子宮筋腫の治療法には、薬物療法や手術のほかに、お腹を切らない“子宮動脈塞栓術(UAE)”という選択肢があります。欧米では30年ほどの歴史があり、安全性や有効性についても多数の報告がされていますが、日本ではまだ認知度が低い側面があります。今回は、子宮を温存しながら症状の改善を目指すUAEの仕組みや適応、メリット・デメリットについて、NTT東日本関東病院 放射線科 医長である大澤 まりえ先生にお話を伺いました。
UAE(Uterine Artery Embolization)は、画像診断やカテーテル手技を専門とする放射線科医などが行う“血管内治療”の1つです。カテーテルとは、中が空洞になった細いチューブのことをいいます。このチューブを血管の中に通し、心臓や脳など全身のさまざまな臓器の治療を行うのがカテーテル治療で、UAEはその技術を子宮筋腫に応用したものです。
子宮筋腫は動脈からの血流を介して栄養を得て成長します。UAEはこの血流を遮断することで筋腫を壊死させ、縮小を図る治療です。足の付け根にある血管からカテーテルを挿入し、子宮動脈(子宮へ血液を送る血管)まで進めます。そこから、専用の塞栓物質(詰め物)を流し込み、血流を一時的に遮断します。血流を止めることで栄養が絶たれた筋腫は壊死し、時間をかけて徐々に縮んでいきます。

筋腫は血管を遮断した直後に縮小するのではなく、半年ほどかけてじわじわと小さくなっていきます。ただ、実際には治療から1か月後の時点ですでに治療前よりサイズ縮小を確認できることが多いです。筋腫が縮小することで、過多月経や圧迫感などのつらい症状も治療の実施後、比較的早い段階からの改善が期待できます。
UAEは1995年にフランスで開始されて以来、約30年の歴史がある治療法です。欧米では多くのデータが蓄積されており、有効性や安全性が確立されています。日本でも2014年より保険適用となっており、決して新しい治療というわけではありません。長期的な治療成績についてもデータが蓄積されているため、その点はご安心いただければと思います。
UAEは全ての子宮筋腫の患者さんに適応となるわけではありませんが、薬物療法などの治療を行っても効果が不十分で、かつ手術以外の選択肢を探している方にとって有効な手段といえます。
UAEの実施後に妊娠した場合、流産や切迫早産、子宮破裂などの重篤な合併症を引き起こす報告があるため、原則として将来的に妊娠を希望されない方が適応となります。
手術、特に「子宮全摘術を提案されたものの、子宮を残したい」という方や、手術自体を避けたいと考える方にとって有用な選択肢の1つといえます。
通常の手術は全身麻酔で行われますが、心臓病などの基礎疾患(持病)があり、全身麻酔のリスクが高い患者さんもいらっしゃいます。UAEは基本的に局所麻酔で行うことができるため、体への侵襲(負担)が少なく、持病がある方でも検討が可能です。
薬物療法や手術と比較して、UAEには患者さんの生活の質(QOL)を維持しやすいというメリットがあります。
最大の特徴は、お腹を切る必要がないことです。足の付け根からカテーテルを挿入するため、傷あとは2mm程度と非常に小さく、ほとんど目立ちません。かさぶたのような小さな跡が残る程度で、開腹手術に比べて体へのダメージを最小限に抑えることができます。
体への負担が少ない分、入院期間も短くて済みます。当院の場合、多くの方の入院期間は4~5日程度です。個人差はありますが、多くの方の場合、治療当日から歩行が可能で、退院の翌週からはお仕事にも復帰いただけます。
UAEを受けた患者さんの満足度は、一般的に手術を受けた場合と有意差がないという結果が示されています。確実性という点では手術のほうが優れていますが(UAEのリスクについては後述)、UAEでも筋腫は十分に縮小し、つらい症状の改善が期待できます。
子宮筋腫の治療のゴールは、“閉経までの期間を症状に悩まされず過ごすこと”です。「閉経まであと数年だけれど、症状がつらい」という方にとって、体への負担が少ないUAEは有用な選択肢の1つといえます。
メリットの多いUAEですが、治療を検討するうえで知っておいていただきたい注意点もあります。
子宮の血流を遮断することで、下腹部痛や発熱など塞栓術後症候群が起こり得ます。特に下腹部痛はほとんどの場合で生じるため、入院中は痛み止めを適切に使用してコントロールします。
UAEは筋腫を切り取るわけではなく、壊死させて小さくする治療です。そのため、筋腫は完全に消失するわけではなく、血流がわずかに残った場合などは、時間が経ってから再び大きくなる可能性があります。頻度としては、術後5年で10~25%程度の方が再治療や追加の治療を検討する状態になるといわれています。
頻度は低いものの、壊死した筋腫に感染が起こるリスクがあります。重篤な感染症になった場合は、子宮摘出が必要になる可能性もゼロではありません。また、粘膜下筋腫の場合、筋腫分娩(壊死した筋腫が腟から排出される)が起こることがあります。自然に排出されれば問題ありませんが、途中で引っかかってしまうと痛みや出血の原因となるため、処置が必要になることがあります。
現在、ホルモン療法などの薬物療法を受けている方は、使用している薬の種類によっては、UAEを行う前に2〜3か月の休薬期間が必要になる場合があります。治療を希望される際は、現在服用中の薬について必ず医師に相談をするようにしましょう。

初日は入院し、まず看護師からのオリエンテーションなどを受けていただきます。治療は2日目に行います。手技自体は2時間程度で終了します。術後はベッド上で安静にしていただき、痛み止めを使用しながら経過を観察していきます。翌日以降、痛みの程度や全身状態を確認し、順調であれば4~5日目に退院となります。
当院では、退院後2週間・1か月・3か月・6か月・1年の間隔で受診していただいています。定期的な超音波検査に加え、術後6か月程度を目安にMRI検査を行い、筋腫の縮小具合や症状の改善状況を評価していきます。
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