多汗症とは体温調節に必要な量以上の汗をかいてしまうことによって、日常生活に支障が出てしまう病気です。汗をかく部位によって、全身に大量の汗をかく“全身性多汗症”と、手のひらや足の裏、腋、顔面・頭部など、部分的に大量の汗をかく“局所性多汗症”に分けられます。また、原因によっては何らかの病気が原因で発症する“続発性多汗症”と原因が分からない“原発性多汗症”に分けられます。多汗症の治療は原因や部位などによって異なりますが、主に塗り薬、注射薬、飲み薬などの治療薬や手術が検討されます。
本記事では多汗症の治療薬を中心に、市販薬の効果や予防方法などについて解説します。
多汗症は汗をかく部位、発症の原因、症状の重さによって治療法が異なります。基本的に続発性の多汗症の場合、まず原因となる病気を見つけ、その治療が行われることが一般的です。一方、原発性の多汗症の場合は塗り薬などの治療薬が検討されることがあります。
ただし、多汗症の治療薬には保険適用のものとそうでないものがあるため、治療を受ける際は担当医師の説明をよく聞き、治療の特徴や注意点、費用などについても理解することが大切です。以下では、多汗症で使用されることがある主な治療薬についてご紹介します。
原発性局所多汗症で第一に検討される治療薬で、塩化アルミニウム液を患部に塗ることによって症状の緩和が期待できます。また重症の患者では、ただ塩化アルミニウム液を塗るだけでなく、その上からゴム手袋やラップで密着させる“密封療法”が検討されることもあります。
塩化アルミニウム液は、2022年現在保険適用の外用薬ではなく、多くは国内で製造販売されていません。しかし、治療を行う上で必要な薬であるため、保険適用外ではありますが院内で調合して作る“院内製剤”で処方されることが一般的です。
原発性局所多汗症では抗コリン薬が処方されることもあります。保険適用のある内用薬としては“臭化プロバンテリン”が挙げられますが、効果にばらつきがあるほか、緑内障の方には使用できないという注意点があります。
また、腋の多汗症(腋窩多汗症)に対しては、2021年11月に保険適用のある抗コリン薬の外用薬も登場しています。
医療機関では原発性局所多汗症に対して薬物治療以外に、イオントフォレーシスやA型ボツリヌス菌毒素の局所注射療法、手術治療などが検討されることがあります。以下では、それぞれの治療法について簡単にご紹介します。
・イオントフォレーシス(保険適用)……患部を水の入った容器に浸し、電流を流す治療法です。
・A型ボツリヌス菌毒素の注射(脇のみ保険適用)……患部にボツリヌス菌毒素を注射する治療法です。腋以外の部位では保険適用外です。
・手術治療(保険適用)……胸腔鏡を使って胸部の交感神経節を切除する手術法(胸腔鏡下胸部交感神経節切除術)です。重症の原発性局所多汗症の方に検討されます。
前述のとおり、多汗症は汗をかく部位、発症の原因、症状の重さによって治療が異なるため、自力で治せるとはいえません。特に、何らかの病気やけがが原因で発症する“続発性多汗症”の場合、まずは原因となる病気を見つけ、その治療を行う必要があるため、自力で治すのは困難といえるでしょう。
また、原発性の多汗症の場合でも症状の重さによって治療法が異なるため、多汗症が疑われる場合は、隠れた病気を見つけるためにもまず医療機関の受診を検討しましょう。
多汗症の改善が期待できる市販薬としては、漢方薬の“防已黄耆湯”が挙げられます。
防已黄耆湯とは、胃腸のはたらきを高め、余分な水分の排出を促すことによって全身の機能を高めることが期待できる漢方薬です。水太りやむくみの改善に役立つほか、多汗症の改善も期待できます。
多汗症にはさまざまな原因があり、全てが解明されているわけではありません。ただし、生活習慣の乱れによって生じる可能性もあるため、予防のために生活習慣を見直してみてもよいでしょう。
具体的には、交感神経が優位な状態が続くと発汗しやすいことが分かっています。そのため、辛いものやカフェインの入ったものなど交感神経を優位にする飲食物を控え、お酒を飲みすぎないことや、たばこを吸わないことを意識するとよいでしょう。また、十分な睡眠を取るなど体を休めることも大切です。
多汗症では病気の種類や発症部位、症状の重さに応じて、さまざまな治療方法が検討されます。中には思わぬ病気が原因で発症している場合もあるため、気になる症状があれば医療機関の受診を検討しましょう。
山本英博クリニック 院長
関連の医療相談が13件あります
大量発汗+のぼせ
元々汗かきだったり顔が赤くなりやすかったりする体質だったのですが、3年前から異常に汗をかくようになり、またのぼせが発症しました。のぼせたり汗をかくタイミングは、少しでも気温や湿度が高いと思った時もあれば、気温は高くない場合でも、電車やエレベーター、人が近くに来た時にもすぐ起こります。のぼせは一度起きると1日ずっと続くことがあり、特生理前の1週間程度がひどいです。ただその期間でなくても、ほんとに簡単にのぼせたり汗をかくので生活に支障が出ています。電車で4駅通勤なのですが、その電車で汗をかきびっしょりになるので、会社で着替えたり電車の時間を最近は早くして空いている電車に乗るようにしています。背中が特にひどいですが、全身汗をかきます(上半身下半身問わず)。頭の後ろもすぐかくのですが、洗えないので憂鬱になります。 2年前に3つくらい病院に行きました。当時は毎日のぼせていて本当に辛かったのですが、血液検査をしてもホルモンなど特に異常なしで、漢方を処方してもらったり、弱めの抗うつ剤をもらったり、汗をとめる薬や塩化アルミ二ウムを処方してもらったりしました。多少安心感もありよくなった気がしたのですが、根本治っていないです。 当時はヨガで今は週1でジムに通って走って汗を流したり、大豆系の食品などをとったりと生活も前より意識しているのですが、治らず辛いです。 のぼせもいやですが、背中の汗を特にとめたいのですが何かいい方法はないでしょうか? 大量の汗をすぐかく・のぼせる、以外体で今気になるところはないのですが、毎日生活に支障があるので、ここを改善したいのですが改善できず悩んでいます。宜しくお願いいたします。
手のひらに汗
何もせずただ椅子に座っているだけなのに、手のひらに汗をかくのはなにがわるいのですか?
脇汗の量が突然増えました
今年の春頃から脇汗が急に増えました。今までは気になるほどではなかったのですが、今では色付きのシャツを着ると汗で脇の部分の色が変わるほどです。年齢も上がって発汗機能が落ちているのではと思っていますが病気の可能性もあるのでしょうか?特に暑いと感じていなくても汗がしたたるような状況です。
消化器系の異変について
ここ数ヶ月、 ・ゲップの回数が激増した ・すぐに満腹感(食事量減少) ・便秘ぎみ、以前よりおならもしたくなる と、消化器系の変化を感じています。 特に日常生活に大きな支障はないのですが、大病に繋がる可能性はあるのか、知りたいです。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「多汗症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。