院長インタビュー

救急・周産期・小児医療の砦となるべく尽力する高槻病院

救急・周産期・小児医療の砦となるべく尽力する高槻病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

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社会医療法人愛仁会高槻病院(以下、高槻病院)は、大阪府内で先駆けとなった周産期医療をはじめ、大阪府がん診療拠点病院として多角的ながん治療などに取り組む総合病院です。救急医療や周産期医療、小児医療に加え、人材育成にも積極的に取り組む同院の特徴や思いについて、病院長の髙岡 秀幸(たかおか ひでゆき)先生に伺いました。

*病床数や診療科、医師、提供する医療の内容に関する情報は、2024年8月時点のものです。

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高槻病院ご提供

高槻市は、京都と大阪の中間に位置するベッドタウンとして発展してきました。平地には工業地帯が広がる一方、山間部では農業が盛んに行われ、都会的な街並みと自然豊かな農村を併せ持つ住みやすい街です。

高槻病院は、1977年に180床で開院しました。移転や増築、機能の拡大を経て、現在は一般病床477床と30の診療科を備える総合病院として、地域の方々を支えています。

2001年には大阪府内で2つ目の総合周産期母子医療センターに指定され、妊娠高血圧症候群多胎妊娠などのハイリスク妊娠や専門的な新生児医療などに対応してきました。また、急性期の病院として救急搬送の受け入れやがん診療に対応し、高槻市内の重症患者さんを受け入れるとともに、近隣の医療機関とも連携して広範な地域医療に努めています。さらに臨床研修病院として、医師の人材育成にも積極的に取り組んでいます。2023年度は初期臨床研修医13名が入職し総勢25名の研修医が当院で基礎臨床を学び、海外からは看護学生を招き実践的なインターンシップを実施しました。

これらの役割を全うしつつ、今後は周辺の医療機関との連携をさらに強化し、地域医療が循環するための中心地点として存在感を発揮したいと考えます。

高槻病院の救急センターは二次救急(入院治療を必要とする重症の救急)と、三次救急(重症かつ複数の診療科領域にわたる重篤な救急)に類する医療に対応しています。救急搬送の受け入れ件数は、2022年は9838件、2023年は9789件と、当院のある大阪府三島医療圏では最多の実績です。

このような多様な救急医療に対応するため、当院では一般的なICU(集中治療室)に加え、周産期医療と小児医療に関わる専門的なICUを設置しています。たとえば、全国でも珍しい小児患者さん専用のPICU(小児集中治療室)のほか、NICU(新生児集中治療室)やMFICU(母体・胎児集中治療室)などがあります。

高槻病院の母体である社会医療法人愛仁会は、医療を提供する急性期病院やリハビリテーション病院だけでなく、介護を行う介護老人保健施設やデイサービスセンター、在宅での日常生活を支える訪問看護ステーション、看護師や助産師を輩出する看護助産専門学校などを通じて、医療、介護、保健、福祉、教育の5本柱により総合的に地域医療を支えています。また包括的な地域医療は、愛仁会のグループ施設だけで完結するものではありませんので、周囲の医療機関と協力し、シームレスな地域医療の構築に努めてきました。

地域連携においては、医療機関同士がお互いの役割を認識し、地域全体として最適な医療を提供できる状態を維持することが理想です。当院は、そのような地域ネットワークの鍵となる存在でありたいと考えています。

大阪府の周産期医療と小児医療を支える医療機関として、当院に在籍する38名の小児科医、5名の小児外科医、1名の小児脳外科医が協力して日々の診療にあたっています。そしてこの3科が連携して小児救命救急センターとして重症の小児患者さんに対応しています。さらに関連施設の愛仁会リハビリテーション病院や訪問看護ステーションと協力し、急性期から慢性期までの医療と訪問看護を提供して、全方位の周産期医療と小児医療に対応しています。

医療技術の進歩により、従来は治療が困難だった不整脈に対しても根治的治療を行えるようになってきました。当院の不整脈センターでは、薬物療法やペースメーカーの埋め込み、カテーテルを用いた焼灼または冷凍凝固で不整脈を抑えるカテーテルアブレーションなどを行っています。

特にカテーテルアブレーションについては、磁場カテーテルナビゲーションシステム“Stereotaxis”を導入し、血管内に入れた磁石入りのカテーテルを磁力で患部まで動かすため、より安全で正確な治療とX線被曝量の低減が期待できます。

整形外科では“信頼される手術治療”を目標に、日々の診療にあたっています。手術の中でも特にニーズが高いのは人工膝関節(しつかんせつ)置換術で、2022年(2022年1月〜12月)には年間477例を実施しました。人工関節の手技は関節センター長を務める平中崇文(ひらなか たかふみ)先生を中心に当科の医師たちが担当しています。一般的に人工膝関節置換術としてよく知られているのは、膝の関節全てを人工関節に置き換える「人工膝全置換術(TKA)」ですが、当院では膝関節のすり減った部分だけを置き換える「人工膝関節単顆置換術(UKA)」に力を入れています。超高齢化社会を迎えつつある日本において、「体への負担が少なく回復が早い」手術方法は、まさに時代のニーズにマッチしていると言えるでしょう。

近年の高齢化に伴い複数の疾病を抱える患者さんが増えています。このような患者さんは複数の疾患を持つがゆえに治療を行う専門診療科の決定が難しいため、当院では2017年に総合内科を開設し、専門診療科の垣根を越えた医療体制を構築しました。

総合内科は、専門診療科の医師と連携して患者さんを総合的に診療するいわゆる“ホスピタリスト”として活動しています。複数の疾患を抱えている方や、原因がわからない症状で苦しまれている方などは相談に来ていただければと思います。病院受診が困難な患者さんに対しては、関連施設である愛仁会しんあいクリニックでの訪問診療も対応します。

我々は周産期医療や急性期医療を通じて、日々さまざまな症例に直面します。特に小児救急の分野では、残念ながら虐待を疑う外傷を受けて搬送されてくる方も珍しくなく、単に治療を提供するだけでは足りないと感じています。高槻病院では、産前産後の母子の支援について大阪府から委託を受け、“こどもと家族の支援センター”を中心に、社会貢献に取り組んできました。治療後の子どもの生活環境にも目を向け、支援が必要な際は医師、看護師やソーシャルワーカーによる児童虐待防止チームで対応しています。

このように周産期、小児医療から救急まで、地域医療の砦となるべく尽力し、地域の皆さんの“生まれる前から終末期医療まで”を支える医療の実現を目指して職員一丸となり取り組んでいます。

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