫不全症といった難病や希少疾患を早期に発見し、もし病気が見つかれば、発症前や発症直後から治療を行うことができるようになります。一方で、スクリーニング検査は、あくまで、特定の病気であるという可能性が高い方を見つけることが目的です。検査で陽性だったからといって、必ずしもその病気だというわけではありません。
病院の雰囲気作りにはかなり気を使っています。通常は数日から1週間ほどの短い入院生活ですが、できるだけ快適に過ごしていただくために、“あえて病院らしくなく、ホテルで過ごしているような気分を味わっていただく”というのがコンセプトです。
待合室にはホテルのロビーをイメージしたソファを置いており、入院中はマッサージやヘッドスパなども受けられます。入院中の食事についても、ホテルでの勤務経験があるシェフが、旬の食材を生かした料理を提供いたします。
出産後に始まる子育てに向け、お子さんに会える日をワクワクと心待ちにできるような入院生活を送っていただきたいと思っています。
いずれも予約制ではありますが、母親だけでなく、父親や祖父母ら家族も新しい家族をスムーズに受け入れられるよう、両親学級や母親学級、父親学級のほか、祖父母学級も開いています。お孫さんを預かる祖父母の方々もいらっしゃると思いますので、子育てについての知識をアップデートしていただき、世代間ギャップに悩むことなく赤ちゃんを迎え入れていただきたいと思っています。
このほか、妊婦さんの健康維持やストレス解消のためヨガやエアロビクスなどの教室も開催しています。
地域の人間関係が希薄になったことや核家族化の影響で、子育てに疲弊し、孤立しているお母さんが増えているといわれています。これからの産科病院は“出産が済めば終わり”ではなく、その後の育児も支援していかなくてはならないと思っています。
そのために、今、力を入れたいと考えているのが産後ケア体制の充実です。子育てで肉体的、精神的に疲れてしまうと、産後うつになり、虐待や自殺の懸念も生じるような状況にも陥りかねません。そのために、新しい産後ケアのための施設をつくれないかと考えていますが、なかなか進んでいないというのが実情です。しかし、引き続き産後ケア体制の充実に向けて努力していきたいと思っています。
現在は、当院で同じ時期に出産したお母さんを対象にした“同窓セミナー”というイベントを開催しています。年齢の近いお子さんがいるお母さん方の交流の輪が広がってほしいという趣旨ですが、そうしたサポートもさらに充実させていきたいと思っています。
医療においては、ガイドラインを学ぶだけでは知り得ない知識もあり、特に臨床では経験も重要だと考えています。
成功体験は自信につながりますし、たとえ苦い思いをしても、必ず将来に役立ちます。経験すること全てが自分自身のための勉強だと考え、さまざまなことに挑戦してください。
妊娠と出産、子育ては人生の中で非常に大きなイベントです。この大切な時期が、皆さんにとって素晴らしいものになるよう、当院では医療面にとどまらず、妊娠、出産、子育てを安心して行っていただくためのサポート体制を提供できる病院でありたいと思っています。診察だけでなく、子育てのセミナーや交流会にも、ぜひご参加ください。
医療法人恵愛会 恵愛病院 理事長 院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。