院長インタビュー

急性期医療と地域医療をアップデートし続け、患者さん思いの病院づくりに励む矢木脳神経外科病院

急性期医療と地域医療をアップデートし続け、患者さん思いの病院づくりに励む矢木脳神経外科病院
谷口 博克 先生

矢木脳神経外科病院 院長

谷口 博克 先生

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大阪市東成区にある矢木脳神経外科病院は、脳卒中センター機能を有する急性期病院として2008年に誕生しました。当初から大学病院に伍する設備と人材を備えて急性期医療に注力しつつ、近年は地域の医療ニーズに合わせて在宅医療やもの忘れ外来などにも力を入れています。そんな同院が担う役割や今後の展望について、院長である谷口 博克(たにぐち ひろかつ)先生にお話を伺いました。

先方提供_0710

当院は大阪市内にあった2つの病院機能を統合する形で、2008年に現在の場所へ移転・開院いたしました。私たちは2008年の開設当初から急性期の脳卒中患者さんに対して集中治療を行うSCU(脳卒中ケアユニット)を12床備えています。当時、関西の脳神経外科病院では3、4床の病院が多かったように思います。そのようななか12床のSCUを導入すると決めたのは、地域の高齢化を見据えていたこと、そして何より地域の医療ニーズに応えたいと思ったからでした。 “いざというときに地域の方に喜んでいただける医療を提供すること”――この思いを胸に、私たちは日々脳卒中診療やよりよい病院づくりに向き合っています。

脳卒中はどれだけ早く適切な治療を開始できるかによって予後が大きく違ってきます。当院では“患者さんによりよい治療をご提供したい”という思いから、診断においては迅速かつ高精度の診断を可能にする機器を積極的に取り入れ、機能強化を図っています。2023年4月には、アジア・国内1号機となる最新型3.0テスラMRI(SIGNA Hero 3.0T)を導入しました。

治療においては、24時間365日つねに迅速に脳血管内治療やカテーテル治療を行えることや厳しい施設基準が必要となる“一次脳卒中センター(PSC)コア”施設に認定され、チーム医療を中心に据えて発症してから可能な限り短時間で手術を行える体制を整えています。

また、脳卒中の患者さんへのリハビリテーションは、早く開始すればするだけよい結果につながります。当院では92床という病床数に対し、療法士30名(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、管理栄養士4名と非常に多くのリハビリテーション専門スタッフを配置して力を入れて対応しています。迅速な対応が求められる脳卒中に対して検査、手術からリハビリテーションまで院内で一貫した体制を整え、患者さんに寄り添った治療を提供しています。

高齢化が進む現代社会においては、脳の病気だけを診ていればいいというわけにはいきません。転倒して頭を打って運ばれる高齢の患者さんの多くは、転倒時に腰や膝も痛めていたり、外傷以外の病気を持っていたりします。当院では総合診療科や整形外科を開設しており、患者さんを総合的に診療していく体制を整えています。また脳卒中の治療に関しても緊急的な治療だけを行うのではなく、当院の病床の約4分の1にあたる26床を地域包括ケア病棟として在宅復帰までをサポートしています(2024年6月現在)。

それだけではありません。当院は地域の医療ニーズにあわせて在宅医療や認知症の診療も開始しました。

医療法人弘善会グループは以前から在宅医療を行ってきましたが、2023年より矢木脳神経外科病院としても在宅医療を開始いたしました。医師や看護師に加えて公認心理師など“心の専門家”がチームとなり、患者さんやご家族の心と体の健康を支えます。

今や2人に1人ががんになるとされる時代、がんや脳卒中など命に関わる病気を経験し、何らかの後遺症が残ってしまう方は少なくないでしょう。また体は元通りになったけれど「また再発するのではないか」「○○ができなくなってしまった……」といった葛藤を抱えている方もいらっしゃるはずです。

在宅で療養されている患者さんやご家族の心のケアは今後ますます重要になるでしょう。当院は、“心もケアする在宅医療”を提供する先駆け的な存在として、今後も地域医療の一翼を担っていきたいと考えています。

開院当初は脳卒中の救急医療に特化した“脳神経外科の病院”だった当院ですが、2024年4月より新たに“脳神経内科”“もの忘れ外来”の診療をスタートしました。当院では以前から“脳ドック*”を実施し、脳の病気の早期発見・早期治療に努めておりましたが、MRI検査などを実施した患者さんの中には、海馬(記憶を司る脳の部位)の状態が気にかかる方もいらっしゃいました。“もの忘れ外来”は、脳ドックで異変をキャッチした患者さんをフォローするためのアプローチです。

アルツハイマー型認知症については2023年末に新薬・レカネマブが保険適用になりました。当院はレカネマブを用いた治療を行うことができる医療機関です。今後も充実した設備と専門性の高さをいかして、地域の医療ニーズにマッチした質の高い医療をご提供したいと考えています。

*矢木脳神経外科病院における脳ドック:こちらは自由診療となり、かかる費用は税込33,000~55,000円です。検査項目は頭部MRI/MRA、頚動脈超音波検査、認知機能検査のほか、コースにより検査項目が追加されます。日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医をはじめとする医師による診察・説明も行い、脳卒中の原因となる生活習慣病不整脈なども含めて総合的に健診します。所要時間は1時間~2時間30分ほどです。

看護師やヘルパーといった医療・介護職は今でも人材不足が叫ばれていますが、私は今後、ますます人材不足が進むと考えています。そんな状況のなか、当院では“1+1=1”のスタッフが多く育ち、この課題をクリアしようとしています。

通常、病院に限らず会社員や公務員であっても、1人のスタッフは1つの仕事をするのが当たり前ではないでしょうか。つまり、2つの仕事があれば必要なスタッフも“1+1=2”で2名必要です。しかし当院では、多くのスタッフが“医療と介護のどちらも行う”といったように1人で複数のスキルを持ち、業務にあたっているのです。多くの仕事をしているスタッフにはそのぶん好待遇で還元をしており、結果として医療・介護職にありがちな低賃金の問題も解決できています。

また、とくに在宅医療の現場ではこのようなスタッフの重要性が増してきています。たとえば自宅で療養をされている方のご自宅に伺った際、医療と介護のスキルが必要となる場面で1人のスタッフがその場で迅速に対応できることは、まさに時代が求める働き方ではないでしょうか。

当院はこれまでも、SCUの病床拡充や新しい医療機器の導入など、医療ニーズを先回りして取り組んできました。これは院内スタッフの育成でも同様です。今後も在宅医療や認知症診療への積極的な取り組みや“1+1=1”の方程式にもとづく人材育成などを通じて、地域や時代に必要とされる医療を提供していきたいと思っています。

私は30代で当院の院長を拝命しました。脳神経外科医として大学病院で経験を積み、市中病院で脳神経外科部長を務めた後のことでした。院長になってからは30年以上、脳卒中診療を中心にこの地域の医療に携わってまいりました。「全ては患者さんのために」「できるだけいい治療を提供したい」――。そんな思いで設備面の充実を図り、地域包括ケア病棟の新設やもの忘れ外来の開設などを含め、常に患者さん目線で診療や病院づくりにまい進してきました。

高齢化が進む日本においては、単に人口が減少するだけでなく、医療に関わる人材の減少も懸念されます。そうした中にあっても、必要とされる医療を安定して提供できる仕組みをつくることが院長である私の役割です。今後は人材確保・育成に力を注ぐと同時に、高齢患者さんに多くみられる変形性関節症のような整形外科領域にもしっかり対応できるよう、環境整備を進めてまいります。

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