老人性色素斑とは、中年以降に顔や手の甲など日光が当たりやすい部分に生じる褐色のしみを指します。加齢とともに増加し、1つ1つのしみが濃く目立ちやすくなることが特徴です。
老人性色素斑自体が体に悪影響を及ぼすものではないため、必ず治療をしなければならないものではありません。しかし、見た目の問題などから本人が治療を希望した場合には、治療を受けることができます。
本記事では、老人性色素斑の治療方法について解説します。
老人性色素斑を治療したいと思って受診した場合、まずは医師の視診、あるいは必要に応じてダーモスコピー検査*、皮膚生検*などからしみの種類やそのほかの病気を鑑別し、診断をすることが大切です。
なぜなら、しみの一種である老人性色素斑の見た目は、ほかのしみなどと区別が難しく、ときに良性のいぼやほくろ、皮膚がんの可能性もあるためです。もし、ほかの種類のしみや病気であった場合には、それに応じた適切な治療を行う必要があります。
*ダーモスコピー検査:皮膚の病変を詳しく見るための拡大鏡(ダーモスコープ)を用いた検査。いぼ、ほくろ、皮膚がんなどの鑑別に用いられる検査
*皮膚生検:皮膚の組織を採取し、それを顕微鏡で観察する検査
老人性色素斑と診断された場合は、体に害のあるものではないため、必ずしも治療を受ける必要はありません。しかし、しみを薄くしたい、消したいという本人の希望がある場合には治療を受けることも可能です。ただし、治療は基本的に自費診療となります。
老人性色素斑の治療では、外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)による薬物療法やケミカルピーリング、レーザー、IPL治療などが挙げられ、ときに複数の治療が併用されることもあります。
薬物療法で使用される主な薬は以下の通りです。
古い表皮を垢として押し出し、メラニンを外に排出します。薬剤によって乾燥するため、一時的に皮膚が赤くなることがあります。
メラニン合成酵素であるチロシナーゼを阻害し、メラニンの産生を抑える治療薬です。
メラニンの産生を抑え、しみを作りにくくします。
メラニンの産生を抑え、皮膚への色素沈着を予防します。抗酸化作用もあり、内服を継続することでしみやしわなどを予防する効果もあります。
ケミカルピーリングとは専用の薬剤によって皮膚を剥がすことで、表皮の生まれ変わり(ターンオーバー)を促進する治療方法です。
ターンオーバーが促進されるとメラニンが角質とともに排出されるため、しみが薄くなりくすみも改善することが期待できます。
レーザー治療とは、医療用レーザーをしみに照射することによってメラニンを多く含む細胞を破壊する治療方法です。破壊された細胞はかさぶたとなり、2週間程度で次第に剥がれ落ちていきます。レーザーの種類によりますがその間、テープ保護が必要な場合があります。
レーザー治療の場合は1回でしみを薄くすることが可能ですが、経過により複数回照射する可能性もあります。照射を繰り返す場合、皮膚の状態を見ながら3か月以上間隔をおいて行うことが一般的です。
IPLとは可視光線と近赤外線領域の光を照射する機器で、顔や手の甲にある小さいしみに効果的です。照射後、かさぶたになりますが1週間程度で次第に剥がれ落ち、その間、テープ保護は不要でメイクをすることも可能です。月1回程度、繰り返し照射することでしみ、くすみ、赤み、毛穴の開き、しわなどを改善することができます。
現在、老人性色素斑に対する多くの市販薬やサプリメントが販売されています。
たとえば、化粧品や医薬部外品の美白製品にはハイドロキノン、ルシノール、アルブチン、コウジ酸、甘草エキス、トラネキサム酸などを配合したものがありますが、これらの美白剤は即効性がないため、毎日継続する必要があります。また、成分の濃度により接触皮膚炎などのかぶれや、皮膚の色が白く抜ける色素脱失などの副作用が生じる可能性もあるため、そのような症状が出た場合はすぐに使用を中止し皮膚科を受診してください。
しみにはさまざまな種類があり、種類に応じて有効な治療方法が異なります。そのため、自己判断で市販薬やサプリメントを使用するのではなく、まずは皮膚科を受診し適切な診断を受けることを検討しましょう。
老人性色素斑自体が害のあるものではないため、治療は本人の判断に委ねられますが、希望する場合は治療を受けることが可能です。
ただし、老人性色素斑に似ているほかのしみが混在している場合もあり、鑑別が困難な場合があります。また、ときに病気である可能性もあるので、気になるしみがある場合には一度病院を受診し適切な診断を受けるとよいでしょう。
また、老人性色素斑は日光に繰り返し当たることによってしみが発生し、目立ちやすくなるといわれています。そのため、治療中や治療後は日焼け止めクリームを塗る、日傘をさすなど、しっかりと紫外線対策をして過ごすことを心がけましょう。
近畿大学病院皮膚科 非常勤講師
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