院長インタビュー

赤ちゃんから高齢者まで、トータルヘルスケアの提供を目指す――さぬき市民病院

赤ちゃんから高齢者まで、トータルヘルスケアの提供を目指す――さぬき市民病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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香川県さぬき市にある“さぬき市民病院”は、救急搬送の受け入れから周産期・小児医療まで、地域に必要とされる医療を幅広く提供しています。

全方位型の医療提供を目指し、さまざまな患者さんに対応できるよう体制を構築する同院の特徴について、さぬき市病院事業管理者兼さぬき市民病院長の石井 知也(いしい ともや)先生にお話を伺いました。

外観
病院外観

当院は、一般病床175床、感染病床4床の計179床を有し、内科、外科をはじめ産婦人科や小児科、整形外科、脳神経外科など25の診療科目で診療を行っています。病院のビジョンである“市民のためのトータルヘルスケア”に基づき、患者さん一人ひとりに合わせた医療・看護・介護の提供を目指しています。

当院は、1951年に大川病院として開院しました。開院当時の診療科は、内科、外科、放射線科のみでしたが、地域の医療のニーズに応えられるように増科を行うなど、病院としての機能を徐々に拡充していき現在に至ります。2002年には、町の合併によってさぬき市が誕生し、名称を“大川病院”から“さぬき市民病院”へ変更しました。その後、かねてから改築を求める声が院内外からあがっていたことや、病院の老朽化が進んだこともあり、2011年に改築工事を行い、新病院となりました。

当院のビジョンは“市民のためのトータルヘルスケア”を提供することです。東讃地区の赤ちゃんから高齢者まで、各ライフステージに応じた医療・看護・介護を包括的に提供することを重視しています。当院では、ビジョン達成のために9つの柱を掲げ、それに基づいた施策を展開しています。

【さぬき市民病院の9本柱】

  1. 大川保健医療圏の第二次救急医療施設の中核としての救急医療体制の構築
  2. 香川大学医学部附属病院をはじめとする第三次救急医療施設との連携の強化
  3. 住み慣れた環境で安心して生活できるように第一次医療施設との連携の強化
  4. 災害発生時の地域災害医療センターとしての災害医療の提供
  5. 東讃地区唯一の分娩医療機関としての周産期医療の提供
  6. 安心して子育てできる環境を支える小児医療の提供
  7. 病気の予防から早期発見・早期治療までを一元的に提供する健診事業の充実
  8. 多職種による専門性の高いチーム医療の提供
  9. 医療機関や社会福祉機関と緊密に連携した地域包括ケアシステムの構築

救急医療体制の構築

当院では二次救急を中心に救急医療に対応しており、内科医と外科医の人員がそろう日中は特に、救急応需率の向上に努めています。また夜間救急は、近隣の香川県立白鳥病院と分担しており、地域全体で効率的な救急医療体制を維持できるようにしています。

地域の救急医療体制を守るためには、一次医療機関との連携も大切です。東讃地区では診療所が減少していますが、当院ではかかりつけ医を持つことを患者さんに推奨しています。開業医と当院のような二次医療機関とが密接に協力することで、地域医療の基盤を強化できると考えています。

さらに当院では、2023年9月に香川大学とさぬき市が締結した連携協定に基づき、三次救急医療機関との連携も強化しています。この協定は、大学からの人材提供や当院からの研修参加など、双方が協力して地域医療の充実を目指すためのものです。香川大学は高度医療の提供や専門医の育成を行い、当院は地域医療を担いながら専門医の育成を支援する役割を果たしています。

災害拠点病院としての取り組み

当院は災害拠点病院として、災害時の対応においても重要な役割を担っています。直近では、能登半島地震(2024年1月)の際にDMAT(災害派遣医療チーム)を派遣しました。また、今後予測されている南海トラフ地震のリスクを考慮し、院長就任後より事業継続計画(BCP)の改訂を進めています。従来の地震対策に加え、台風や水害、サイバーセキュリティなども含めた幅広い災害対応を整備中です。

地域のお産を守る周産期医療

当院は、大川地区で唯一の出産を担う病院です。妊婦の減少に伴いお産が可能な病院が少なくなるなかで、当院は院内助産システムを導入し、リスクの低い妊婦に対しては助産師が中心となって出産をサポートしています。また、合併症などのリスクがある妊婦に対しては、香川大学附属病院での出産後に当院で引き継ぎケアを行う“香川式セミオープンシステム”を採用し、地域で安心して出産できる体制を維持できるよう努めています。

小児医療

当院では地域の小児科医や香川大学医学部小児科医などの協力のもと、大川地区小児夜間急病診療室を運営しており、夜間(22時まで)でもお子さんの急な発熱やおう吐など内科系の疾患に対応する診療体制を整えています。

健診事業

当院では健診事業にも継続的に取り組んでいます。病気に至る前の“未病”の段階での対策や、病気の早期発見および診断・治療へつなげられるよう、質の高い健診やドックを提供し、地域の皆さんの健康維持と病気の予防をサポートしています。

チーム医療

当院では以前からチーム医療を重視してきましたが、近年さらに体制を強化しました。特に緩和ケアチームや呼吸ケアサポートチームを充実させ、専門性の向上に取り組んでいます。一人の患者さんに対して医師だけで対応するのではなく、多職種の医療チームが関わる体制を整えることで、より質の高い医療・看護・介護の提供を目指します。

地域包括ケアシステムの構築

当院では、地域包括ケアシステムの構築を進推しており、地域の介護老人保健施設との連携をいっそう強化し、さらに過疎地域の診療所とも連携を深めています。

このようにさまざまな取り組みによって体制を整えつつ、全方位型の医療を提供し、市民のためのトータルヘルスケアを実現できるよう努めています。

医療体制を充実させることはもちろん、イベントや公開講座などを通して、医療を身近に感じ健康意識を高めていただけるよう取り組んでいます。

たとえば、“さぬき市民病院フェスティバル”という病院祭では、災害対策や感染症に関するブースを設けたり、医師・看護師の疑似体験をお子さん向けに行ったり、市民との触れ合いを通じて医療に親しんでいただく機会を提供しています。コロナ禍で一時中断していましたが、2025年以降に再開の予定です。また、医学生に向け“地域医療スピリット”というイベントも開催しており、地域医療の重要性を伝え、地元での就職を促進しています。

ほかにも、自治会や地域の皆さんの要望に応じ“出前講座”を行っており、さまざまなテーマで出張形式の講演を実施しています。

今後も、診療だけでなくこのようなイベント・啓発活動を通じて、地域の皆さんのこころとからだの健康を支えていく、トータルヘルスケアの提供を目指してまいります。

*病床数や診療科、提供している医療の内容等についての情報は全て、2024年9月時点のものです。

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