名古屋市千種区にある名古屋市立大学医学部附属東部医療センターは、その名のとおり同市の瑞穂区にある名古屋市立大学医学部の附属病院で、地元では“東部医療センター”と呼ばれています。東部医療センターは救命救急センター、第二種感染症指定医療機関としての機能を有し、近年はがん診療に注力し、病院としての総合力アップに努力しています。他方、名古屋市立大学病院との連携により研究分野での実力も向上しており、高齢者からの需要が大きい診療面に加え、明日の医療を支える研究面からも飛躍を遂げようとしています。病院長の大手 信之先生は、名古屋市立大学病院で院長代行や副病院長を務めた経歴を生かし、東部医療センターをさらにレベルアップしようと意欲的です。
今回、大手先生に同院の特徴についてお話を伺いました。
東部医療センターは、市営地下鉄東山線沿いに位置し、最寄りの今池駅から歩いて10分の所にあります。すぐそばには千種公園があり、四季折々の変化を享受できる良好な環境です。もともとは明治時代からの長い歴史を持つ市立病院でしたが、2021年4月に名古屋市立大学へ移管して大学病院化し、現在5つの病院からなる附属病院群の1つとなりました。名古屋市立大学病院(以下、市大病院)と緊密に連携しつつ、独自に高度医療を市民に提供できる体制整備をすすめ、その上で地域医療支援病院としての役割を果たすべく、努力している毎日です。
当院の特色は、救急医療と感染症医療です。前者においては、近隣の名古屋医療センターや日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院と共に地域の救急患者の医療ニーズに応えています。2023年度は8,149台の救急車を受け入れました。特に高齢者の需要が大きく、その約半分は分類不能(いろいろな病気を持っていること)の患者さんを占めます。このことから、幅広い診療科を擁し、総合的な医療の提供が可能な当院の役割は重要であると認識しています。
感染症医療において、当院は新型コロナウイルス感染症の流行が始まった時に、名古屋市内で最も早くから患者の受け入れを開始した病院であり、延べ20,000人以上に対して入院での診療を行ってきました。こうした経験を踏まえ、2024年4月に当院に医学研究科感染症学分野の主任教授を招へいすることができ、新たに感染症内科を開設しました。今後は感染症専門医の育成にも力を入れていきます。
さらに当院では、救急医療と感染症医療に加え、第3の柱として“がんの診療拡大”を目指しています。がん専門医の教授を招へいするなど、大学病院化がもたらしたメリットを生かしながら、現在はがん診療拡大への体制強化を急ピッチで進めているところです。がん診療は、手術・薬物療法・放射線治療の 3 大治療による集学的治療が必要であり、当院は現時点でも、それらの治療に集約した高い質の医療を提供できると自負しています。
当院の近隣でがん診療に特化した病院として、愛知県がんセンターが挙げられます。先進的かつ高度ながん診療を特色とする同センターに対し、当院は高齢のがん患者にとっての治療の砦となるよう、体への負担が少ない低侵襲の治療に力を入れています。
例えば、泌尿器科や消化器外科などにおいて、さまざまな種類のがんに対して内視鏡手術支援ロボット“ダヴィンチ”を用いた低侵襲手術を行っています。産婦人科でも早期子宮体がんの患者さんに対し、ロボット手術を開始しました。
このほか、改組・強化した血液・腫瘍内科では、悪性リンパ腫などへの化学療法にも力を入れております。抗腫瘍薬による免疫力が低下した患者さんの感染防止に必要不可欠なクリーンルーム(特別な空調設備を整えた部屋)を今後整備し、白血病の治療にも本格的に取り組んでいきます。
大学附属となった当院の変化は研究分野にも及んでいて、科研費(科学研究費助成事業)の獲得率は、市大病院が30%であるのに対し、東部医療センターも24%に達しています。当院では、各診療科所属医師がバラバラに活動するのではなく、大学の医局のように機能的に結び付く体制ができてきています。今後は治験や臨床研究にこれまで以上に注力し、研究面でも市大病院に引けを取らない水準を目指していきます。
私自身、当院の病院長に就任する前は、市大病院で循環器内科の教授職にありました。そのような市大病院とのつながりを生かし、市大病院から優れた医師を派遣してもらうなど、両院の連携を深めることに貢献できていると思います。今後も市大病院と緊密に連携し、臨床と研究の両面で市大病院と肩を並べる水準までのレベルアップを図っていくつもりです。
当センターの理念は、“安全かつ高度な医療を提供し、市民のいのちと健康を守ると共に、優れた医療人を育成すること”にあります。当院が地域の皆さまからより信頼される病院として、また周辺の病院やクリニックから安心して紹介してもらえる存在として、さらなる発展を目指しています。皆さまのご期待に応えられるよう努めますので、どうぞご期待ください。