希少疾患である神経内分泌腫瘍の診断・治療には専門性が求められます。また、多くの科にまたがる病気でもあることから、よりよい治療を提供するためには知識の共有・均てん化が欠かせません。国立国際医療センターでは希少疾患の診療に尽力しており、適切な治療が提供できる環境が整っています。今回は、同院 肝胆膵外科 診療科長である稲垣 冬樹先生に、国立国際医療センターが築く診療体制や、今後の展望についてお話を伺いました。
当院は、神経内分泌腫瘍の検査から治療まで、一貫して対応できる体制を整えています。現在では、ペプチド受容体放射性核種療法の適応判定に用いられるソマトスタチン受容体シンチグラフィを導入している医療機関も増えてきましたが、当院においては国内で一般的ではなかった時代から、神経内分泌腫瘍の検査・診断に真摯に向き合ってきました。
まだこの検査が保険適用となっていなかった2011年当時、当院に在籍していた窪田 和雄先生が他の医師から「海外で治療を受けたいとおっしゃっている患者さんがいる。適応判定のための検査はできませんか」という相談を受け、倫理委員会の承認後、薬を個人輸入して、この検査を実施されました。その後、問い合わせが相次いだことから臨床研究として検査を再開・継続され、後の国内での普及に大きく貢献しました。
この歴史の中で培った深い知見を生かしてより正確な診断に努め、患者さん一人ひとりに適切な治療を切れ目なくご提案できることは当院の大きな強みの1つです。
神経内分泌腫瘍の治療選択肢はさまざまです。手術ができる腫瘍については切除が優先されますが、切除ができない腫瘍でも決して諦める必要はないと考えます。ペプチド受容体放射性核種療法を実施し、たとえ完全消失はしなくても、腫瘍や転移巣が小さくなれば、根治的な治療(コンバージョン手術)の実施も望めます。
当院では43の診療科を備えており*、また各科の垣根も低いため、他の治療への移行もスムーズです。よりよい予後を目指して職員一同尽力しておりますので、お困りの際にはぜひ頼っていただければと思います。
*2025年8月時点
当院では、内分泌・副腎腫瘍センターを設置し、不測の事態にも備えられている点も強みの1つです。前のページでお伝えしたとおり、ペプチド受容体放射性核種療法の副作用として、ホルモン分泌異常(クリーゼ)が起こる可能性があります。頻度は少ないものの、ひとたび発症すると多臓器不全に陥る危険性がある状態です。
このような状態を防ぐのはもちろんのこと、万が一発症した場合でも迅速かつ適切に対応できる専門性を担保しています。内分泌疾患は患者さんの数が少ないこともあり、どこでも専門的な診療が可能なわけではありません。当院では神経内分泌腫瘍のみならず、褐色細胞腫をはじめとする希少疾患についても診療可能な体制を整えています。糖尿病内分泌代謝科では“内分泌外来”も行っておりますので、ぜひご活用ください。
神経内分泌腫瘍(NET)の治療については、ペプチド受容体放射性核種療法の登場により大きく進歩しましたが、神経内分泌がん(NEC)については、現在の医療では予後が非常に厳しいのが現状です。そのため、神経内分泌がんの診療においても、ペプチド受容体放射性核種療法のような新しい治療法が確立されることを期待し、今後さらなる研究が進むことが望まれます。
神経内分泌腫瘍(NET)に対するペプチド受容体放射性核種療法については、すでに有効性が認められており、今後はさらに質の高い治療を追求する段階に入っています。研究が進めば、ほかの治療と組み合わせることでより高い効果が期待できたり、2クール、3クールと繰り返し治療を行うことも可能になったりするかもしれません。
なお、ペプチド受容体放射性核種療法は新たな治療選択肢として注目を集めていますが、その効果について医師の間でもまだ広く知られていない側面があります。今後メリットがさらに広まり、より多くの患者さんがこの治療の恩恵を受けられるようになることを心から願っています。
ペプチド受容体放射性核種療法について、“新しい治療”“放射線の影響がある”と聞いて、中には怖い印象をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、保険収載がされている治療ですので、その点はご安心ください。ただ、漠然とした恐怖感は誰しもあるものだと思いますので、治療選択に迷っていらっしゃる場合には、紹介状をお持ちのうえ、ぜひご相談にいらしてください。「少し話を聞いてみたい」という方も歓迎しております。お気軽にご来院いただければと思います。
神経内分泌腫瘍は希少疾患と呼ばれる病気の1つですが、さまざまな治療選択肢があります。複数の治療を組み合わせることでよりよい予後が期待できる可能性もありますので、たとえ再発がみられたとしても、どうか希望は捨てず治療に取り組んでいただければと思います。
当院では内分泌・副腎腫瘍センターを設置する総合病院として、積極的に紹介患者さんの受け入れを行っております。神経内分泌腫瘍と確定診断が付いていない状態でも構いませんので、疑わしい病変がある患者さんや、あるいは病状が進行しており治療に難渋する患者さんがおられましたら、ぜひお気軽に当院へご紹介ください。各分野を専門とする医師が連携し、診断から治療まで適切な医療を提供いたします。
国立国際医療センター 肝胆膵外科 診療科長
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