埼玉県所沢市にある社会医療法人社団埼玉巨樹の会 所沢美原総合病院(以下、所沢美原総合病院)は、コロナ禍を契機にひっ迫した地域医療を支えるべく2023年に新設された急性期医療を担う病院です。“断らない救急医療”をモットーに開設直後から人々を力強く支えてきました。そんな同院の特徴と思いについて、院長の鈴木 昭一郎先生にお話を伺います。
当院は、母体となるカマチグループの所沢明生病院と狭山中央病院の統合により2023年に開設され、病床数221床に規模を拡大して再スタートを切りました。旧所沢明生病院では、同じく“断らない医療”を掲げ、わずか50床ながら年間およそ4,000台の救急車を受け入れていました(2022年1〜12月)。当院では、新たな医療体制においても従来の救急医療への姿勢を受け継ぎ、24時間365日の救急対応に努めています。
また病院規模の拡大に伴い、ハイブリッド手術室(手術台に血管造影装置などを組み合わせた手術室)や手術支援ロボット“ダヴィンチ”などの新たな医療設備を導入しました。ハイブリッド手術室ではより迅速で安全性の高い治療を、手術支援ロボットでは開腹・開胸手術よりも体への負担が少ない治療の実現をそれぞれ目指しています。2024年時点で当院はまだ開設して間もないですが、間口の広い19の診療科と専門的な急性期医療で地域を支えるべく、日々の活動に尽力しています。
埼玉県所沢市は、東京近郊のベッドタウンであるとともに、映画『となりのトトロ』の舞台にもなった狭山丘陵が広がる自然豊かな土地です。人口はおよそ34万人と県内で4番目に多く(2020年時点)、その一方で老年人口は増加傾向にあることから、当院のような病院が率先して救急搬送の対応にあたることが肝要と捉えています。
当院は埼玉県より救急告示医療機関に指定されており、2次救急(入院を要する救急)を中心に24時間365日体制で対応にあたっています。ただ、患者さんとしては自分の状態がどのような重症度か判断するのは難しいため、要請があればどのような重症度の方でもまずは受け入れることを方針としています。一部の特殊な病気を除き、当院ではさまざまな症例に対応可能ですが、万が一当院で即座に対応できない重篤なケースがあれば、できる限りの初期治療を行い、全身状態を安定させたうえで適切な医療機関に受け渡す体制を整えました。当院は今後も地域を支える急性期病院として、その役割を果たしたいと思っています。
脳神経外科では、従来の開頭手術に加え、血不全溶解、血栓回収、コイル塞栓、ステント挿入などの低侵襲な(体への負担が少ない)血管内治療を行うことを心がけています。また、外科においても、腹腔鏡下手術や胸腔胸下手術に加え、ダヴィンチによるロボット支援手術を行っており、さらに心臓血管外科ではハイブリッド手術室において安全で低侵襲な手術を行っております。そして、当然ながら“手術して終わり”ではありません。患者さんが健やかな心身の状態を取り戻し、病気になる以前の心身の状態や生活、仕事などになるべく早く戻れるように、早期リハビリテーションや在宅復帰支援などを含めて最大限のサポートを行います。
カマチグループは病院25、診療所2、大学1、専門学校5を運営する医療法人です。この規模を活かし、当院ではグループの中でも施設間の連携体制を強固に整えています。たとえば病院間では、出張での手術やカテーテル治療(柔らかい細い管を体内に挿入して行う治療)などにも対応してきました。また必要に応じて患者さんの転院や紹介も行い、地域の皆さんが安心して暮らせるような医療体制を構築しています。
また我々は、防災訓練や地元のイベントなどに参加して地域の皆さんとの交流を深めるほか、市と協働で健康をテーマとした市民講座を定期的に開催して予防医療の推進に努めています。さらに医療連携室を設けて近隣の医療機関とのつながりを強化し、患者さんに対しては医療費や福祉に関する相談への対応、退院に向けた調整などをサポートしています。これらの取り組みを通じて地域医療におけるリーダーシップを発揮しつつ、住民の皆さんから親しみを持っていただける存在であり続けたいと考えます。
当院では毎朝、医師の全員が集まってカンファレンスを行い、前日入院した患者さんの初期診療と担当決めを協議しています。部門ごとのチーム医療は大事にしながらも、病院全体をワンチームとして考え、職員一丸となって医療に取り組めることが当院の強みです。
幸いにも当院では診療科の垣根を越えて職員同士の仲がよく、風通しのよい雰囲気と献身的な職員で構成されています。これからも我々は基本理念“志は高く、敷居は低く、懇切丁寧に”に沿って誠実な医療に努め、地域の皆さんから愛される病院を目指して日々の診療に取り組んでまいります。